<ガンバ大阪・定期便160>宇佐美貴史、土信田悠生、角昂志郎。4つのゴールに見出した光。

■流れを変えた待望の先制点。宇佐美貴史のゴラッソが口火に。

 ガンバ大阪にとってはAFCチャンピオンズリーグ・エリート2026/27(ACL Elite)の初陣。J1リーグで開幕戦以来、白星をつかめていない状況。何より今シーズン、前からのプレッシングで高い位置でボールを奪い、ゴールを目指すサッカーががなかなか形になっていかないもどかしさーー。

 9月15日のコンアン・ハノイ戦(@パナソニックスタジアム吹田)もそうしたチームに漂う閉塞感を振り切ったとは言い切れない立ち上がりになった。情報が決して多くはない一戦に、また国内戦とは異なる個の特徴に、手探りで試合に入らざるを得なかったことも理由かもしれない。事実、立ち上がりの20分間は自陣ゴール前に近づかれるシーンも多く、逆にボールこそ保持できても思うように相手ゴールに近づけない時間が続いた。

 そうした流れを変えたのが、天皇杯2回戦・レイラック滋賀戦以来の先発出場となった宇佐美貴史が29分に奪った先制点だ。

敵陣深くからの右スローインで始まった展開。山下諒也を切り込み隊長に、安部柊斗、岸本武流、美藤倫が圧力をかけてボールを奪い切り、最後は山下が左の宇佐美にパスを送り込む。それを右足で受け取った宇佐美は左足に持ち直してコースを作り、振り抜く。ゴール左上を捉えたシュートは、相手GKグエン・フィリップも「シンプルに質の高い素晴らしいシュート。相手の方がうわてだった」と舌を巻くゴラッソだった。

「相手がマンツーマンできていたので、試合が始まった時から僕のところで何かをしないとな、と思っていましたが、なかなかそれができない立ち上がりの20分間だった。だからこそ、ボールがきた瞬間は『なんかやってやろう』というか、自分でフィニッシュまでいくことに迷いはなかったです。コースも見えていたし、グッと力が抜けていい感じで足がボールに乗った感覚もあった。滋賀戦で少し左足のハムストリングを痛めていたのもあって、最近はあまり左足のシュート練習をしていなかったんですけど、今日は出せたというか…たまたまですけど(宇佐美)」

 ゴールを決められたこと以上に宇佐美が喜んだのは、先制点によって「少し余裕を持ってサッカーができるようになり、自分たちの形も少しずつ出せるようになった」こと。今シーズンに入り、J1リーグの7試合ではいずれも先制される展開が続いていたことも頭にあったのかもしれない。その中では、この日がガンバ移籍後初先発となった土信田悠生を前線で孤立させないことを意識していたとも明かした。

「トシ(土信田)とは直近のFC東京戦でも途中から一緒にピッチに立っていたし、練習でもすごくやりやすいという感覚を得ていました。わからないことがあれば…例えば『こういうときはどう動いた方がいいですか』という感じで、どんどんコミュニケーションもとってくれていましたしね。また守備陣のクリアボールや、ボランチが跳ね返した後のセカンドボールへの反応も惜しみなくやってくれるフォア・ザ・チームに徹した選手なので、今日も彼を孤立させないようにできるだけ自分は前でうろつくことを意識していました(宇佐美)」

 加えて、状況に応じて長短のキックを使い分けながら、後ろに重くなりそうな展開を押し返す役割をこまめに繰り返していたのも特筆すべきだろう。宇佐美にとっては復帰戦となった直近のFC東京戦(J1リーグ第7節)も途中からピッチに立つ中で、長短のパスを使い分けながら詰まりかけたボールの出口を作り出す姿が光ったが、この日も状況を一気に攻勢に転じる技術、戦術眼は健在だった。

