<異色対談>「遠藤保仁×岩田剛典」元日本代表と人気アーティストが語るW杯の注目ポイント… 遠藤が明かした意外な事実「実は妻が岩田さんのファンなんです」
日本サッカーを長年支え続けた元日本代表で現在はガンバ大阪のコーチを務める遠藤保仁と、エンターテインメントの中心で輝き続ける表現者、アーティスト・GANこと岩田剛典。トップであり続けるために必要なものは何か。勝負の世界と表現の世界、異なる舞台で戦い、経験と挑戦、その両方を知る二人が語り合った。
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北中米W杯の注目ポイント
――連日熱戦が続いているサッカー北中米ワールドカップ(W杯)ですが、お二人はどういったところに注目してご覧になっていますか。
岩田 なんといっても日本代表ですよね。サッカーの専門家ではありませんが、一般的な視点で見ても強いなと感じましたし、グループリーグ初戦のオランダ戦で2度リードされながらも追いついた試合展開を見ても地力があるなと。残念ながらラウンド32でブラジルに敗れましたが、代表選手たちの戦いからは大きなパワーをいただきました。
遠藤 3カ国でW杯が開催されるのは北中米大会が史上初めてになりますが、今回のような共同開催の場合、気候や移動時間を踏まえて、どこに拠点を置くのがいいのか考えるのが楽しいですね。最近はそんなふうにスタッフ目線で見ることが多くなりました。あとは開催国のアメリカ、メキシコ、カナダの代表チームがどういうサッカーをするのかも楽しみにしていましたね。
――北中米W杯では審判が装着するレフェリーカメラが大会史上初めて導入され、ほかにも分析ツールなどAIが活用されたハイテクW杯とも言われています。
岩田 最新の技術がリアルタイムに映像に反映されていて、その仕組みが本当に画期的ですよね。僕はサッカーゲームが好きでよくやっていたんですが、最新の技術が重なることで、サッカーゲームの中に入り込んだような感覚になりました。AIの技術など惜しみなく使われていてシンプルにすごいなと感じましたね。プレーヤーの視点からご覧になるとどうですか。
遠藤 サボりは通用しないですよね。動きの質が一発で見抜かれてしまうので。あと現役時代は意識していなかったんですが、レフェリーカメラの映像を見ると「こんなに近くで見られていたんだ」と新たな気づきもあって面白いです。オフサイドの判定も一瞬で可視化されるようになって、スピードも精度も一段と上がった。そういった技術の進化は見ている側からすると楽しいです。
岩田 確かに分かりやすいですね。
遠藤 選手の立場からするとそこまで見なくてもと感じる場面もありますけどね。ただ、技術の進化によって判定がクリアになり、より平等性が生まれていると感じます。
トップに立つ人に共通する点とは?
――W杯は世界の頂点に位置づけられる大会です。遠藤さんはサッカー界で、岩田さんはダンス、俳優、アーティストとしてトップで活躍されてきましたが、トップに立つ人に共通しているのはどういった点だとお考えですか。
岩田 僕のまわりを見ていると、成功している方は人よりもよく考え、よく努力している方が多いと感じます。自分の持っている武器でどう戦うかを徹底的に研究しているんですよね。それが僕の思う「努力」の本質です。もちろん、夢やロマンを追う熱量も大切ですが、同じくらい大事なのは、客観的な目線で自分をどうプロデュースしていくかを冷静に判断できる視点。その両方を持っている人が結果をつかんでいくのだと感じています。
遠藤 僕は自己分析出来る人かなと思います。どこを努力すべきかを分かっている人は、自分の強みをしっかり伸ばせますし、弱みも隠さず向き合って成長させていける。サッカーは11人に加えてベンチメンバーも含めて戦うスポーツなので、仲間同士でカバーし合う場面も多い。その中で自分の強みを発揮するためにも、自分を一番よく知ることは本当に大事。そしてもう一つは、ブレないこと。自分はこうだ、と決めたら貫き通せるメンタルの強さ。その揺るがない軸を持てる人こそ上のレベルに進んでいけるのだと思います。
――それは現役時代に遠藤さんが心がけていた部分ですか。
遠藤 若い頃は勢いで突っ走ることもありましたけど、経験を重ねるうちに、そうした“カド”のようなものが少しずつ取れていきました。自分の弱みも素直に言えるようになったし、むしろ言った方がいいと思えるようにもなってきて。いろんな選手に助けてもらいながら、自分の土俵でプレーする。それはどの監督の下でも心がけてきたことです。岩田さんは活動する上で何を大切にされてきましたか。
岩田 個人とグループでは働き方が大きく違いますね。グループの仕事では、チームワークや適材適所がとても重要で自分ができないことや、自分がやる必要のないことを仲間に任せることも、物事を円滑に進めるうえで欠かせないと感じています。どこで前に出て、どこで出すぎないようにして、どこを任せるのか。そのバランスを意識しながら取り組んでいます。個人の仕事は成功も失敗もすべて自分で背負うという点では怖いもの知らずで挑める反面、本当にすべてを自分で受け止めなければいけないという厳しさもあります。そのあたりに個人とグループの大きな違いがありますね。
