中村俊輔コーチへの偏見「それは間違い」 現場で見せる“自己流の指導”…期待したいJ監督就任

半年間でU-15~19世代からA代表まで幅広い指導経験を蓄積

「できれば、これまでやってきたスタッフと一緒に引き続き、活動したいです」  7月24日の続投会見にのぞんだ日本代表の森保一監督がこう語った通り、9月から再始動する第3次森保ジャパンのコーチングスタッフは、基本的に2026年北中米ワールドカップ(W杯)と同じ陣容になる様子だ。

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 となれば、名波浩コーチを筆頭に、斉藤俊秀コーチ、松本良一フィジカルコーチらの残留はほぼ確実。その傍らで、前田遼一・長谷部誠両コーチは7月27日に開講したJFA公認Proライセンス講習会・第2コース受講のため、森保体制ラストとなる2027年AFCアジアカップ(サウジアラビア)までの代表活動期間はほぼ帯同できなくなる。

 となると、指揮官は大会直前の4月に2026年W杯帯同を緊急要請した中村俊輔コーチにも再度、スタッフ入りをオファーするはず。本人もおそらく受託し、引き続き、A代表の指導に当たるのではないか。

 2022年の現役引退後、2023~25年にかけて横浜FCで長く共闘した四方田修平監督(現大分)も「俊輔は日本の宝」と話していたが、彼が今後、どのような指導者キャリアを歩んでいくかというのは、日本サッカー界全体にとっての大きな関心事と言っていいだろう。

 その中村コーチだが、ご存じの通り、W杯後の7月下旬にU-15Jリーグ選抜の活動に帯同。24日と26日のU-15リバプール戦(東京・西が丘)にも帯同し、選手たちにアドバイスを送った。

「24日の初戦の午前中のミーティングは俊輔コーチ中心にやってもらいました。今回は攻撃のタスクを全て任せましたが、いろんな映像を駆使しながら自分の経験を含め、プロや海外でやるうえで何が必要かを選手たちに話してくれた。その刺激もあって、非常にいい状態で試合に入れたと思います」と指揮を執った城和憲U-15日本代表監督は前向きに語っていた。

 そのミーティングの狙いを本人に聞くと、こんな回答が返ってきた。

「U-15代表でやっているコンセプトがあるんで、その動画をお借りして、コンセプトを示してトライしようと。これから振り返りの映像を見せますけど、そういうトライ&エラーの繰り返しが重要だと思います。

(今年3月に)U-19(Jリーグ選抜)を教えた時も、活動は4~5日間でしたけど、あの経験をチームに持ち帰って取り組み、成長してもらえたらと考えていました。

 その1人が今回、ガンバ大阪からドルトムントに移籍した山本(天翔)君。W杯の時、アメリカに来たU-19代表メンバーにも入っていたんで、挨拶に来てくれましたけど、U-19の活動の後、短期間で一気に成長した。選抜の活動をそういった飛躍の機会にしてくれたらいいなと思うし、そういう働きかけをしました」と。

 日々のディテールの積み重ねを大事にしてきた中村俊輔コーチらしい言い回しで、中学生年代にアプローチしたというのだ。

 現役時代から世界最新トレンドに目を向け続けてきた彼だけに、直近のW杯で体感した内容もミーティングに盛り込んだようだ。

「(7月15日のW杯準決勝・イングランド対アルゼンチン戦で)ニコラス・オタメンディ(リーベル・プレート)が2メートルの(ダン・)バーン(ニューカッスル)に1回も負けなかった。それは一体なぜなのか…。腕の使い方や体の寄せ方とかいろんなことを考えなきゃいけない。そこに気づいて、意識していくことが大事だという話もしました」

 中村コーチは具体名を挙げて指導。そういう例があれば、選手たちは分かりやすい。自分自身で繰り返し映像を見て、ピッチ上で実践していけば、自然と工夫を凝らせるようになっていくだろう。

 実際、U-15世代にとってW杯は決して遠い存在ではない。優勝したスペインのヤミン・ヤマルやパウ・クバルシ(ともにバルセロナ)は2007年生まれで、彼らの4つ上。2005年生まれの日本代表の塩貝健人(ヴォルフスブルク)や後藤啓介(フライブルク)らも6歳しか違わない。その後藤や塩貝のシュート練習に連日付き合った中村コーチからすれば、「早くその領域に到達する選手が1人でも出てほしい」という思いがより一層、強まったはず。本人はそのために最大限の努力を払っていく覚悟だ。

「後藤や塩貝のようなA代表の選手は日本のトップなんで、自分がパスを出したから急に何かが変わるわけじゃないと思うけど、まあ『寄り添う』ってことかな。自分もそういうことをいろんな指導者にしてもらって助けてもらったから。彼らをサポートしてあげて、環境を作ってあげること。それが自分にできることだからね」と彼は神妙な面持ちでコメントした。

 選手と近い距離感で向き合いながら成長を促していくことが、ある意味、”俊輔スタイル”なのだろう。そういう側面を知らない一般の人々は「中村俊輔はセットプレー専門コーチ」という見方をしているかもしれないが、それは間違い。本人もいずれ監督になっていくうえで、いろんなことができないといけないという自覚があるようだ。

「今回のU-15でもFKを指導しましたけど、そうすると『FKを教えている』とメディアの人は記事を書く。『中村俊輔はセットプレーの人』みたいになっちゃうけど、守備の部分ももちろんアプローチしてますよ。まあ『俺もいろんなことができますよ、アピール』なんだけどね(笑)。

 とにかく、自分が話したことを選手たちには持ち帰ってもらって、いっぱい練習してもらいたい。自分がその成長過程にいる人間の1人になれたら、それが一番いいと思いますね」と中村コーチは謙虚に発言。幅広い年代でさまざまな気付きを与えられる器の大きな指導者を目指そうと努力を続けている。

 2026年頭にフリーに転身してからの半年間で彼はU-15~19年代のJリーグ選抜を指導し、2026年W杯ではトップ選手に携わった。この貴重な経験を経て、指導者として着実にステップアップしているのは間違いない。仮にこの先、第3次森保ジャパンに入閣するのであれば、半年間のポジティブな体験を最大限生かすべきだ。

 1つ欲を言うなら、彼にはできるだけ早く、Jリーグクラブか年代別代表監督にチャレンジしてほしい。選手を伸ばし、攻守両面からチームを底上げし、勝てる集団を構築していく中村俊輔監督の姿を見られる日は果たしていつ訪れるのか。それを心待ちにしたいものである。

[著者プロフィール] 元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙や夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。日本代表は97年から本格的に追い始め、アウェー戦もほぼ現地取材。W杯は94年アメリカ大会から8回連続で現地へ。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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