佐々木翔悟のACL2初先発はサプライズに非ず。選手起用に透けて見えるヴィッシング監督の狙いとは?

 今季就任したイェンス・ヴィッシング監督率いるガンバ大阪は、徐々にその方向性を打ち出し始めている。「ハイプレス」「強度の高さ」が強調されがちだが、もう一つのキーワードが「縦」である。ドイツ人指揮官のそんな狙いが公式戦2試合での選手起用に透けて見える。

開幕戦の大阪ダービーでは昨季レギュラー格でなかった選手もスタメンに

 「誰が出るか、本当に分からない」。2月7日に行われた明治安田J1百年構想リーグの開幕戦を控え、多くの主力はこう口にした。

 沖縄キャンプの練習試合から主力とサブ組を明確に区別せず、大阪に戻った後の紅白戦でもはっきりとしたレギュラー組を見せなかったヴィッシング監督だが、セレッソ大阪との開幕戦では鈴木徳真や岸本武流、南野遥海ら昨シーズン、レギュラー格ではなかった選手がスタメンに抜擢された。

 もっとも鈴木は一昨年の不動のレギュラーだけに大きなサプライズはなかったが、多くのサポーターはACL2のノックアウトステージ・ラウンド16の浦項スティーラーズで先発に名を連ねた佐々木翔悟の名前に驚きを感じたのではなかろうか。

 後出しジャンケンではなく、筆者は今季、佐々木もチャンスを得る一人ではないかと感じていた。スタメン起用も近いと感じていたこともあり、セレッソ大阪戦の2日前、佐々木にゆっくりと話を聞かせてもらうことが出来た。

 「やりやすい感じはある。監督が求めていることに対して、僕の特徴が合っているのかなと思う」(佐々木)。

ACL2の浦項スティーラーズ戦では佐々木翔悟が先発に抜擢

 ヴィッシング監督が佐々木を大一番で抜擢した理由は浦項スティーラーズ戦のワンプレーが雄弁に物語る。後半13分、押し込まれる展開で自陣のゴール前でボールを拾った佐々木は、一瞬ルックアップし前方を確認すると左足から絶妙の縦パスをハーフライン付近に立つデニス・ヒュメットに配球。解説を担当した安田理大氏も思わず「ナイスボール」と口にしたが、ヴィッシング監督が求める「奪ったら基本的に前」(福岡将太)というプレーの一つだった。

 ガンバ大阪との契約が決まった後、既に選手の映像を確認していたヴィッシング監督は「いい選手が多いね」と水谷尚人社長に語っていたという。

 そんな中の一人が、恐らく佐々木だったのだろう。

 沖縄キャンプ中のある日、ロングボールのフィードをミスした佐々木に指揮官はこんな言葉をかけていた。「お前の特徴は知っているから、ミスをしても落ち込まずに、それを繰り返してどんどんやっていけ」(ヴィッシング監督)

 まだ荒削りなところも残しているが、左利きの貴重なセンターバックで、単なるフィードだけでなく、中央に正確な縦パスを刺せる佐々木のストロングポイントは、今後もアピール材料になるはずだ。

ハイプレス一辺倒でなく、ボール保持も重視するヴィッシング監督

 基本的には最前線からハイプレスを繰り出し、敵陣深くでのショートカウンターを狙いとする今季のスタイルだがヴィッシング監督はボール保持を軽視している訳ではない。

 まだ開幕前の段階ではあったが、中谷進之介の証言はこうだ。「縦への意識は強くなったと思う。ボールを取った後の鋭いカウンターっぽいのは増えて来ているが、(欧州で)イェンスがいたチームは圧倒的に強いチームだった。おそらく、向こう(相手チーム)がボールを持つ時間が相対的に少ないチームを持っていたと思う。僕らがそのサッカーをするには、もう少しボールを持たないといけない」

 チームの始動前はボールを刈り取ったり、プレスに長けた選手が重宝されると思っていた筆者ではあったが、明らかにチーム内の序列は変化しつつあるのは間違いない。

 ヴィッシング監督は沖縄キャンプでこう選手に伝えている。「自分たちのサッカーは前に速いけど、ただ単に縦に長いボールを蹴るサッカーではない」

 鈴木の起用もやはり、ボール保持の大切さと、縦パスに長けるが故である。開幕前、宇佐美貴史は沖縄キャンプで好調だった選手の一人に鈴木の名を挙げたがその理由を「去年はなかなか前の選手と目線が合わないこともあったけど、前に(ボールを)付けられている」と宇佐美は説明。浦項スティーラーズ戦の前半23分、敵陣深くで鈴木がボールを競りながらイッサム・ジェバリへの縦パスを入れたことが、その後の決定機につながった。

 ボール保持の時間が長くなれば、自ずと疲弊も避けられ、プレスの強度と持続性に好影響を与えるのは自明の理。ハイプレスを軸に縦に速い攻撃を繰り出すことと、ボール保持の時間を高めることは矛盾しないテーマなのである。

 指揮官が変われば、目指すスタイルも、顔ぶれの一部も当然変わるーー。一見、我々取材者やサポーターにとってサプライズに見える選手起用も、新たなスタイル作りの一環だ。

 その成否を語るのは時期尚早だが、少なくとも毎試合、スタメン発表が待ち遠しいのは事実である。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/shimozonomasaki/articles?page=1

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