<ガンバ大阪・定期便152>進化を続ける、半田陸。右も、左も、そしてゴールも。

■タフな連戦も「楽しみながら戦えている」。

 圧巻。

 試合中、その2文字とともに思わずため息を漏らしてしまうようなパフォーマンスが続いている。

 昨シーズンもチームで唯一、そして自身にとって初めてとなるJ1リーグフル出場を実現し、試合を重ねるほどより強く輝きを放った半田陸だったが、今シーズンも公式戦8試合目にしてコンディションは上々。明治安田J1百年構想リーグ開幕戦から続く厳しい連戦にも「むしろ、ありがたい」と涼しい顔だ。

「毎年そうですけど、僕は試合をしないとコンディションが上がっていかないタイプ。公式戦を戦うことで足を出す感覚とか、ボールを奪う感覚が上がっていくだけに、タフな連戦はすごくありがたいです」

 まして、今シーズンはこの序盤戦からAFCチャンピオンズリーグ2を並行して戦えていることも追い風だという。

「国内戦とは強度も違いますし、戦い方やプレーの特徴も独特というか。Jリーグにはいないタイプの、初めて体感するようなプレーをする選手もいて国内戦とはまた違うモチベーションで戦えるし、それによって自分のコンディションやプレーをグッと上げてもらえるような感覚もある。もちろん、ACL2のアウェイ戦は移動時間が長かったり、気候やピッチコンディションなどとの戦いもあって、すごくタフでキツい部分もあるんですけど、だからこその成長もある。それを含めて楽しみながら戦えていますし、チームとしてもこの序盤にいろんな強度の試合を体感しながら新たな戦術を浸透させていけるのはとてもポジティブだと受け止めています」

 その中では半田自身も定位置の右サイドバックで出場を重ねながら、攻守にギアを上げてきた。守備でピンチを摘み取ったかと思えば、次の瞬間には攻撃に顔を出すーー。もはやその姿が『通常運転』になっている昨今は、いい意味でそのパフォーマンスに驚かなくなった人も多いのではないだろうか。

 しかも、3月4日に戦ったACL2準々決勝・第1戦、ラーチャブリーFC戦の後半からは、左サイドバックにポジションを変えて攻撃を加速。停滞していた流れを一気に変化させると、3月8日のJ1百年構想リーグ第5節・V・ファーレン長崎戦ではスタートから左サイドバックとしてピッチに立つ。

 さらに、試合の流れを完全に引き寄せた後半は前線に顔を出す回数を増やし、83分には右足のボレーシュートで決勝点ときた。まさに、圧巻。異論はないだろう。

「右コーナーキックからの展開で、いいところに溢れてきたので胸トラップをして、とりあえず振ってみようと思い切って足を振れたのが良かったんだと思います」

 取材エリアで半田が話している後ろを通り過ぎていく安部柊斗が「オウンゴールだよ」とツッコミを入れてニヤリと笑う。

「あの人、ホント、うるさい(笑)」

 近年は、すっかり大阪の地に馴染み、先輩後輩を問わずに楽しそうに仲間と戯れ合う(?!)姿をよく見かけるようになった半田も負けじと「うまいこと相手に当たって良かったです」と切り返し、笑顔を見せた。

■一気に流れを変えた後半。2点を奪い、逆転勝ちに繋げる。

 試合の流れとしてはACL2・ラーチャブリーFC戦に続き、長崎戦も難しい展開を強いられた。入りとしては決して悪くはなく、13分にはデニス・ヒュメットが先制点を奪ったところまではガンバペースで試合が進むだろうと思われた。

 だが、21分に長崎のマテウス・ジェズスに決められたFKで流れが一変してしまう。事実、以降の時間帯は、長崎のメリハリの感じられる攻守に翻弄され、かつ自分たちの連係でのミスも散見する中で思うように攻め切れない展開が続き、27分にはビルドアップ時に圧力をかけられたところから再びジェズスに追加点を許し、逆転された。

「前半は自分たちのビルドアップの時に相手もかなり勢いがあり…マンツーマンできていたし、(組み立ての)出口もないような難しい状態でした。自分もずっと右足で持つのではなく、オープンに持って縦に流すとか、自分のところからうまく背後を使えればもう少し相手陣地でサッカーができたんじゃないかなと思います。ただ、結果的にはチームとして弦太くん(三浦)のところから剥がすパスが入ったり、右サイドから前進していくことが多かったのと、僕のところで相手のノーマン・キャンベル選手が攻め残りしていた状況もあったので、どちらかというと、前半はそのリスク管理の方に重きを置いてプレーしていました。もちろん、内側にボールがくれば、オーバーラップもイメージはしていたんですけど、実際はなかなかボランチやセンターバック経由で侃志くん(奥抜)の左ワイドにもボールが入らなかったことで、そういう形になったのもありました」

 その言葉にもある通り、前半は守備のリスク管理に追われることが多く、半田もいつものようにサイドを勢いよく攻め上がっていくシーンは形を潜めたが、後半はチーム全体が強度を取り戻したこともあってだろう。かつ、長崎の選手の足が止まり始めたことも見逃さず、ガンバは一気にギアを上げ、ペースを取り戻していく。

「後半は相手の前の2枚の運動量がだいぶ落ちて、守備も機能していなかったのでボランチが自由にボールを持てるようになりました。左サイドからも侃志くんだったり、途中からはウェルトンにボールが入るシーンも増え、それに合わせて自分もオーバーラップを仕掛けるとか、より高い位置を取れるようになった」

