今年20歳…期待の06年度組で「誰が抜け出すのか」 若手が抱く闘争心「絶対に負けられない」
期待の06年度生まれの選手たちは百年構想リーグで飛躍を目指す
2026年夏のシーズン移行前の特別大会・Jリーグ百年構想リーグは開幕3戦を消化。J1のEASTは東京ヴェルディが首位、柏レイソルが最下位という予想外の展開になっている。WEATではAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)参戦中のサンフレッチェ広島が首位に立っており、順当なスタートと見ていいのではないか。
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一方、J2・J3に目を向けると、EAST-Aのベガルタ仙台やモンテディオ山形、EAST-BのRB大宮アルディージャ、WEST-Bのテゲバジャーロ宮崎といったJ2勢が開幕3節までに3連勝。逆にJ1から降格してきた横浜FCが2連敗スタートで、昨季J1昇格プレーオフ参戦のジュビロ磐田や、北海道コンサドーレ札幌も思うような結果を出せていない。ここからの動向は全く予想がつかない。まさに混沌としたリーグになりそうだ。
こうしたなか、気になるのが、若いタレントの台頭だ。昇降格のない百年構想リーグは「各クラブとも大胆チャレンジができる絶好の機会」と言われ、「若い選手たちが積極的に使われるのではないか」という見方もあった。J1勢は2026-27シーズンのACLE出場権獲得がかかっているため、完全に若手主体にシフトするのは難しいが、「できるだけフレッシュな戦力を使いたい」という指揮官の思惑は確かに感じられる。
象徴的なのが、2028年1月加入がファジアーノ岡山に内定したばかりの小倉幸成(法政大)を開幕スタメンに抜擢した木山隆之監督だろう。1月のU-23アジアカップ(サウジアラビア)で大活躍した20歳のボランチのタレント力は間違いないが、特別指定選手をすぐに使うのは、やはり思い切りのいること。昨季の佐藤龍之介(FC東京)抜擢もそうだが、岡山にはそういった土壌があるのかもしれない。
その佐藤を含め、2006年度生まれの動向は1つ注目すべき点。もともとこの世代は傑出したタレントが揃っていると前々から評判が高かったからだ。今季も佐藤を筆頭に、徳田誉(鹿島アントラーズ)、道脇豊(アビスパ福岡)、中島洋太朗(広島)らがJ1に参戦。J2・J3でも永野修都(藤枝MYFC)、井上愛簾(松本山雅FC)らが主力の一角に位置づけられ、奮闘しているのだ。
佐藤は3試合連続での途中出場となっている
最も注目されているのは佐藤。「圧倒的な数字とプレーを見せ続けなければ、2026年北中米ワールドカップ(W杯)への道はない」と本人も開幕前に強調。強い覚悟を持って古巣での新シーズンに突入した。
FC東京はここまで鹿島、浦和レッズとのゲームを消化しているが、意外なことに佐藤は2戦連続でスタメン落ち。厳しいスタートを強いられている様子だ。
控えに回っている要因の1つは、佐藤が担う4−2−3−1の左MFに入っている遠藤渓太がトップフォームを維持していること。鹿島戦での先制弾を見ても分かる通り、鋭いフィニッシュとチャンスメークが大いに光っている。松橋力蔵監督もフラットに比較して、遠藤を選択しているのだろう。
もう1つはAFC・U-23アジアカップ参戦でキャンプに参加できず、チーム戦術への適応が遅れていること。それはやむを得ない事情ではあるが、佐藤自身が急ピッチで適応を進めていくしかない。
「ボールを受けたらまずはシュートだと思うので、そこは意識してやっていきたいです」と19歳の若武者は目をギラつかせていたが、短時間のプレーでも早くゴールという結果がほしいところ。そうすれば、指揮官の見る目も変わるし、スタメンの可能性も上がる。
早い段階で定位置をつかまなければ、4カ月後の大舞台行きの確率がどんどん低下する。本人も危機感を抱いているだろうが、今は結果を出すことに集中するしかない。
佐藤同様、出番を追い求めているのが、鹿島の徳田だ。直近3試合は出場時間がわずかに4分。本人も悔しい思いをしているに違いない。鬼木達監督はユース昇格2年目の大型FWのポテンシャルを認めており、昨季優勝争いの佳境だった10月のガンバ大阪戦ではPKキッカーに指名しているほど。
だが、その貴重なチャンスを逃したうえ、今季もレオ・セアラ、鈴木優磨、チャヴリッチという高い壁を越えられずにいる。その苦境からいかにして脱するべきかを徳田自身も真剣に模索していることだろう。