遠藤 僕らは90分の試合の中で、実際にボールを持っている時間は2、3分しかありません。だからこそ、その限られた時間で何を発揮できるかがすごく重要で、ボールを持っている選手こそ“王様”だと僕は思っているんです。周りの10人は、その王様が最大限に力を出せるように働き続ける。サッカーはその連続。ボールを持っているときは、自分が描いている「絵」を思い切り出せばいい。僕の場合は、2つ先、3つ先を見てパスを出すイメージだし、別の選手なら「ここをドリブルで突破すれば違う景色が開ける」という発想になる。そうやって選手個々が違う「絵」を持ちながらも、チームとしては一つの大きな方向性を共有してまとまっていく必要があるんです。ただ、その大きな絵さえ共有できていれば、過程は各自が自由にやればいいとも思っています。個人では自分の好きなようにやればいいし、グループのときはそれぞれの特徴を生かして、前に出るべき人が前に出ればいい。僕はドリブルが得意ではないので、ドリブルの場面でも無理に仕掛けません。周りの状況を見ながら、自分がどう動けばチームにとって最善かを考えてプレーする。それが最終的にゴールに結びつけばという考えですね。
岩田 スポーツの世界も僕たちの世界もグループのなかでの個の在り方は似ているんですね。今のお話は共感できる部分が多かったです。
“ブレない部分”と“変わらなければいけない部分”
――お二人は移り変わりが速い世界で活躍されています。そのなかで変わらない核として持っているもの、逆に変わらなければならないと考えているのはどういったところでしょうか。
遠藤 どんな状況でもまずは“楽しむ”というところだけは絶対にブレていないと思っています。もちろん、3-0や4-0で勝つ試合もあれば、負ける試合もある。負けて楽しいわけではないけれど、その中でも相手との駆け引きを楽しむ姿勢は常に持ち続けてきました。そしてもう一つ、自分の武器を捨ててまでプレーしないということも変わらない部分です。キャリアの中には全く合わない監督もいました。でも、監督に寄せることは大事であっても、寄せすぎて自分の武器が失われる方が僕は嫌だった。だからこそ、自分の武器を最大限に出すことを常に意識してきたように思います。
岩田 ブレない部分と、変わらなければいけない部分、その両方をどう保つかは日々考えていることですね。僕たちの活動はファンの方の存在があってこそですが、ときには、自分が本来届けたい表現とは違うものを大衆に届けなければならない場面もあります。そういう状況が続くと、自分がこの世界に憧れを抱いた原点やルーツが、少しずつ削られていくような感覚になることがあるんです。だからこそ、どれだけ長く続けていても、自分の出発点をおろそかにしないことが大事だと思っています。僕の場合はダンスがすべての始まりでした。理由なんてなくて「ただ好き」だった。それだけで動き出した世界なんです。そこを見失ってしまうと、「自分は何のために頑張っているんだろう」とわからなくなってしまう。お金のためでも、ファンのためだけでもなく、自分の中にどれだけ芯と情熱を持って向き合えているか。それを常に自分に問い続けています。それがないと、きっとモチベーションを保てなくなってしまう気がして。
「実は妻が岩田さんのファンなんですよ」(遠藤)
――せっかくの機会ですのでお互いに何か聞いてみたいことはありませんか。
遠藤 実は妻が岩田さんのファンなんですよ。
岩田 本当ですか!?
遠藤 岩田さんの声で起こしてくれる目覚まし時計にサインをもらってほしいと頼まれたんですか、直前までその話をしていたのに忘れてしまって(笑)。だからせめてファンだったということだけはしっかり伝えておきます!
岩田 ありがとうございます! 僕からも1ついいですか。遠藤さんはプレーヤーとしてトップまで上り詰めて代表としても輝かしい実績を積まれました。ネクストステージで新たな挑戦のまっただ中だと思いますが、この先の展望はどのように描いていますか。
遠藤 監督を目指してライセンスを取りに行っているんですが、いろんな人と出会い、様々な視点に触れながら学ぶ毎日です。自分とは違う考えを持つ人たちと話すのが本当に楽しいですね。世界的にはフィジカル重視の流れが強くなっていますが、僕は昔のように“ザ・10番”が存在するチームをつくりたいと思っています。その先頭に自分が立ちたいんです。ペップ・グアルディオラ(前マンチェスター・シティ)という監督がサッカーを劇的に変えてからもう10年ほど経ちます。そろそろ次の誰かが新しい時代をつくるタイミングに差しかかっている。その“変化の先頭”に自分が立ちたいという思いも強いですね。もちろん結果を出すことは大前提ですが、何より大切なのは、見ている人も、プレーしている選手も「めちゃくちゃ楽しい」と感じられること。勝つことへのこだわりはありますが、サッカーはエンターテインメントの頂点にあるものでもあるので、見せて勝つチームをつくれたら最高ですね。とはいえ簡単な道ではないので、焦らず、毎日を楽しみながら進んでいけたらいいなと思っています。
岩田 僕は今やっていることを、もっと深く自分の中に根付かせていく。そうやってブレない自分をつくり上げていくことが、この先の自分を形づくると思っています。いろいろなことに挑戦してきたからこそ、今あるものをしっかり磨いていくことが大事なんじゃないかと感じていますね。