 しかも51分という早い時間帯に、中谷進之介のボレーシュートがゴールネットを揺らして同点に追いついたことでより攻撃が加速。ほとんどの時間を敵陣でプレーしながら60分にはデニス・ヒュメットが、66分にはイッサム・ジェバリが、68分と71分にはウェルトンが、76分には山下諒也が、と再三にわたって決定機を迎える。

 だが、得点を奪えない。81分には美藤倫がドリブルで運んで前線につけたボールを中谷が丁寧に落とし、ペナルティエリア内でウェルトンが右足を振り抜いたが、それも枠を捉えることはできなかった。

 そうした流れに終止符を打つべく、ようやく『ゴール』に結びつけたのが、先に書いた83分の半田だ。名和田我空の右コーナーキックを相手選手がクリア。浮いたボールを岸本武流が泥臭く頭で競り勝ち、左に溢れたボールを、半田が仕留めた。

「去年もめちゃめちゃチャンスがあったのに、数字としてはダービーで決めた1点に終わってしまって悔しさが残るシーズンになったんですけど、今シーズンは例年に比べてまぁまぁ早いタイミングで点を取れたので嬉しいです。これをきっかけにアシスト、ゴールの数字はまだまだ伸ばしていきたいと思っています」

 ところで、だ。肝心なことを聞き忘れそうになるほど、左サイドバックを卒なくこなしていた半田だが、彼自身はどうだったのだろうか。ガンバでも過去に数回、試合終盤に左サイドバックにポジションを変えてプレーしたこともあったとはいえ、長崎戦のようにスタートから預かるのはプロになって初めてだ。右と左では視界も異なる中で、果たして半田は左サイドバックでのプレーにどんな手応えを得たのか。

 間髪入れず「難しかった」と返ってきた。

「足のステップの感覚も違うし、足の出し方も難しいです。ボールを受けた時も、最初のタッチをどうしても利き足の右に置きたいのもあって、ラーチャブリー戦でも長崎戦でも、ちょっと後ろ向きに受けちゃう時が多かったというか。もう少しファーストタッチで前に運んだり、オープンに置いて右足のアウトサイドでポケットにパスを流したり、といろんな攻撃のアイデアを出せるようになったらいいなと思ったし、ボールを運ぶ回数も、右サイドバックをしている時に比べたらぜんぜん少なかった。もちろん、それもまずはチーム全体のバランスを見て、ということが前提ですけど、監督に求められているサイドバックの役割を考えても、そこを任される以上は右でも、左でも、チャレンジする回数は増やしていかなきゃいけないと思っています」

 もっとも、半田のことだ。これまでも、苦境や難しさを乗り越えて新たな自分を見出すことに楽しさを覚え、それを成長の糧にしてきたことを思えば、おそらくはすでに、左サイドバックでのプレーも頭の中では自身の『幅』にしていけばいいと、ポジティブに転換しているはずだ。

 開幕前に話していた言葉と照らし合わせても、そう信じられる。

「イェンス(監督)のサッカーではよりサイドバックが高い位置をとって縦に仕掛けることを求められているし、それに伴って必然的に攻撃に関わる回数が増える。攻撃ではよりピッチの外側でのプレーや上下動もすごく多くなるはずですしね。また、守備でも、縦へのスライドにプラスして、横のスライドもすごく必要になるサッカーなので。後ろの選手はここ数年と比べて、一人一人の守るスペース、カバーするスペースが広くなる。つまり単純に運動量も、自分の意識を行き届かせる範囲も広くなって大変…なところもありますけど、僕はそれが逆に楽しみです。自分の特徴をより出せる気もするし、それを表現することでまた自分も大きくなれると思うので、しっかり走って、しっかり頭を働かせてプレーしたいと思っています」

 余談だが、プライベートではJ1百年構想リーグの開幕前に待ち望んでいた双子が誕生し、家族が増えた。出産にも立ち会い「2つの小さな命が並んでいるのは本当に可愛くて、尊くて、奇跡を見ているようだった」と目尻を下げる。家に帰れば日々、『新米パパ』としての奮闘が続いているらしいが、今はそうした家族との時間も大きな力になっているという。

「今日も奥さんは家で子供たちを見ながら家で応援してくれていたんですけど、初ゴールを届けられてよかったです。奥さんも今は初めてのことばかりで色々と大変なのに僕がサッカーに集中できるように、自分は毎日、寝不足になりながらもコンディションや食事のことを含め、いろんなことを配慮してくれているし、僕が遠征している間も一生懸命、子供たちを守ってくれている。その奥さんのためにも、毎試合泥臭く、走って、戦っている姿をしっかり示したいと思っているし、今日のゴールも奥さんへの恩返しというか、労いというか…うまくいえないですけど、とにかく奥さんや家族にすごくたくさん支えてもらって今の自分があるということが伝わるものになっていたらいいなと思います。この先はしばらくアウェイ戦が続いて、より奥さんには負担をかけちゃいますけど、奥さんのためにも、子供たちのためにも、いっぱい走って、いっぱい戦って、ゴール、アシスト、勝利を届けたいです」

 もちろん、次なる決戦、ACL2・準々決勝第2戦・ラーチャブリーFC戦もその思いを胸に、半田はピッチに立つ。右でも、左でも、ポジションは問わない。「応援してくれる人たちの想いに応えるため」「チームの勝利のため」に、愛する家族のために、ただひたすらにピッチを駆ける。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa/articles?page=1

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