「自分には時間がない」。危機感と共に北海道コンサドーレ札幌へ。唐山翔自が踏み出した新たな一歩。

 北海道コンサドーレ札幌にとっては今シーズン2度目の練習試合(30分×4本)、7月18日のヴィッセル神戸戦。1〜2本目で先発し、1トップを預かった唐山翔自はビハインドを追いかける展開の中、2本目の開始早々、3分に加入後初ゴールを決めた。青木亮太から逆サイドに展開されたボールをティラパットが中央へ折り返し、それを右足のアウトサイドでゴールにおさめた同点弾。シュートセンスに定評がある唐山らしさが詰まった得点だった。

「パオくん(ティラパット)がいいタイミングで出してくれたので冷静に見極めて決められました。自分のスタイルとかプレースタイルをチームメイトに知ってもらうためにもゴールを決めたかった…というか始動からまだ10日ほどですけど練習ではバンバン点を取ってたので。周りにもクオリティのある巧い選手がたくさんいて、いいパスもどんどん出てくる中で、それをしっかり試合とか練習試合で決めていくことが信頼につながると思っていただけに、決められて良かったです。札幌では久しぶりにトップでプレーしていますけど、めちゃめちゃ楽しいです。昔の感覚も蘇ってきて『やっぱ、俺ってこれよな』って思いながらプレーしています(笑)。チームのスタイルもしっかり繋いでいこう、FWにしっかり点を取らせるために構築していこうというサッカーなので、めっちゃやりやすい。今は毎日、点を取れる気しかないというくらい、自信しかないです。継続します!」

■ガンバ大阪・宇佐美貴史も惚れ込んだ得点力。「サッカーの神様が翔自に点を取らせたがってるんじゃないか? って思うくらいのレベル」。

 ガンバ大阪アカデミーに育ち、20年に同クラブでプロキャリアをスタートさせた唐山にとって、札幌はプロ6年目にして6チーム目の在籍チームだ。愛媛FC、水戸ホーリーホック、ロアッソ熊本、東京ヴェルディ、そして札幌。すべてガンバからの期限付き移籍で成長を求めてきた。

 うち、水戸は唯一、22年のシーズンのスタートから1年半にわたって在籍したものの、それ以外の3クラブは、いずれもシーズン途中から約半年間の在籍だったからだろう。今回の期限付き移籍は「1年を通して活躍する自分」を描いて決断したという。

「今回の期限付き移籍は自分からクラブにお願いしました。ありがたいことに三上さん(大勝/ガンバ大阪フットボール本部長)には、戦力として考えているから残ってほしいと言っていただいたんですけど、冷静にこの半年の自分を振り返った時に、監督(イェンス・ヴィッシング/現アル・イテハド監督)にはそこまで評価されているとは感じていなかったのもあって、ガンバを出て試合経験を積み上げる方が成長に繋がるんじゃないかと考えました。結果的にイェンスは退任することになりましたけど、そこはあまり気にしていません。この世界では起こりうることだし、自分自身は札幌の強化の方や川井健太監督から『ポジションはトップで起用したいと思っている』と声をかけていただいたことで、勝負してみたいと思ったので。あとは自分で選んだ選択を正解にするためにもシーズンを通して活躍できるか、点を取れるかだと思っています」

 近年のガンバではサイドでのプレーが続いた唐山だが、ガンバアカデミー時代を含め、本来はFW。的確なポジショニング、巧みな動き出しから、点取り屋としての『嗅覚』を最大限に活かし、ゴールネットを揺らしてきた。ガンバユース所属の高校2年生だった19年。ガンバ大阪U-23の一員として出場したJ2リーグ・福島ユナイテッド戦でJリーグ史上最年少となるハットトリックを達成した姿を記憶に留めている人もいるかもしれない。

 そういえば、アカデミーの先輩、宇佐美貴史(ガンバ)は唐山について、ことあるごとに「類まれな点を取る才能を持った選手」と言っていたのを思い出す。『天性の嗅覚』が理由だという。