「その辺もまだまだ僕自身のコンディションというか、攻撃のクオリティはもっと上げていけると思っています。ゴールは2つ取れたとはいえ、それ以外のところは満足していないし、もっとチームに自分のクオリティを落とし込めるように、とも思っています。特に今日は相手の守備も3枚で、うちも3枚という当てやすい状況でプレーできましたけど、これがJ1リーグだったら、相手のアンカーが機転を効かせてセンターバックに降りてきて、とか、数的優位を作られて『なかなかいけない、奪えない、回せない』みたいな状況を作られてしまっていたはず。それを想像してもフィジカルコンディションはもっと上げなくちゃいけないし、前から奪いにいくならもう1つ上のクオリティが必要になってくると思っています」

■土信田悠生が『武器』を存分に知らしめた移籍後初ゴール。

 1-0で折り返した後半。雨足が強くなる中でチームを勇気づける2点目が生まれたのが、58分だ。右サイドの山下から送り込まれた丁寧なクロスボールに合わせて土信田がゴール前中央に割って入る。「自分の特徴はヘディングとゴール前で合わせるプレー」との宣言通り、頭でゴールネットを揺らし雄叫びを上げた。

「素直に嬉しかったです。点を取るという覚悟でガンバに来たからこそ、今日も点を取ることだけを考えていました。自分の前で相手DFを2枚、引きつけられていたので、自分は点に合わせて入る意識でした。相手選手を越すクロスボールをちゃんと自分のところに届けてもらったので(山下選手に)感謝しています。ああいう形で点を取る選手なんだということをチームメイトに理解してもらう意味でも、自分らしい形で点を取れたのは大きかった(土信田)」

 東京戦も同じタイミングでピッチに立った宇佐美をはじめ、練習から感じ取っていたというチームメイトの『質』にも感謝を寄せた。

「加入してからまだ間もないですがなんとなく自分のプレーはこうだ、っていうのを味方、チームメイトが理解してくれている。宇佐美くんからも前節の東京戦を含め『もう少しこうしたらいいよ』ってアドバイスをもらっていましたし、周りの選手も僕のプレーの特徴を理解してくれるのがすごく早い。僕の武器がわかりやすいのもあるかもですが、今日もチームメイトがそれを理解してボールを出してくれていたので本当にありがたかったです(土信田)」

 また、得点以外にも、前線で体を張ったり、守備の圧力をかけたり。持ち味を示したことについては「これからもっとトレーニングをしてよくしていきたい」と土信田。また、前半終了間際の44分に自身もシュートを狙える状況ながら山下にパスを出したシーンや、75分に右サイドのイーライ・アダムスが送り込んだグラウンダーのクロスボールに合わせ切れなかったことについても『伸びしろ』だと振り返った。

「(山下選手に出したシーンは)最初、自分で打つことも考えたんですけど、あまりにフリーだったのでパスを出す選択をしました。正直、出した後にもう一度返してもらえたらフリーだなと思ってそういう動きも意識していたんですが、思い切って足を振ることを考えても良かったかもしれない。また個人的には、イーライからのクロスボールに自分が1つ遅れてしまって入っていけなかったところは悔やまれます。ああいうところで全力で入っていけるのがストライカー。もっとやらないとな、と感じました(土信田)」

 それでも加入からわずか2試合目で得点ができたこと。しかも、彼の言葉にもあるようにそれが自身の武器を明確に示す得点であったことはポジティブな要素だと言っていい。ちなみに、その『頭』は駒沢大学時代に徹底して磨かれたものだという。

「もともと前線で体を張るタイプではあったんですが、駒沢大学に進学して、ロングボールを多用するサッカースタイルに身を置いてめっちゃ磨かれました。自分としてはニアでも真ん中でも、ファーサイドでも合わせられると思っているので、ガンバでも自分の特徴を知ってもらって、しっかり合わせていきたいです(土信田)」

■「仕掛けた以上は決め切る覚悟で」角昂志郎が奪った4点目。「ガンバの一員になれた」。

 その土信田の追加点を追い風に、追加点を奪ったのが角昂志郎だ。

 67分に宇佐美が「諒也様様。どうぞ点をとってください、というボールをくれたのでほとんどが諒也のゴール」と振り返った3得点目を刻んだあと、迎えた90+3分。ホームサポーターの目の前でゴール右下に流し込んだ。

