レッズに完敗。「勝負弱くなった」ガンバに立ち直る術はあるのか

「なんとなく”勝負弱く”なってきた。簡単に失点する場面が多いんでね」

テレビ中継のゲストに招かれた岡田武史氏(日本サッカー協会副会長)がキックオフ直後、ガンバ大阪についてそんなふうに言及したが、そのとおりの内容になってしまった。

セカンドステージ第14節、同ステージでの逆転優勝に望みをかけ、首位・浦和レッズとの対戦を迎えた3位のガンバだったが、開始6分に左サイドから鮮やかに攻略されて先制されると、その後も強烈なパンチをまともに喰らい続けた。DF丹羽大輝を中心に必死に跳ね返しても、クリアを次々と拾われ、波状攻撃を浴び続ける。その様子は、まるでショベルで土を掻き出したそばから、その土を穴に戻される罰ゲームでも見ているようだった。

「ミーティングで(長谷川健太監督から)、最初からいかないと(昨年の)ナビスコカップ決勝の鹿島アントラーズ戦のようになる可能性がある、と言われていたんですけど……」

試合の入り方についてそう悔やんだのは、MF倉田秋である。同じく埼玉スタジアムを舞台にした1年前の大一番でも、開始直後からラッシュを食らって0-3と大敗し、タイトルを逃している。その悪夢を再現するような内容だった。

左腿(もも)に負傷を抱えながら先発したMF遠藤保仁は、「自分たちのミスが多かったし、あまりにラインが低いというか、全体的に後ろに下がってしまった」と振り返ったが、ラインを高くできない事情もあった。ディフェンスリーダーの丹羽が説明する。

「コンパクトにするのが健太さんのサッカーなので、もちろんラインを上げることは頭の中にありますが、相手がフリーでボールを持っていては、ラインは上げられない。プレッシャーをかけられているのかどうか、状況を見てラインを設定するしかなかった」

全体的に後ろに下がっているから、効果的なプレスをかけられず、プレスがかかっていないから、ラインを上げることができない――そんなジレンマに陥っていたのだ。

さらに、準備の段階にも問題があった。長谷川監督が明かす。

「(遠藤と井手口陽介の)ダブルボランチのところに、柏木(陽介)と阿部(勇樹)がきていたので、それはちょっと想定外だった。どちらかはくるだろうと思っていたが、二枚とも潰しにこられて。(相手が)あそこにくると(うちの)前線は空くんですが、そこでもなかなか起点ができなかった」

しかしながら、レッズにとって今季のベストゲームと言えるファーストステージの川崎フロンターレ戦、その際にも柏木と阿部が相手のダブルボランチ、中村憲剛と大島僚太に激しいボール刈りを仕掛け、彼らを機能不全に陥らせて完勝を飾っている。そこまでスカウティングができていれば、「想定外」ということはなかったのだが……。

それでも、0-1のままゲームを折り返し、ハーフタイムですかさず修正したのは見事だった。遠藤をトップ下に移し、中盤がダイヤモンドの4-4-2へとフォーメーションを変更したガンバは、狙いどおりレッズのプレスをかわし、敵陣内へと攻め込んでいく。ボールを保持できるMF藤本淳吾も投入したことで、形勢は前半とは明らかに変わり、イーブンか、ややガンバのペースになりつつあった――その直後のことだった、痛恨の2失点目を喫したのは。

この試合で最後まで手を焼いていた、レッズ右サイドの駒井善成の仕掛けから、最後はMF武藤雄樹に左足でミドルシュートを叩き込まれた。

遠藤が「なんでもないミドルを決められた」と振り返ったこの場面、武藤の前にガンバの選手たちがいるのに、誰も厳しく寄せにいかなかった。こうした辺りにも、岡田氏が指摘した「勝負弱くなってきた」要因が見えた。その後、MFアデミウソンの不用意な報復行為による退場で、勝負は完全に決してしまった。

この完敗によってガンバは、セカンドステージ3位から5位に転落し、首位・レッズとの勝ち点差は7に開いた。残り3試合に全勝しても、レッズが1勝すれば優勝の芽は潰(つい)えてしまう。年間順位でも3位のアントラーズとは8差のままで、チャンピオンシップ出場は絶望的だ。

2年前の三冠王者ははたしてこのまま、勝負弱くなってしまうのか……。

傷心のガンバにとって不幸中の幸いは、気持ちを切り替えるきっかけとなる戦い、「悪いところがほぼすべて出た」(遠藤)この日のレッズ戦の反省を生かせる戦いが、目の前に控えていることだろう。

ルヴァンカップ(旧ナビスコカップ)の決勝進出をかけ、10月5日と9日に横浜F・マリノスとの準決勝を戦う。その先の決勝の舞台は、同じく埼玉スタジアムで、レッズも準決勝まで勝ち残っている。

そこに向けてこの日、数少ない収穫となったのは、イーブンに持ち込んだ後半開始の5分間以上に際立っていた、ラスト15分の攻防だ。FW呉屋大翔が何度もゴールに迫り、倉田が数的不利でも仕掛けていき、途中からボランチに入った今野泰幸もボールを回収しては前線につなげ、反撃を試みた。

その結果、ゲーム終盤にさらに2失点を喫したが、それはハイリスク・ハイリターンを求めたがゆえ。試合終了を告げるホイッスルが鳴ったとき、ガンバの選手たちがバタバタと倒れ込んだのは、せめて一矢報いるために全力を尽くしたからだろう。丹羽が力を込める。

「0-4の結果は真摯に受け入れますけど、最後まで必死に戦った。後ろから見ていて頼もしかったし、次につながる試合ができたと思う。誇りを持って帰りたい」

依然として遠藤はケガを抱えている状況だが、いつまでも頼るわけにいかないことは、選手たちもわかっているはずだ。

「ヤットさんにばかり頼っていたら、そこを潰されたら終わりになってしまうので、違う選手がもうちょっと引っ張っていけるチームになっていかないと」

最後まで戦う姿勢とアグレッシブさを失わなかった倉田は危機感を込めて語る。レッズの宇賀神友弥と小競り合いを起こすなど、戦う姿勢が誤ったほうに向かう瞬間もあったが、身体を張り、走り、仕掛ける姿は、チームを牽引する資格が十分あることを改めて証明するものだった。

遠藤に頼ってばかりではいけないという危機感が、そして必ずリベンジを果たすという反骨心が、「勝負強さ」を取り戻すきっかけになるかもしれない。チームの岐路にある浪速の雄の、ルヴァンカップでの戦いに注目したい。

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