「翔自がJ3リーグでハットトリックを決めた頃から見てきましたけど、なんていうか、とにかく点を取るんですよ、彼は。取るというか、取らせてもらっているというべきか、とにかく翔自の元にボールが集まってくる。ポストに2回も当たったボールが翔自の足元に転がってくるとか、そんなところに飛ぶ? みたいなボールが翔自に入って決定機になるとか。練習でも、試合でもとにかくその引き寄せる力がすごい。僕に言わせると彼こそがまさに『点を取る星の下に生まれてきた選手』。翔自がゴールを狙いに行くというより、ボールが翔自に吸い寄せられていく、サッカーの神様が翔自に点を取らせたがってるんじゃないか? って思うくらいのレベルです。なので、翔自がこの先、実績を積むにつれ、また、自信が膨らめば膨らむほど、僕なんて軽く飛び越えていくくらいバンバン、ゴールを量産する気がしていますし、あの才能がどう結実するのか、マジで楽しみです。密かにあいつに引導を渡されてユニフォームを脱ぐのが本望だと思ってます(笑)(宇佐美)」

 今から2年前。唐山が2度目のガンバ復帰を果たした24年に宇佐美から聞いた言葉だ。唐山よれば、実は以前からずっと宇佐美には「お前はFWやろ」と言われていたらしい。

「宇佐美さんにずっと言われていたのもあって、自分の中でもなんとくそうなんかなって思いはあって…。もちろん、ガンバでは僕以上に点を取れる選手もいましたし、サイドでの経験を積めたのも無駄とは思っていないんですよ。サイドをやるようになったから備えられたプレーもあると自負しています。でも、今回、川井監督からトップでの起用を考えていると言ってもらって、改めて自分の適性を確かめたくなったというか。明確にそう伝えてくれた監督の元でプレーできるチャンスを活かしたいと思いました」

 その言葉が事実であることは唐山の獲得にあたった、札幌のフットボール部部長、竹林京介氏の言葉からも明らかだ。

「川井監督と今シーズンの補強についての話を進める中で、翔自(唐山)は監督が挙げてくださったリストに名前がありましたし、我々としても彼を含め『J1で試合には出ていないけど才能のある選手』を中心に数名をリストアップしていました。その中で監督も『間違いなく、トップでプレーすべき選手。彼ならいろんな得点パターンを想像しやすいし、うちのFWにはいないタイプのストライカーだ』と。また、クラブとしても、これまで所属してきたチーム、ステージでのパフォーマンスもしっかり確認して白羽の矢を立てました。彼はどのチームでも試合に出ていたのでプレーを描きやすかったのもあります。今日の練習試合でのゴールシーンも意外と難しいボールだったと思いますが、彼らしい巧さが光ったシーンでした(竹林氏)」

■目標はズバリ『二桁』。チームでの連動を心掛けながら、札幌のJ1昇格に繋がる活躍を目指す。

 話を戻そう。そうして再び札幌に活躍の場を求めた唐山だが、自身5度目の期限付き移籍ということもあってだろう。特に緊張もなく、リラックスした状態でプレシーズンを過ごしているという。かつてのチームメイトや、アンダー世代の代表などで共にプレーした仲間が、数多く在籍していることも助けになっているそうだ。

「チームとしては6チーム目。引越しは今回で10回目ですからね。初日から挨拶だけはきちんとして、あとは自分の思うままに、普通に過ごしていたら、すぐに溶け込めるとわかっているので無理に自分を知ってもらおうと働きかけるようなことはしていません。札幌でも、まるで今までもいたかのように振る舞っています。みんなも優しいので、あれ? (前から)いたっけ? みたいな感じで受け入れてくれました (笑)。瑠くん(高尾)や陽斗くん(白井)をはじめ、知樹(田川)は小学生の時から知っているし、木戸柊摩らアンダー世代の代表で一緒にプレーした選手もいますしね。ってか、6チームにも在籍していれば、流石にどこに行っても知り合いがいます。そう考えても、どこにでも溶け込める適応力が、僕がこの6年で一番成長した部分かもしれません(笑)」

