2連勝から連続ドロー。ガンバ大阪は強いのか、まだダメなのか

2年前の三冠王者で、昨季も天皇杯で優勝し、チャンピオンシップ、ナビスコカップと準優勝したガンバ大阪が、波に乗れそうで、乗れていない。

ファーストステージを6位で終えて迎えたセカンドステージ。その第1節(7月2日)でガンバは、今季開幕戦で苦汁をなめさせられたファーストステージの覇 者・鹿島アントラーズに3-1と快勝した。続くベガルタ仙台との第2節(7月9日)でも、3-1と完勝。いよいよ本領発揮かと思われたが、大宮アルディー ジャとの第3節(7月13日)は0-0、年間順位で最下位のアビスパ福岡をホームで迎えた第4節(7月17日)も、スコアレスドローに終わってしまった。

もっとも「盤石ではないけれど、悲観することもない」と、MF今野泰幸がきっぱりと言うように、内容が決して悪かったわけではない。

ノーゴールに終わった福岡戦でも、ゴール前まで攻めこむ形は作れており、シュート数も決定機の数も上回っていた。「クロスやラストパスの精度が上がれ ば、4、5点取れていた」(DF丹羽大輝)というゲームでもあった(ただ、チャンスを逃し続けている間に2度、ポストとバーに救われる大ピンチを招いたが……)。

この日のガンバの攻撃で目立っていたのが、サイドからの崩しだ。

福岡が中央の守備を固めていたこともあるが、190cmの長身FWパトリックを生かさない手はないと言わんばかりに、サイドバックの藤春廣輝と米倉恒貴が高い位置にポジションを取り、福岡を押し込んでいく。

その徹底したサイド攻撃にひと役買ったのが、トップ下の遠藤保仁である。

これまでボランチとして起用されていた遠藤は、ファーストステージの途中からポジションをひとつ上げてプレーしている。

そこには、遠藤の負担をなるべく軽減させたいという長谷川健太監督の狙いも見えるが、遠藤自身、ただ“トップ下然”とプレーしているわけではない。パト リックの近くでプレーしたり、前線に飛び出したりするなど、“シャドー”としての役目も果たしながら、この福岡戦で積極的に見せたのは、左右のサイドに流 れる動きだった。

ボランチで出場するときのように、絶えずボールが彼を経由するわけではない。ときにはサイドに張って囮(おとり)となったり、MF倉田秋やMF阿部浩之 にトップ下のスペースを使わせたりしたうえで、右サイドから鋭いクロスを放り込んだり、クロスと見せかけてニアゾーンにパスを流し込んだりしてチャンスを作った。そうしたプレーについて、遠藤がこともなげに振り返る。

「あれは決まり事でもなんでもなく、その場、その場でやったこと。一番簡単なのはサイドから崩すことだし、真ん中に人が多かったので、あえてやってみた部分がある」

ゲームメイクとは、何もピッチの中央でなければできないわけではない、ということを証明するような遠藤のプレーに、絶大な信頼を置くのは今野だ。

「ヤットさん(遠藤)がトップ下に入ったときは、さまざまなポジションを取りながら、相手の隙を狙ったり、相手の陣形を崩そうとしたり、いろいろと考えてやってくれているので、俺も前を見たとき、ヤットさんがフリーなら当てるようにしています」

また、左サイドハーフとしてプレーしながら、自由に中に入っていけた倉田も感謝する。

「ヤットさんが俺のことを見てくれていて、俺が勝手に(中に)入っていったら外に開いてくれたり、パスがつながらなかったらボランチに降りたりしてくれる。(自分のことを)絶対に見てくれているっていう感じですね」

それでも、ガンバはゴールを奪えなかった。FWアデミウソン、MF藤本淳吾、FW長沢駿と攻撃のカードを次々と切って相手を追い詰めながら、最後のひと押しができなかった。そんな味方のアタックの改善点について、後方から見守っていた丹羽が指摘する。

「やっぱりパト(パトリック)が点を取ってくれたら、チームが勢いづく。だから、パトにはすごく期待していますけど、パトにはセンターバックが2枚もつい ている。ということは、他の誰かが空くということなので、クロスに対して誰かがニアで潰れたり、最低でも3枚で入っていったりすれば、今はちょっと欠けて いるゴール前の迫力が出てくると思いますね」

パトリックに続く2本目、3本目の“スピアヘッド”は誰になるのか――。

この日で言えば、サイドハーフを務める阿部や倉田、途中出場のアデミウソン。あるいは、この日は出番がなかったが、ロングランができるMF大森晃太郎な どもうってつけだろう。リオ五輪に出場するMF井手口陽介に代わって倉田がボランチに回るなら、大森の左サイドハーフでの出場は十分に予想される。

待ちに待った専用スタジアム、市立吹田サッカースタジアムを手に入れた今季、ガンバはアデミウソンや藤本を補強して進化を図ったものの、アデミウソンを うまく組み込めず、アウクスブルクに移籍した宇佐美貴史のポジションも含め、選手の立ち位置における最適解を見出すまでに時間がかかってしまった。

だが、遠藤のトップ下起用が固定され、コンビネーションはようやく確立されてきたようだ。倉田がうっすらと笑みを覗かせる。

「ファーストステージと比べたら、ゴール前までボールが行くようになったので全然違う。もちろん、僕らもこれで満足してないし、ファンも満足してないでしょうけど」

12月のFIFAクラブW杯は今年、市立吹田サッカースタジアムでも開催される。ホームスタジアムで国際大会を戦うチャンスを得るには、Jリーグチャンピ オンシップで優勝しなければならない。ファーストステージで出遅れたガンバにとって、チャンピオンシップに出場するには、セカンドステージでの優勝が不可欠だ。

「今日は上位陣が軒並み引き分けて、団子状態になってきたのはありがたい。夏場は体力の消耗も激しいので、できる限り自分たちのペースで試合を運びたいで すけど、その中でも、もう少しアグレッシブに高い位置からボールを取って攻撃につなげられれば、優勝のチャンスは十分あると思っている」

遠藤はそう言い切った。現在、2勝2分けの無敗でセカンドステージ4位。三冠達成時のようにガンバが勢いづけるかどうかは、ここ数試合にかかっている。

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