ガンバのルヴァン杯はプラスだった!土台はある、あとは「もう1歩」の駒。

ルヴァンカップ決勝、ガンバ大阪は浦和レッズにPK戦で敗れ、2年連続での準優勝に終わった。

結果は出なかったが、2週間前にJリーグで0-4で大敗したゲームからチームは見事に立ち直り、来季に向けてプラス面、課題の両面が明らかになったという点では、タイトルは取れずとも収穫は大きい試合だったと言える。

10月1日のリーグ戦では、自陣に引いてカウンターを狙った。しかし、攻撃が機能せずただ引いて守るだけになり、駒井善成ら右サイドからの攻撃に防戦一方になった。しかし、今回はラインを上げてコンパクトにしてボールを奪い、ショートカウンターを狙う。あるいは1トップのアデミウソンを使ってシンプルに相手の背後を狙うという攻撃を徹底していた。それが前半17分のアデミウソンの先制ゴールにつながった。

「狙っていた形だった」

遠藤保仁はそう言ったが、実はファーストステージの浦和戦でもアデミウソンは1トップで起用され、結果を出していた。カウンターからスペースに抜けてボールをキープし、ゴール前に走りこんできた宇佐美貴史にうまく合わせてゴールをアシストした。そのイメージが、ガンバの選手の中で共有されていたのだ。

アデミウソン交代は浦和の最終ラインを楽にした。

 後半から流れが悪くなったガンバは後半21分、アデミウソンに代えて長沢駿を投入した。長谷川監督の「アグレッシブに戦えなくなったら交代する」という観点からしても、特にアデミウソンの動きが悪くなったようには見えなかったので、なぜこのタイミングだったのかは分からない。前線からの守備を徹底し、流れを変えるために長沢を投入したのかもしれない。

だが、この交代が試合に与えた影響は非常に大きかった。

柏木陽介が「ガンバはアデミウソンが最大の脅威」と語ったように、浦和はこのスピードのあるブラジル人FWを非常に警戒していた。特に最終ラインは1点を取られたことで、もうやられるわけにはいかないという心理的なプレッシャーをかけられていた。正直なところ、アデミウソンは前にいるだけで「重し」として非常に効いていたのだ。

「アデミウソンの交代はうちにとって良かった。これで前の恐さがなくなった」と槙野智章が語ったように、交代によって逆に浦和最終ラインの負担を軽減してしまった。

自ら攻め手を欠いたガンバだが、新しく脅威になるような選手はいなかった。パトリックがいればまた違った展開になっただろうが、長沢を投入した後のベンチメンバーを見るとFWは新人の呉屋大翔だけ。

長谷川監督が悔やんだ「もう1歩突き放せる駒と力」。

 それでも長谷川健太監督は次々と手を打った。

後半27分に大森晃太郎に代えて藤本淳吾、43分には倉田秋に代えて呉屋大翔を投入した。

一方の浦和も、攻撃のカードを切って応戦する。

後半25分に武藤雄樹からズラタンへ、31分に高木俊幸の代わりに李忠成がピッチに送り込まれた。

ズラタンも李もゴールの匂いを感じさせるFWであり、さらに浦和のベンチにはまだFW石原直樹がいた。

結果的に後半31分、李が同点ゴールを決め、ガンバはそこから浦和を突き放すことができなかった。試合後、長谷川監督は「もう1歩突き放せる駒と力がチームに欠けていた」とチーム力の差を悔やんだ。

アデミウソンの相棒はどんなFWが望ましいか。

 2005年、ガンバがJリーグ初優勝を果たして黄金時代を迎えた時は、播戸竜二、山崎雅人、佐々木勇人ら流れを変える選手がおり、3冠を達成した2014年にはリンスや佐藤晃大が途中出場で結果を出していた。

今季は宇佐美が夏前に移籍で去った影響もあるが、やはりFWを含めて攻撃的選手のバックアップが物足りなかった。それがルヴァンカップ決勝で改めて露見した形だ。パトリックがケガで長期離脱しており、FWの補強はセンターバックとともに来季の大きなテーマになる。

必要なタイプは、アデミウソンと相乗効果で相手に脅威を与えられる選手になる。2005年、2人で49点取ったアラウージョと大黒将志のような関係を構築できるような選手が理想だ。その点で言えば、スピードがあって裏取りがうまい日本人FWがいい。日本人は相手をいかしながら自分も生きる術を考えるので、外国人選手を並べるよりも効率的だ。

守備面の安定は今野と井手口のおかげ。

 しかし守備面では成長も見られた。

交代してすぐの李に同点ゴールを決められながら、嫌な流れの中で我慢して失点を最小限に抑えられたのは、ボランチの今野泰幸と井手口陽介の活躍が大きい。

今野は、リーグ戦での敗戦の反省を活かした守備を心がけたという。

「浦和はピッチを広く使ってバランスよく配置してくるので難しさはあるんですけど、今回は1対1のタイマンじゃなく、しっかりスライドしてマークすることができました」

リーグ戦で大敗した時のようにただ受け身になるのではなく、柏木陽介らパスの出し手に厳しいプレッシャーをかけ、簡単にボールを回させないようにした。それが功を奏した前半は、間違いなくガンバがペースを握っていた。

約束事は少なくても、コンビネーションは向上中。

 井手口とのコンビネーションも悪くなかった。「2人ともボールにいってしまう傾向があるんで、そこはかぶらないように意識していました」と井手口が話していたが、約束事は最小限で、あとは各自の判断に任されている。13歳という年齢差も感じられず、うまく噛み合っていた。

井手口個人の動きも良かった。

ボールを奪って前につけて終わりではなく、前にスプリントしてもう1回受けてフィニッシュに絡もうというプレーが見え、運動量は最後まで落ちなかった。

今野も、“相棒”井手口の能力を高く評価している。

「僕も陽介もいい形でボールを奪えていたし、良かったと思います。ヤットさんとは連係面でも分かりあえていた感じだけど、陽介とはまだまだですね。阿吽の呼吸までにはいっていない。でも陽介はめちゃくちゃ能力高いし、これから試合を積んでいけばもっとよくなると思います」

おそらく長谷川監督も来季は、このパッケージをスターターの基本にするはずだ。

遠藤は引き続きトップ下起用が増えそうだが……。

 ボランチが本職の遠藤保仁は今季はトップ下での起用が多いが、チームメイトは好意的だ。フラフラと神出鬼没に味方の目につくところでボールをもらい、攻撃のアクセントになる。トップ下というよりはフリーマン的な存在でピッチに漂いながら決定的な仕事をする。

「ヤットさんはめちゃくちゃ動くわけじゃないけど、ボールをもって前をむいた時に目につくところにいてくれる。受けてワンタッチで変化をつけたり、タメをつくってくれるんで助かります」

そう話す今野も、遠藤のトップ下を歓迎している。

今季の遠藤はボールロスト率が高くなり、守備力と運動量の低下などもあってトップ下に置かれているが、チームメイトの信頼は今も絶大である。ただ、試合がつづくと消える時間も増えた。来季は遠藤の起用方法もガンバにとって重要なポイントになるだろう。

そして今季もまだ終わっていない。チャンピオンシップの出場は難しいが、天皇杯3連覇の可能性は十分残っている。来季は1シーズン制になり、改めてチームの総力が試される。ルヴァンカップの決勝、選手は負けて清々しいとは誰ひとり思っていないが、来季につながる準優勝だったのは間違いない。

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