ガンバ大阪、エンジン全開。逆転 優勝への「燃料」は開眼した長沢駿

「三冠を実現した2014年は、途中出場の選手がプラスアルファ以上の力を出して流れを変えてくれたり、キツい中でも走ってくれたりして、味方を助けてくれた。最近の試合では、そういう戦いができている」
これは、YBCルヴァンカップ準々決勝第2戦(9月4日)、6-3で勝利したサンフレッチェ広島との戦いを終えた直後のDF丹羽大輝の言葉だ。ガンバ大阪がJリーグセカンドステージで逆転優勝を狙うカギは、まさにそこにある。
つまり、簡単に言うと”層の厚さ”を生かした戦いだ。
三冠を達成した2014年も、そして、タイトル獲得は天皇杯だけだったものの、リーグ、カップ戦とすべての戦いで優勝争いを繰り広げた昨年も、途中交代でピッチに立った選手が、まさしく冒頭の丹羽の言葉にあるような活躍を見せ、勝利を引き寄せてきた。
例えば、2014年ならFWリンスやFW佐藤晃大(現徳島ヴォルティス)、MF倉田秋らが、2015年ならFW長沢駿やMF大森晃太郎、MF井手口陽介らが奮闘。彼らが時には先発で、時には途中出場でピッチに立ち、停滞の感じられるチームに”変化”を与え続けた。
今年は、誰か――。
FW長沢をはじめ、MFアデミウソン、FW呉屋大翔、FWパトリックらがそうだ。なかでも、先発か途中出場かに関係なく、着実に”ゴール”という結果を残し続けている長沢には期待がかかる。

もともとチームへの献身性という点において、長沢は仲間からの高い評価を得ている。そのうえで、足もとの器用さを生かして、時に前線で起点となり、時につ なぎ役を果たすなど、一緒に前線を構成する選手のプレースタイルに応じて自身の役割を変えられる選手だ。もちろん、肝心のフィニッシュでも存在感を示し続 けている。
遡(さかのぼ)れば、今季のJ1ファーストステージでも、長沢はFW陣の中では誰よりも早く結果を出した。5月末にケガで戦 列を離れてしまったが、セカンドステージ第4節のアビスパ福岡戦で復帰。その直後は思うようにいかない部分もありながら、第7節のサガン鳥栖戦でアディ ショナルタイムに劇的な決勝ゴールを挙げると、第8節のジュビロ磐田戦でも2試合連続となるゴールを決めてチームを3連勝に導いた。
さ らに、第10節の湘南ベルマーレ戦でも、相手に先制される苦しい展開の中、今季自身初の2ゴールを記録。逆転勝利の原動力となって、チームの連敗を阻止し た。その勢いは衰えることなく、ホームで行なわれたYBCルヴァンカップ準々決勝の第2戦は、またしても相手に先制を許したが、再び長沢が2ゴール。試合 をひっくり返して、6-3の勝利に大きく貢献した。
そんな長沢に好調の理由を尋ねると、ニッコリ笑ってこう語った。

「もともと考えてプレーするタイプなのですが、ここ最近は、考えるより先に身体が反応して、本能的なところで(点が)取れているような気がします」
強烈なインパクトを残した湘南戦での1点目、同点弾となったあの強烈なダイレクトボレーシュートも、動き出しを含めて、頭に思い浮かんだアクションに誘われるように身体が自然に反応したのだと言う。
ますます勢いに乗る長沢だが、なおも特筆すべきは、長沢の存在が他のFW陣の意識を触発していることだ。それは、YBCルヴァンカップ準々決勝第1戦において、プロ初ゴールを記録したFW呉屋大翔の言葉からも見てとれる。
「(長沢)駿くんが点を取り始めて勢いづいていて、この試合の前にも相手の守備のことや、ガンバのゲーム運びについて、(長沢と)ずっと話をしていた。それも(自分の)初ゴールにつながったんだと思います」
また一方で、YBCルヴァンカップ準々決勝第2戦では、長沢の2ゴールのあと、アデミウソンもスーパーゴールを2発叩き込む活躍を見せた。あとは、パトリック、藤本淳吾がこの波に乗ってこられれば……。
ともあれ、チーム内で選手同士が刺激し合って、いい競争ができているガンバ。「誰が出ても点が取れる」状況になりつつある今、先に見えるのは、もはや”てっぺん”しかない。

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