「守備からの一気呵成」。レギュラー定着へ、宇佐美が思い描くイメージ【代表現場レポート】

日本代表はW杯アジア2次予選を前に国内で候補合宿を行っている。宇佐美貴史はヴァイッド・ハリルホジッチ監督就任以降、全試合に出場しているが先発定着 には至っていない。しかし、悲願のレギュラー奪取へ最終予選そして本大会を見据えてすでに理想とするイメージはできている。

コンパクトなハイプレッシングを重視

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が日本代表監督に就任してから丸1年が経過した。2016年は今月下旬に2018年ロシアワールドカップアジア2次予選の最終局面となるアフガニスタン&シリア2連戦(埼玉)があり、秋からはいよいよ最終予選が始まる。

2016年リオデジャネイロ五輪出場を逃したなでしこジャパンの例もあるように、最終予選は何が起きるか分からない。最悪のシナリオを回避するためにも、チームの底上げは急務の課題と言える。

そこで指揮官は、7日から国内組代表候補合宿を千葉県内でスタートさせた。小雨の降る夕方、練習場に現れたのは、前日のJリーグで負傷し辞退した六反勇治(仙台)を除く25人。

だが、米本拓司(FC東京)もケガで欠席を余儀なくされ、最終的には離脱が決定。永木亮太(鹿島)が追加招集されることになった。金崎夢生(鹿島)もこの日は別メニュー。結局、トレーニングに参加したのは23人だった。

練習は2組に分かれて進み、前日のJリーグに先発したフィールドプレーヤー10人がクールダウン、それ以外の13人がフィジカルテストから始まった。

その後、両者が合流し、指揮官が練習前のミーティングで「ゾーンプレス」と称していたコンパクトな状態でのハイプレッシングの練習に30分以上の時間を費やした。これはハーフコートのゲーム形式で、合宿初日にしては相当負荷が高かった。

遠藤航(浦和)も「今日はリカバーだと思った」と驚き半分の様子だったが、ハリルホジッチ監督が練習前のミーティングで「私にも我慢の限界がある」と危 機感を煽ったせいか、これまで以上のピリピリ感の中、チーム全体から戦術を徹底的に吸収しようという強い意識が感じられた。

昨年全試合出場も途中出場に満足せず

 ハリル体制発足後、全試合に出場している宇佐美貴史(G大阪)も、改めて危機感を募らせた1人。

「去年は途中出場が多かったけど、これからも途中出場でやっていこうとは思っていないですし、やっぱりスタートから出て勝利に貢献するのがもちろん理想。 そういう役割を任せられるようやっていきたいし、危機感を持ってやりたいなとは思っています」と彼は神妙な面持ちでコメントした。

その宇佐美は、DF(右から)塩谷司(広島)、森重真人、丸山祐市(ともにFC東京)、車屋紳太郎(川崎)、ボランチ・遠藤航、遠藤康(鹿島)、右MF 齋藤学(横浜)、トップ下・武藤雄樹(浦和)、1トップ・興梠慎三(浦和)という面々とともに、4-2-3-1の左MFとしてプレー。25×25mの守備 ブロックを崩さないようにチームと連動して動くことを心掛けた。そしてボールを奪ったら一気に裏を狙う。そういう意識を随所に見せていた。

しかしながら、彼が突如として指揮官から「ウサミ、ウサミ~」と大声で呼び止められるシーンがあった。それは車屋からボールを受けた彼が、中央の武藤雄 樹にボールを出して、そのまま止まっていた場面。「預けたらすぐに裏へ抜けろ」とハリルホジッチ監督は身振り手振りで彼に語り掛けたのだ。

「まずは裏っていう感じなので、前の選手はそれをホントに口酸っぱく言われますし、そこに自分のよさも混ぜられるように、バランスをしっかり取っていきたいと思います」と宇佐美は自戒の念を込めて口にしていた。

そうやって指揮官に注意されても、全てその通りにプレーしないのが、あまのじゃくな彼らしいところ。次に車屋からボールを受けた時はあえて中央へ動いてみせた。

「守備から入るのは当たり前。僕もやりやすい」

「あれだけもう説明されれば、読まれてるってのもありますしね(苦笑)。もちろん背後を突ければいいし、それが求められてることではありますけど、臨機応 変にっていうのもまた大事だから。下手したら逆鱗に触れるかもしれないけど(笑)、すでにバレてるプレーをやめるのもサッカー選手として当然の判断。

求められている動きやプレー、振る舞いはありますけど、ブレずに自分らしくやりたいですし、自分らしさを出せなければいる意味もない。そのこだわりは代表でも持っていきたいと思います」と彼はプライドの一端をのぞかせた。

とはいえ、ハリルホジッチ監督が求めるコンパクトなハイプレスからのボール奪取、そこからの一気呵成の攻めというのは、宇佐美が思い描く理想の攻撃パターンでもある。指揮官と思い描くイメージが共通しているからこそ、彼は守備面での貢献を惜しまないつもりだ。

「今までの僕たちは攻撃から始められるようなチームとばかりやっていましたけど、これから強い相手とやるでしょうし、そこで守備から入るのは当たり前。逆 に僕はそのサッカースタイルの方がやりやすい。代表でそういうサッカーが待っていることを意識しながらガンバでやることも大事かなと思います」

今回の3日間で、宇佐美がどこまでハリルホジッチ監督の言う守備戦術を落とし込めるのか…。それ次第で今後の起用法も大きく変化するはず。彼にとってこの合宿はレギュラー昇格へのビッグチャンスに他ならない。

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