ACL2決勝戦メンバー外の悔しさを経て…G大阪の名和田我空「不貞腐れるような選手を監督が使いたいか」
テクニシャンの危機感
明治安田J1百年構想リーグWESTの第18節(最終節)が24日に東京都のMUFGスタジアム(国立競技場)で行われ、ガンバ大阪は清水エスパルスに2-1で逆転勝利した。MF名和田我空の進化を感じさせる試合だった。AFCチャンピオンズリーグ2決勝戦でメンバー外の屈辱を味わった19歳が「反骨心をエネルギーにしてやってきた」と最終節に臨んだ。
【前編】「22歳までには海外へ行きたい」G大阪・名和田我空が語る現在地。19歳が求める“結果”
テクニシャンがピッチにいれば、攻撃が活性化する。さらにそのテクニシャンが鬼の形相でプレスをかけているならば、そのチームは強いはずだ。
世代屈指の選手として名をはせてきた名和田が、神村学園高時代から憧れ続けた国立競技場でこの日見せたプレーは、今季の進化を感じさせるものだった。
G大阪は清水に対してなかなか前線からのプレッシャーが機能せず、ボールを奪えなかった。すると58分にクロスボールからのヘディング弾で清水に先制点を奪われた。逆転を目指すべく、イェンス・ヴィッシング監督は名和田とFW南野遥海の2人を60分に投入。ここから試合の流れが変わる。
本職のトップ下ではなく、右サイドで途中出場した名和田は上下動を繰り返し、再三再四のプレスをかける。持ち前のテクニックを生かしたオン・ザ・ボールではなく、課題としていた守備での貢献が光った。
そして61分にゲームが動く。敵陣右サイドでのセカンドボールに名和田がヘディングで競り勝ち、ボールは逆サイドに展開。オーバーラップしてきたDF初瀬亮から上げられたクロスボールは南野へ届けられ、ヘディング弾が決まった。
ゴール前に走りこんでいた名和田はそのままボールを回収し、センターサークルにセット。その顔つきは必死そのものだった。危機感すら感じさせるほどーー。
「あれくらいのプレスをしないと試合には出られない。あれがチームの基準ですし、誰が出てもやらないといけない。ガンバ大阪にいる選手なら、全員ができていることです」
昨季リーグ戦の出場が4試合に終わった若武者は覚悟を持って百年構想リーグを戦っている。そのなかで、自身の現在地を改めて思い知らされる出来事が1週間前に起きた。
ACL2決勝戦メンバー外の悔しさ
G大阪は今月17日にサウジアラビアのリヤドでAFCチャンピオンズリーグ2の決勝戦を戦った。クラブはアル・ナスルとの死闘を制し、2015年以来となるタイトルを獲得した。
名和田も試合前には、幼いころからのアイドルであるFWクリスティアーノ・ロナウドらとの対戦に胸を高鳴らせていたが、メンバー外の屈辱を味わっていた。
「優勝したのでうれしいです。もちろんうれしい。でも何だろう…、個人としてはやっぱり悔しさのほうが大きかった。何も力になれなかった。ピッチ外ですこしでも力になれればと思って行動していましたが…。うれしさと悔しさの半々ですね」
この日の試合は、リヤドでの決戦後初となる国内での試合だったが、すぐさま気持ちを立て直していた。“テクニシャン”名和田の鬼気迫るプレーには「下を向いている暇はない」という気概があった。
「不貞腐れるような選手を監督が使いたいかというと、そうではないと思う。こんな若い選手がメンバーを外れたくらいで不貞腐れていたら成長はないし、ここでやる気が出ないと生き残っていけない世界なんです。だから練習から100パーセントでやってきました」
さらに75分には名和田が右サイドからグラウンダーのクロスを供給。これが再び南野へつながり、決勝点をアシストしてみせた。
攻撃面でも結果を残し、チームの勝利に貢献した一方で、試合後の表情はどこか険しい。聞けば、「一番練習している形のシュートを外してしまったんです」と2-1で迎えた89分のシュートシーンを悔やんでいた。
逆転後にトップ下へポジションを移した名和田は、ボックス内左から右足を振り抜いた。しかしこれはゴール右上に外れて、思わず天を仰いだ。
「先輩たちから『お前、何本あの形を練習しているんだよ』と言われるくらいやっている形でした。東さん(GK東口順昭)からも『いつも練習してるやん』と言われてしまって、悔しいです。練習が足りないですね」
サウジでの苦い経験があったからこそ、仕留めたい一発だったし、名和田のリーグ戦初得点が来季に持ち越しとなった瞬間でもあった。
まだプレーオフラウンドが残っているものの、名和田にとっては「悔しさのほうが大きかった」シーズンだった。とはいえ、この日のプレーには未来への希望があった。テクニシャンとして将来を嘱望されてきた名和田が、走って、闘える選手への道を着実に歩み始めているように映った。
世代別代表や高卒ルーキーとして注目を浴びてきた同選手だが、自身のことをエリートだとは決して思っていない。むしろ、たたき上げられてきたキャリアだという。
「世代別の代表活動やガンバのなかでも、自分は悔しい想いをたくさんしてきた。徐々に年齢も重ねてきたけど、その経験が原動力なんです。自分は反骨心をエネルギーにしてやってきたタイプですし、これからもその気持ちをどうやって力に変えていくかを考えています」
華麗な経歴やプレースタイルを持ちながらも、人一倍どん欲になってサッカーに打ち込むことができる。19歳にとって、この半年間での経験は確かな血肉となる。



