ルヴァンカップの最大の焦点は遠藤vs.柏木 新旧代表のボランチ対決を制するのは?

フレッシュなタレントと日本代表GK対決に注目

3年連続でファイナリストとなったガンバ大阪が、2014年以来のカップウィナーとなるのか。3年ぶり6度目の決勝進出を果たした浦和レッズが、ホームの埼玉スタジアム2002でカップを掲げるのか。10月15日(土)にファイナルを迎えるYBCルヴァンカップは現在のJリーグを代表するクラブの激突となった。

見どころは多い。

GKの西川周作(浦和)と東口順昭(G大阪)は、ともに日本代表でプレーしている。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督のもとで定位置をつかんでいる西川は、あらためて存在感を示したいだろう。同い年のライバルの後塵を拝する東口からすれば、直接対決で自らをアピールしたいはずだ。

フレッシュなタレントの攻防も注目される。関根貴大(浦和)と井手口陽介(G大阪)だ。巧みなステップワークでマーカーを翻弄(ほんろう)する関根は、浦和の攻撃に縦への推進力をもたらすサイドアタッカーである。一方の井手口は、豊富な運動量と球際の激しさを武器に相手の攻撃の芽を摘み取るボランチだ。

浦和から見た右サイドを中心に、彼らはマッチアップする。浦和の背番号24が、攻撃に勢いをもたらすのか。またはニューヒーロー賞を獲得したG大阪の背番号21が、守備に安定をもたらすのか。21歳と20歳の意地がぶつかり合う。

タイトル獲得に飢える柏木陽介

今回のルヴァンカップ決勝を、もう少し広い視野で捉えてみる。すると、ふたりのMFの存在が、浮かび上がってくるはずだ。

遠藤保仁と柏木陽介である。

ここ数年のJリーグは、歴戦の勇士たちが輝きを放つ舞台となっている。中盤を主戦場とする選手で言えば、横浜F・マリノスの中村俊輔であり、川崎フロンターレの中村憲剛であり、G大阪の背番号7──遠藤である。かつて日本代表でワールドカップ(W杯)に出場した彼らは、ベテランと呼ばれるようになった現在も国内屈指のクオリティーを保っている。

ハリルホジッチ監督率いる日本代表がふがいない戦いをするたびに、彼らの名前はメディアをにぎわせる。それは決してノスタルジーではない。彼らの存在感が、今なお絶大だからである。経験と実績がさらに技術に磨きをかける。そんなプレーが、ピッチを自らの色に染めていくのだ。次世代の選手からすれば、これほど歯がゆい状況もない。とにかく結果を残すことで、自らの存在価値を証明していくしかない。

柏木にはタイトルがない。

浦和でのプレーは在籍7年目を数えるが、リーグ戦でもカップ戦でも頂点に立てずにいる。昨シーズンは明治安田生命J1リーグで1stステージを制したものの、Jリーグチャンピオンシップでは準決勝でG大阪に敗れてしまった。

国内ナンバー1の経営規模を誇るビッグクラブにして、熱狂的なサポーターを持つクラブの中心選手としては、怒りにも似た悔しさが募るに違いない。前所属チームのサンフレッチェ広島が、柏木の移籍後にJ1リーグで3度の優勝を飾っているのは、自らを否定されたような感情さえ呼び起こすかもしれない。

それだけに、今回の一戦にかける思いは強いだろう。手応えはつかんでいる。10月1日に行われた2ndステージ第14節でG大阪に4−0で快勝した。直近の公式戦4試合で勝利のなかった仇敵を、ホームで圧倒したのだ。攻撃のタクトをふるった柏木の出来も、申し分のないものだったと言っていい。もっとも、遠藤との対決は結末が持ち越された。G大阪が退場者を出したこともあり、この36歳は60分すぎにピッチを去った。

攻守にさりげなく仕事をする遠藤保仁

遠藤はフィジカルを支えとするタイプではない。運動量ではなくポジショニングの巧みさで、相手のマークから逃れる。技術がさびつくことはなく、経験によって試合を読む力は磨かれているので、ピッチで表現できることはむしろ増えている。ほんの少しのスペースとわずかな時間があれば、決定的な仕事ができる。それは彼が衰えを感じさせない最大の理由だ。

攻撃力に優れるMFは、守備のセンスもある。味方ディフェンス陣が「ここは大丈夫だ」と感じているスペースでも、「自分なら使える」という視点を持つ。それにより表面化していない危機を、未然に防ぐことができるのだ。

危ないと思う場面に、遠藤はさりげなく顔を出す。スペースをあらかじめ埋めたり、マークについたりするだけでなく、躊躇なく身体を投げ出す。危機察知能力は、このところさらに高まっている。ボランチでプレーしていても、トップ下で起用されても、彼の影響力はピッチの全域にまで及ぶ。

柏木も守備力を上げてきた。ハリルホジッチ監督が求めるデュエル(1対1の競り合い)を意識し、激しくボールを奪い切る能力を装備しつつある。もっとも、3バックと阿部勇樹のしっかりとしたリスク管理によって、ディフェンスにエネルギーを割かれるようなゲームは少ないが。

浦和の背番号10がまぶしい輝きを放つのは、攻撃がこう着した局面だろう。ブロックを敷いてくる相手の守備を剥がすために、柏木は長短のパスを前線へ、サイドへ、テンポ良く出し入れしていく。ゴールへ直結するラストパスはもちろん、アシストのひとつ前のパスも多い。

おそらくそれは、浦和の攻撃が良い意味で柏木に寄りかからないからだろう。宇賀神友弥、関根、駒井善成らがワイドなポジションから突破をはかり、興梠慎三、李忠成、武藤雄樹はリーグ戦で2桁得点をマークしている。リーグで川崎に次ぐ57ゴールをマークしている浦和は、どこからでも得点を奪えるチームだ。

ルヴァンカップで主役を演じるのはどちらか?

 遠藤も柏木も、マルチな才能の持ち主だ。ユーティリティー性に溢れ、攻守両面でチームに貢献し、FKやCKではキッカーを務めている。彼らのチーム内での立ち位置は似たものがある。遠藤にあって柏木にないもの、柏木にあって遠藤にないものを探すのは、少しばかりナンセンスかもしれない。

彼らは同世代ではない。学年で8つの開きがある。36歳の遠藤がより多くの実績を積み上げているのは、きわめて当然なのだ。とはいえ、28歳当時の遠藤がすでに到達していた領域へ、柏木がたどり着いていないのもまた事実だ。W杯アジア最終予選で、柏木は背番号7を背負っている。それはかつて、遠藤のアイコンだった番号だ。そして、日本代表の戦いぶりが不安をあおっているなかで、柏木はスタメンに定着できていない。遠藤の後継者たる成果を、代表でもクラブでも残せていないのだ。
歴戦の勇士が健在ぶりをアピールし、G大阪を頂点へと導くことで、色あせない技術と豊かな経験の価値を日本サッカー界に広く示すことになるのか。無冠のレフティーが浦和にタイトルをもたらし、日本代表でのポジション奪取の足掛かりとすることで、ベテランたちがけん引するJリーグで、主役に躍り出るのか。

今回のルヴァンカップには、たくさんの見どころがある。そのなかでも「遠藤vs.柏木」という視点を最大のものとして推したい。G大阪と浦和のどちらが勝利をつかみ、遠藤と柏木のどちらが主役を演じるのかによって、今後の日本サッカーの歩みが変わっていくからだ。

Share Button