市立船橋の高、負けた悔しさを糧にプロでの成長を誓う=高校サッカー

第95回全国高等学校サッカー選手権大会屈指の好カードと言われた1回戦で、大会ナンバーワンストライカーの呼び声高い岩崎悠人を擁する京都橘(京都)を退けたインターハイ王者の市立船橋(千葉)。2日の2回戦では同じく高校サッカー界の名門、前橋育英(群馬)の挑戦を受けた。

「1回戦を見ていたら、京都橘がすごく引いていた」(前橋育英・山田耕介監督)ため、前橋育英は前半、ディフェンスラインを高く保ち、前から果敢にプレッシャーをかけていった。

市立船橋は、これに大いに苦戦する。前半は前橋育英のシュートが5本だったのに対し、市立船橋はわずか1本。前橋育英にショートパスをつながれて攻め込まれ、高沢颯や飯島陸のシュートにゴールを脅かされた。

しかし、そこはさすが夏の王者。ハーフタイムに修正を試み、MF高宇洋を中心にパスワークでプレスをかいくぐり、相手のディフェンスラインの裏へのボールも増やして形勢を逆転。両アウトサイドの杉山弾北や真瀬拓海がペナルティーエリア内へと侵入する機会が増えたものの、強引にシュートに持ち込む場面も目立ち、80分を終えて0-0。勝負はPK戦へと持ち込まれた。

先攻の前橋育英は5人全員が決めたのに対し、後攻の市立船橋は1人目のキッカー、野本幸太が外してしまい、市立船橋の夏冬連覇の夢は2回戦でついえた。

「PKという負け方で、点も取り切れずに、本当に1年間の課題が露出したゲームだと感じています」

振り絞るようにして言葉を吐き出したのは、プロ入り三銃士の1人、ガンバ大阪加入が内定している10番の高だ。取材陣の前では涙を見せることはなかったが、真っ赤に充血した瞳が、ロッカールームでは悔し涙を流したであろうことを想像させた。

「(相手が前から来たことは)ちょっと想定していなかったので、時間はかかったんですけれど、しっかりと修正してやれたと思います。ずっと攻めていれば、いつか入るだろうと、みんなそう思っていたんですけれど、少し甘さも出たかなという部分もありました」

夏のインターハイを制したものの、得点力不足はずっと指摘されてきた課題だった。加えて、前回大会でも3回戦で東福岡に0-0からのPK戦で敗れていた。同じ過ちを犯したことが、悔しさを一層募らせたようだった。

「1年間ずっと言われてきたので、練習でのひとつのシュートだったり、トレーニングゲームだったり、そういうところでもっとこだわる姿勢をチーム全体として持つべきだったと思います。夏冬連覇という大きな目標があったんですけれど、成し遂げられなかったのは力不足ですし、PKというのは去年と一緒で、勝負強さという点で成長が足りなかったんだなと実感しています」

市立船橋の選手たちがロッカールームから出てきたのは、第2試合が始まってから15分ほど経ったころ。試合終了からかなりの時間が経っていたが、ロッカールームは静まり返って、みんなが黙り込んでいたという。それでも、共にプロへと進む2人とは誓い合ったという。

「原(輝綺)と杉岡(大暉)とは次、それぞれプロでしっかりやっていこうな、と話しました。市立船橋では、人間性の部分やチームの気持ちを背負う部分を学びました。プロサッカー選手として以前に、まず人として、というのが大事。そこはしっかりと自覚を持ってより成長していきたいと思います」

高にとっての高校サッカーは不完全燃焼で終わったが、プロサッカー人生はこれから始まる。この悔しさを糧にガンバ大阪で成長した姿を見せるつもりだ。

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