G大阪、「宇佐美ロス」への懸念。エース流出の備えあるも、新たな補強が明暗左右か

2016年夏、ガンバ大阪からアウグスブルクへの完全移籍が決まった宇佐美貴史。2013年に復帰以降チームを牽引し続けたエースが再び海を渡ることに なった。チームとして調子の上がらない状況下でのエース流出となったが、J屈指の強豪クラブはこの苦難をどう乗り越えるか。

復調の兆しを見せ始めたエースの放出

 長谷川体制が発足した2013年以降、一年でのJ1昇格に成功し、2014年には三冠を独占。毎年タイトルを手にし続けて来たガンバ大阪を牽引して来たのは、間違いなく宇佐美貴史というタレントだった。

昨シーズン終了後にも欧州移籍が噂された和製エースが、再び海を渡ることが正式に発表されたのは6月20日。J1ファーストステージの最終節となる名古屋戦を最後に、宇佐美はブンデスリーガのアウグスブルクへ完全移籍する。

ACLではまさかの惨敗を喫し、ファーストステージでも波に乗り切れず優勝争いから早々に脱落。2013年に長谷川健太監督が就任して以来、決勝に残れ なかったのはJ2時代の天皇杯と昨年のACLだけというずば抜けた安定感を見せ続けて来た大阪の雄が、再び試練の時期を迎えることになる。

懸念されるのは「宇佐美ロス」。今季序盤は本領発揮にほど遠く、ACLのグループステージ、水原三星戦では痛恨のPK失敗。リーグ戦でも本来の得点力を見せていたとは言えない背番号39ではあったが、市立吹田サッカースタジアムで自身初ゴールを叩き込んだ湘南戦以降、リーグ戦で3戦連発と「一つ出れば、 爆発的に波に乗れる」という言葉を体現し続けている格好だ。

かつては芸術的なパスワークで常に主導権を握る攻撃サッカーを見せサポーターを魅了したガンバ大阪だが、長谷川監督の就任後は、手堅い守備とパトリック や宇佐美という前線の個の力を融合した勝負強いスタイルへと転換。それでもガンバ大阪を攻撃の雄たらしめていたのは、ひとえに華麗なゴールや抜群のシュー ト精度を誇る宇佐美のスーパーゴールがあったからに他ならない。

「チームにとっては痛い」。3試合連続でネットを揺さぶり、完全復調の兆しを見せ始めたタイミングでのエース流出をこう嘆いた指揮官だったが、決してサプライズではなかったことも事実だった。

既存戦力で穴埋めか、新戦力の獲得か

 アデミウソンや藤本淳吾らを獲得した今季の補強も宇佐美の移籍をにらんだものだった。

実際、宇佐美の移籍が正式決定する直前、長谷川監督も梶居勝志強化部長も「宇佐美が途中で抜ける前提で厚みを持たせている」とシーズン途中での補強には消極的だったが、和製エースの流出が正式に決まると、その風向きが変わって来た。

「(補強については)強化部長と話し合って行こうと思う」と長谷川監督が言えば、梶居強化部長も「基本は今年シーズン初めにアデミウソンを獲った経緯もあ る。出来ればその中で選手を回してもらいたかったが、前半戦をしっかりと分析して巻き返すためには何が必要かを考えたい」と語った。

シーズンを通じて、何か一つでもタイトルを獲れば御の字、という凡百のクラブとは異なり、ホームである市立吹田サッカースタジアムで年末に開催されるク ラブワールドカップへの出場権を手にするためにはJリーグタイトルの奪還は不可欠。カップ戦では絶対的な強さを見せるガンバ大阪だが、セカンドステージでの巻き返しには補強が不可欠な状況だ。

本来であれば、再び岩下敬輔が負傷離脱し、ビルドアップの起点になれるCBの獲得は急務だが梶居強化部長は「即戦力になれるCBを獲るのは難しい」と否定的。ならば、リーグ戦今季無得点のパトリックに代わるFWの獲得は最低限のテコ入れのはずだ。

2013年夏には宇佐美とロチャを獲得し、J2優勝に成功。2014年にはパトリックを加えたことで、チームは前線に最強のスピアヘッドを擁することに成功した。

時にはスランプに陥ったり、守備面で機能性を欠いたりしたこともあった宇佐美だが、その存在感の大きさをチームはセカンドステージで改めて感じることになるはずだ。

「2列目の選手も大森や藤本、阿部がいるし、若い世代では(堂安)律も良くなって来ている。そういう選手に頑張って欲しい」(長谷川監督)

アデミウソンの完全フィットを含めた、既存の戦力への期待感を口にする指揮官だが、更なる補強も立派な選択肢の一つである。

宇佐美が去った後、新たな時代へと突入するガンバ大阪。補強の有無をめぐる梶居強化部長と長谷川監督の判断が、セカンドステージの明暗を左右する。

リンク元

Share Button