「憎らしいほど強いチームにしたい」 ガンバ大阪に今季、黄金期到来か。

今シーズンのガンバ大阪は突っ走りそうだ。

戦力補強、競争、継続性、優勝経験、モチベーション、伸び代と優勝するために必要な要素をすべて兼ね備えているからだ。

昨シーズンは、天皇杯だけの1冠に終わった。とはいえ、ナビスコカップは決勝に進出し、リーグ戦も年間総合勝ち点で3位になり、CS決勝に進出し た。ACLも優勝した広州恒大と準決勝で戦い、ホームで点が取れずに惜敗した。すべてのタイトルマッチでいいところまで行ったのだ。

だが、あと一歩、及ばなかった。

いったい何が足りなかったのか。

長谷川監督就任から3年、研究されてしまった戦術。

岩下敬輔がケガで不在になってから粘り強い守備ができなくなった影響が大きいが、それ以上に「ここぞ」という時に点が取れなかった攻撃陣の力不足と攻撃のバリエーション不足が課題だった。

長谷川健太が2013年に監督に就任して、まず着手したのが守備だった。堅守を武器にJ2で優勝し、2014年には3冠を達成した。まるでドルト ムントを意識したようなチーム作りで、ガンバはポゼッションサッカーから転換し、堅い守備とカウンターを武器にする堅実なチームに生まれ変わったのだ。

だが、昨年はそのサッカーで3年目、さすがに相手も研究してくる。実際、パトリック頼みのガンバへの対応はメソッドが出来上がっていたぐらいだ。 そのため、攻撃のバリエーションが少ないガンバは点が取れずに大事な試合を失ったり、格下相手に勝ちきれなかったりした。それがACL準決勝ホームでの広 州恒大戦、ナビスコカップ決勝の鹿島戦、セカンドステージ第16節の広島戦だった。

長谷川監督は、「攻撃の精度とバリエーションが……」とうめいたが、課題はタイトルを獲るための強化ポイントになった。

ガンバに不足していた2枚の攻撃カード。

長谷川監督が要請したのは、ガンバの中盤にいない左利きの攻撃的な選手だった。レフティの選手が右MFに入ると中央に広い視野を確保できるため、 より効果的な攻撃を選択できるし、変化を生むことができる。そこで白羽の矢が立ったのが、清水の監督時代に指導した藤本淳吾だった。

「僕が右で作って左で決めるパターンがうまくハマれば」

藤本は、ガンバでの攻撃パターンをそうイメージしたが、その“作り”こそまさにガンバに不足していたものだった。

もうひとつは、能力の高い外国人選手の補強だった。西野朗政権時代、ガンバの外国人選手獲得の条件は日本でプレーし、実績を残した選手だった。日 本のサッカーに慣れているので、フィットしやすく活躍が計算できるからだ。実際、過去に活躍したアラウージョ、マグノアウベス、バレーなどは、みなそうい う選手だ。アデミウソンは、まさにガンバの獲得基準に合う選手だった。昨年F・マリノスで8得点を取り、攻撃のセンスの高さは折り紙付きだ。しかも、とて もブラジル人とは思えないほど、周囲をうまく使う。

中盤に「競争」という刺激を。

異なる能力とスタイルを持つ2枚の攻撃のカードを手に入れたことで、昨年の課題をクリアできる環境が整った。

もちろん、いい選手を入れたからといって攻撃面の課題すべてが解消できるわけではない。昨年、ACL準決勝の広州恒大戦に負けた後、遠藤保仁は 「決定力不足という言葉で片付けられるものではない。いつも言うけど最後のところの個々の精度が大事。あと、選手同士の距離感や意外性というのが必要だと 思います」と言った。個々の選手のレベルアップを課題として挙げていたのだ。

ガンバの2列目には、宇佐美貴史を始め、倉田秋、阿部浩之、大森晃太郎、二川孝広ら能力の高い選手がそろう。昨年、19得点の宇佐美はシーズン前 半戦は得点王を獲る勢いでゴールを量産していたが後半戦の大事なところで失速し、タイトル獲得に貢献できなかった。倉田や阿部、大森にしても持っている力 からすれば数字的にも物足りなかった。2人の新加入は、停滞気味だった中盤に「競争」という刺激を与え、個々のレベルを押し上げてくれる役割も果たすだろう。

倉田「オレ、試合に出れんのかなって思いますもん」

「オレ、試合に出れんのかなって思いますもん。それぐらいガンバの中盤は質が高いし、めっちゃ層が厚くなりました」

倉田は、すでに危機感を露わにしている。

新戦力と既存の選手との融合は、まだ少し時間がかかりそうだ。ゼロックススーパーカップの広島戦では、パトリック、トップ下のアデミウソン、左 MFの宇佐美との攻撃での細かい連携がまだ十分ではなく、相手に脅威を与えるような攻撃が見られなかった。個人的には宇佐美をトップ下にした方が左右両サ イドをより活かせると思うが、ポジションも含めて修正が必要であるし、これからさらに連携面を深めていく必要がある。

アデミウソンと藤本が完全にチームにフィットした場合、チームの伸び代は想像がつかない。2005年に優勝した時はアラウージョと大黒将志の二枚 看板で49得点を挙げた。今回、アデミウソンがハマればパトリック、宇佐美の3人で、そのくらいの得点は十分可能になるだろうし、そのくらい稼いでもらう ことを長谷川監督も期待しているだろう。

「憎らしいほど強いチームにしたい」

また、若手が育ってきているのも大きい。ボランチではベテランの明神智和が移籍し、遠藤と今野泰幸ともに年齢が高くなっている。だが、昨年ユース 上がりの井手口陽介が成長し、ゼロックス杯でもスタメン出場するなどポジションを獲得しつつある。攻撃だけではなく、必要なポジションに若手が出てきたこ とはチーム力を高める意味で非常に大きい。

「憎らしいほど強いチームにしたい」

長谷川監督はそう言うが、それは現実的な姿として見えているからこその発言なのだ。

プラス要素ばかり挙げたが、不安材料もある。最終ライン、とりわけセンターバックは不安が大きい。岩下は昨年の12月に手術をして復帰には、もう 少し時間がかかる。西野貴治もケガで、まだ十分ではない。ゼロックス杯では今野泰センターバックに入ったが、佐藤寿人に決められたゴールなど、ポジショニ ングなどで対応の難しさを感じているようだった。

また、ACLは高さとパワーのあるFW選手が多い。岩下と西野という高さとパワーを持ったセンターバック2人が不在の中、どのくらい粘り強い守備ができるのか。

ガンバ黄金期到来を告げるシーズンに。

「ACLを獲る」

長谷川監督を始め、選手全員がそのことを意識している。リーグ戦を獲る以上に難しいと言われているACLを獲れば、他のタイトルは必然的に見えて くる。難しいタイトル奪取を掲げ、ハードルを高く設定して今シーズンに臨むところに、ガンバの余裕と自信がうかがえる。ただ、2008年、ACLを制覇し た時、リーグ戦は8位に終わった。当時は、二兎を追う余裕も戦力もなかったのだ。今シーズンは新戦力が融合し、チームがもうワンランク上のレベルに達すれ ばあらゆるタイトル獲得が可能になる力がある。

憎らしいほど強くなる。

ガンバ黄金期到来を告げるシーズンがやってきそうだ。

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