 後半に入り、ウォーミングアップをしながら戦況を見守っていた中で、土信田のゴールに触発されたところもあったという。

「ウォーミングアップをしながらゴールシーンを見ていて、ちょっと置いていかれた感じがしたので(笑)、自分も点をとって彼に追いつきたかったというか。点をとった光景もすごくいい眺めだなと思っていたので自分もそれを感じられて良かったです(角)」

 79分に1失点を喫してしまったとはいえ3-1でリードしていた状況を思えば、イッサム・ジェバリから背後に出されたボールを、敵陣深くでキープすることも「考えなくはなかった」と角。だが「仕掛けた以上は決め切る覚悟で」左足を振り抜いた。

「自分が入ってから1失点してしまったこともあり、負い目を感じていた部分もあったんですけど、それでもまだリードしている状況を作り出してくれていた仲間のおかげで、あのシーンでも仕掛ける勇気を持てた。本当に仲間に感謝しています(角)

 第6節・ジェフ千葉戦で途中出場ながらガンバデビューを飾り、直近のFC東京戦では初先発を任されるなど『ガンバ・角昂志郎』としての公式戦3試合目。彼にとっては初めての移籍ということもあって、試合前は「どことなくガンバのエンブレムをつけてサッカーをしている自分にまだ違和感があった」と聞くが、それをうまく整理してピッチに立っていた。

「もちろん、シーズン途中の加入とはいえ早い段階で結果を残さなくちゃいけないという焦りみたいなものはありました。ただ、今日はその辺をうまく自分の中で整理できて臨めたというか。自分さえ点を取れればOKではなく、しっかりとチームのタスクをこなしつつ、取れるチャンスがあればそこをしっかり仕留める、という本当に単純なことを整理してこの試合に臨みました。正直、ガンバのエンブレムをつけてサッカーをしていてもどこかにまだ違和感があったんですけど、それが今日、バチっとハマった気がしたというか。いろんな思いを背負って移籍を決めたからこそゴールを決めた瞬間は少し安心したというか報われた気がした。もちろん喜びもあって、ドリブルで抜いてサイドネットにゴールが突き刺さった時はどこか夢のようでありながらも、仲間が祝いに来てくれたことで『ガンバの一員になれたんだ』という喜びも湧き上がってきました(角)」

 その言葉にある移籍に際して背負っていた『いろんな思い』については、完全移籍が発表された9月4日の練習後に明かしていた。

「(前所属の)ジュビロ磐田で10番をつけたいという思いでずっとプレーしていて、本来であればもっと活躍して、皆さんに『行ってこい』みたいに背中を押されて移籍をするのが理想でした。最近はあまり試合にも絡めず、結果も出せていなかったですが、正直もっとやり切ってから移籍したかったなという思いもありました。ただ、自分の将来を考えた時にできるだけ早くJ1でプレーしたいとは思っていたからこそ今回、話をいただいた時には、素直にガンバで、J1でプレーしたいという思いを優先しました。ジュビロ時代はキャプテンをしていた時期もありましたが、川島永嗣さんと一緒にキャプテンをしていたのもあって、どちらかというと僕は言葉で引っ張るより、ピッチでのプレーで引っ張ることに専念していました。サッカー選手はやっぱりピッチで結果を残す、活躍しないといけない職業だからこそ、ガンバでも『ここでこう活躍します』的なことを語るより、ピッチでのプレーで評価してもらえたらと思っています(角)」

 その際にはキャリア初の『関西』について「だいぶ慣れるのに時間がかかりそう」とも話していた角。

「車で街を走っても、地名も読めないし、道を間違えてばっかり(笑)。ただ、勝手なイメージで、関西は当たりが強い人が多いのかなと思っていたんですけど、意外と柔らかい選手が多くて、すごくワイワイしていて雰囲気もいいし、毎日が楽しい。あとは自分がいかにこの大阪に早く慣れるかだと思っています(角)」