「自分はもっともっと突き上げていく必要があると思っています。若いからチャンスをもらうとかじゃなくて、純粋に戦力として認められるようにアピールしなきゃいけない。ゴールを奪うことはもちろんのこと、ボールを受けて動き直すとか、出てこなかった時に空いたポジションに飛び出すとか、細かいプレーができるようにならないといけない」と徳田は宮崎キャンプで語っていたが、その成果を早くピッチ上で見せつけてほしい。
G大阪2年目の名和田我空も上記2人と似たような立ち位置にいる。G大阪はここまでセレッソとの大阪ダービー、ACL2のアウェー浦項スティーラーズ戦、名古屋グランパス戦、ホーム浦項戦、岡山戦の5試合を消化しているが、名和田が出てきたのはそれぞれ後半43分、同44分、同16分、出場なし、同17分と本当にわすかな時間だけ。ポジションは右サイドやトップ下だが、山下諒也やイッサム・ジェバリなど実績あるライバルがいるため、序列アップはそう簡単ではない。それを本人も自覚しながら日々の練習に取り組んでいる様子だ。
「2列目のポジションはいい選手が沢山いる。どのポジションで出ても前への意識を強めて、得点にどれだけ絡むかが重要になってきます。プロ1年目の昨年、すごく悔しい思いをした分、今年こそはという気持ちは強いので、それをプレーでどれだけ表現できるかですね」と沖縄キャンプ最終日にも力を込めていたが、今のところは理想通りには進んでいない。
ただ、ガンバは試合数が多いため、いずれチャンスは巡ってくるはず。そこで目に見える数字を残せば、イェンス・ヴィッシング監督の見る目も変わるのではないか。今年は名和田にとって勝負の年になる。
J2藤枝に所属する永野は同じCBの槙野監督に師事
彼らJ1組とは異なり、下部カテゴリーにレンタル移籍している永野、井上は試合で成長できるチャンスをもらえている。
特に槙野智章監督から絶大な信頼を寄せられている藤枝の永野は開幕からフル稼働。2月14日の松本戦では3バックの中央に陣取って最終ラインを統率。2007年U-20W杯(カナダ)で当時のU-20日本代表守備陣をリードした槙野監督を彷彿させるような存在感を示したのだ。
「槙野さんは『自分自身の良さをどんどん出してほしい』と言ってくれますね。その前段階としてチームとしてやるべきことがあるので、うまくバランスを取ることを考えながらやっています。僕は槙野さんが浦和レッズでACL制覇した試合を覚えています。2018年ロシアW杯も見ていました。世界でやってきた人の近くでプレーできるのは本当に大きいこと。熱く気持ちを出す重要性も学びながら成長していきたいなと思っています」と永野は懇意初勝利の後、力を込めていたが、同じDF出身の指揮官から得られることは少なくないはず。絶好の環境を最大限生かし、この半年間で劇的な進化を遂げたいところだ。
その永野が所属する藤枝に敗れた松本には、広島から今季赴いた井上がいた。井上は開幕のRB大宮アルディージャ戦は後半途中からの出場で1ゴールをアシスト。藤枝線では満を持して先発出場したが、思うようにゴールに迫れないまま、後半途中に退くことになった。同い年の永野らに封じられたのも悔しさひとしおだったに違いない。
「背後への抜け出しのところは意識しましたけど、結果につながっていないので味方と合わせていく必要があると思います。ポストプレーも相手に潰されてしまう場面が多かった。守備を高い強度でやっている分、攻撃の力強さが足りなりがちですけど、自分がより力強さを加えられたらいい。この半年で2ケタゴールを目指してやっていきます」と井上は野心を前面に押し出した。
今年20歳になる2006年度組から一体、誰が抜け出すのか。それは非常に興味深い部分だ。すでに海外に赴いている同世代もいるだけに、Jリーグ組としては「絶対に負けられない」という闘争心を強く抱いていくことだろう。 2026年北中米W杯の後は彼らが日本代表を担っていく時代になる。ゆえに、この半年間を大切にしなければいけない。ここからのブレイクを楽しみに待ちたいものである。
[著者プロフィール] 元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙や夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。日本代表は97年から本格的に追い始め、アウェー戦もほぼ現地取材。W杯は94年アメリカ大会から8回連続で現地へ。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。