 2026/27シーズンの目標はJ2リーグでの『二桁』だ。「そのくらいの活躍ができないと後がない」と危機感を漂わせる。

「気がつけばプロ6年目で、もうすぐ24歳ですから。24年の熊本時代はシーズン途中に加入して13試合で3ゴール3アシストだったことを思えば、今シーズンは10ゴール10アシストくらいを最低ラインに考えないといけないと思っています。というか、そのくらいの自信がないとここには来ていないし、ここで結果を残せなくても次へ、という年齢ではないことも自覚しているので。ガンバに期限付き移籍で出してもらうのも最後という覚悟もあります。そういう意味では、自分が目指している姿になるための最後のチャンスをもらったのが札幌だと思っているので。こうしてスタートからみんなといい準備ができているからこそ1年を通して試合に出たいし、『二桁』を取って自分の価値を高めたい。ってか、ここで二桁が実現できなければ、そこまでの選手でキャリアを終える可能性も高くなると考えても、しっかり今シーズンの『結果』で突き抜けられるようにしたいです」

 唐山にとって「自分が目指している姿」とは日の丸を背負い、ワールドカップを戦う自分だ。今回の北中米大会を観ながら、改めてその思いを強くしているという。

「次のW杯が開催される4年後は28歳だと考えても、ほんまにこの1年で活躍しないとそこに間に合わないというか。躓いているような時間は僕にはもう残されていなからこそ今シーズンの『二桁』はマストだと思っています。この間、陽斗くんとも話していたんですけど、かつてガンバU-23で僕らと一緒にプレーしていた敬斗くん(中村/スタッド・ランス)がああいったキャリアアップを図っているわけで…正直、当時はあそこまで行く姿を想像していなかったけど、努力次第、結果次第でいくらでもキャリアアップができるってことは敬斗くんが身をもって示してくれているので。そこに自分も続くためにも、結果、数字。マジで頑張ります。ちなみにガンバでは大地くん(林)に『翔自のグッドラックとウェルカムバックは移籍シーズンの風物詩になってきたな』って言われていましたけど、ネタ枠になるのも最後になるように、次は本当に一人前の選手になってウェルカムバックをするのも僕の目標です(笑)!」

 明るい笑顔を携えて、飛躍を胸に誓った唐山。思えば、彼が尊敬してやまない前述の宇佐美は、彼にとって唯一のJ2リーグを戦った13年。ハーフシーズン、18試合の出場ながら得点ランクで2位となる19得点を数えた実績を持つ。

 当然ながら、その数字も頭の隅に置いているのか。

「もちろんです。僕はまだ小学生でしたけど、夏に宇佐美さんが(海外から)戻ってきて、めちゃめちゃ活躍してJ1昇格に貢献させたり、翌年の『三冠』に貢献した姿は今も覚えています。ただ、そこは目指すべき姿ですけど、そうした活躍を今シーズンの自分に求めるには、チームとして川井監督の元でやっている今のサッカーをもっともっと成熟させないといけないとも思っています。J2リーグは強度の高いチームも多い中で、今日のヴィッセル戦の1〜2本目のような強度の高い相手には、自分たちのボールをつなぐサッカーができない、とか、相手のペースになる試合も必ず出てくる。そういう時にいかに粘り強く戦えるか、組織として同じ意識で動けるかが大事だし、その中で見出した数少ないチャンスを仕留められるかで試合の流れも変わると思うので。自分の役割はその最後のところだと考えても、しっかり札幌の勝利に貢献できるように、J1昇格につながる活躍ができるように、関西まで活躍の噂が届くように、頑張ります」

 「自分で選んだ選択を正解にするために」。FWとして点を取って、取りまくる自身の姿を求めて唐山翔自の新シーズンが幕を開けた。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa

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