 また「初めての環境に身を置くからこそ得られる刺激も力にしていきたい」という思いもあるそうだ。

 その「初めて」でいえば、ハノイ戦後のガンバクラップも、この日のゴールスコアラーと先頭に立った。やや戸惑いもありつつ、宇佐美にもレクチャーされてやり遂げ「映像で見ていたシーンだったので不思議な感覚でしたけど、最高の瞬間でした」と笑顔を見せた。

■「バラけず」「ネガティブな感情を捨てて」、仲間を信じて『やり切る』ことで現状を打開する。

 こうして、ACLE初戦で、公式戦4試合白星のない状況に終止符を打ったガンバ。天皇杯2回戦を除いて長らく遠ざかっていた『先制点』を取れたことや、久々に先発を飾った選手が試合の流れを変える動きを示せたこと。新加入選手が早い段階でゴールネットを揺らせたことは紛れもなくポジティブな要素だが、何より、奪った4つのゴールのうち3つが、敵陣で人数をかけてボールを奪い切ったところから生まれた得点だったことが一番の収穫だろう。

 ケガからの復帰戦で3アシストと圧巻の存在感を示した山下は試合後「何かが大きく変わったというより、ボールを奪いにいくタイミングや角度を意識してやればいけると思っていた」と明かしたが、これはつまり、前線でしっかり連動してボールを「奪い切る」ことができれば、特別シーズンに示した縦に速いサッカーも、ペナルティエリア内に枚数をかけた攻撃も、より実現の可能性が高くなるということだ。

 そして、そのためには、この先も、キャプテン・中谷進之介が繰り返してきた「バラけずに戦う」ことや、ハノイ戦後、宇佐美が話した「ネガティブな感情を捨てる」ことが不可欠になる。

「今シーズン、チームのブレーキになっているのは各々が、どこか迷いを持ちながらプレーしていること。なかなか成功体験が持てていないことで、前の選手にはおそらく『プレスに行っても後ろがついてこないなら意味がないかもな』…という感情があって、後ろの選手にはラインをあげてもひっくり返されるなら、あまり上げきれないな、みたいな雰囲気もある。その迷いをまずはチームから払拭するのが大事というか。もちろん勝てていない状況が続けば不安にもなるし、迷いが出るのは当たり前の心理ですけど、仮にそれがミスになったとしても(前からプレスに)いくなら全員でいく、いかないなら全員でしっかり守るという統一感のもと、仲間を信じてやり切ることを続けていれば、必ずこれだというものにたどり着く瞬間があるはず。誰一人として下を向いていないし、みんな間違いなくトライしようとしているし、状況を好転させるために覚悟を持って毎日に向き合っていることに嘘はないからこそ、恐れず、やり切る。そうしてバラけずに戦い続けようと思います(中谷)」

「このチームは1つ勝たないと波に乗れないみたいな未熟さみたいなものが3〜4年くらい前からずっとあるというか。頭の中がネガティブな感情になると普段できているプレーができなくなってしまい、良さが消えてしまう。別にクオリティが低いわけでもないし、チームとして弱いわけでもないのに、メンタル的にグッと沈んでしまうとプレー選択がすべて消極的になって、どんどんどんどん食らっちゃう、みたいなことが起きてしまう。でも、個々の選手は間違いなく質を備えているからこそ、そのネガティブな感情さえなくなったら、思い切りの良さもどんどん出てくるし、強さを示せるチームにもなる。今日は僕もその1つ、勝つためのきっかけづくりさえできれば、と思いながらプレーしていましたけど、先制点以降のプレーを見ての通り、メンタル的にもプレーとしてもポジティブに前向きにサッカーをやり続けることは改めてすごく大事だと思いました(宇佐美)」

 もちろん、その中ではハノイ戦のようにチャンスを掴んだ選手たちが『結果』を残すことによってチーム内の競争力を高め、ポジション争いを熾烈にしていくという好循環も必要になるだろう。選手、スタッフがそれぞれの立場で、模索をしながら積み重ねてきた力をこの先の戦いで確実に『白星』に変えていくためにも。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa