<ガンバ大阪・定期便149>今年で40歳。5年ぶりの開幕スタメンを飾った東口順昭は今も、進化中。
■5年ぶりの開幕戦。「やってきたことが間違いじゃなかった」。
自身にとっては2021年以来、5年ぶりの『開幕戦』出場にも東口順昭は「迷いなく」この日を迎えていた。準備期間で積み上げてきた『自信』を胸に。
「近年は序盤に怪我が続いていたのに対して、今シーズンはここまで順調に準備ができている分、自信を持って開幕戦を迎えられる。チャンスが来たらしっかりと自分のパフォーマンスをするだけだと思っています。もちろん今シーズンも競争は覚悟しているし、実際、みんながいいパフォーマンスを続けているからこそ、GKグループとして後ろからしっかりとチームを支えていけるように、切磋琢磨しながらシーズンを進んでいければと思っています」
その言葉にもある通り、近年はケガのリハビリで始まるシーズンが続いていたのに対し、今年は始動日から万全の状態で臨み、かつハードトレーニングと向き合った沖縄キャンプでも着実にコンディションを積み上げてこれたからだろう。『開幕戦』ということに限らず、『大阪ダービー』だとか、イェンス・ヴィッシング新監督の初陣という特別な要素が重なっても、その自信に揺らぎはなかったそうだ。
もちろん、シーズン最初の公式戦だ。準備してきたことが全てうまくいくとは限らず、これまでとは違う公式戦という強度の中でどのように表現ができるのか、全く不安がなかったといえば嘘にはなる。
だが、だからこそ自分が過ごしてきた『過程』を信じた。
「シーズンが始まってからずっとスタートで試合に出るために準備をしてきたので。自分自身は5年も開幕戦から遠ざかっていたんやな、みたいな感覚ですけど、こうして『開幕戦』という舞台に帰ってこれたのは、自分がやってきたことが間違いなかったということだと受け止めています」
実際、この日も彼は終始落ち着いて、試合を進めた。正直、41分にセレッソ大阪が退場者を出して以降は、敵陣でプレーする時間が長くなったため、彼のセービングが目立つような展開ではなかった。相手のシュート数は前後半あわせて3本。うちヒヤリとさせられたのも、前半40分にセレッソ・喜田陽にシュートを打たれたシーンくらいだったと言っていい。それでも、寒空のもとでいかに集中を切らさず、アラートな守備を継続させられるか、という難しさとは隣り合わせだった中で、終始、隙のないパフォーマンスを展開。90分を『無失点』で締め括った。試合前に語った「どういう展開になってもGKは止めてナンボ」という言葉を自分自身に繰り返し、突きつけながら。
「前半は特に言うことがないという内容だったし、あのサッカーを誰が出ても同じように90分間やり続けられるようになれば、いい結果が出るんじゃないかという手応えも感じられました。個人的にも、展開的に相手がカウンターを仕掛けてくるのはわかっていたので、失点しないようにDFラインともしっかりコミュニケーションを取りながら、最後のところでほぼやらせなかったのは良かったです。チームとしては、今日はなかなかゴールをこじ開けられなかったですけど、キャンプの後半くらいから『ここを決められたらもう少し楽に試合が進められるかもな』というようなシーンは増えてきているので、それはチームとしてもいいところだと思っています。PK戦での勝利になりましたけど、チームとしてまた自信を持って前に進むためにも大事な勝利になりました」
その言葉にあるPK戦についても、キャンプを含めて継続的に準備をしてきたことをリマインドしながら、ガンバサポーターの声援を背にゴールマウスに立つ。結果、セレッソの5番目のキッカーが枠を捉えられず、一方のガンバは5人とも成功したことで、勝点2を手繰り寄せた。
「相手の情報も少し頭に入れながらでしたけど、キャンプでもやってきた自信があったので、まぁ、大丈夫かなという感じで入りました。シン(中谷進之介)がコイントスでガンバサポーターのいる側のゴールを取ってくれて、彼らの前で守れたのもすごく大きかったです。自分の中ではゴールマウスの半分より下のコースを消すことを心がけていたので、逆に5番目のキッカーのように上を狙ってくる選手はバーを超えるなり、外す可能性もあるかなと思っていました。結果的に僕の動きが目に入ったのか、相手のキックミスなのかはわからないですけど、僕自身はセオリー通りに落ち着いて臨めました」
ヴィッシング監督は試合後、PK戦のキッカーの人選、順番について「うちには経験豊富なコーチがいるので」と遠藤保仁コーチにすべてを任せたと明かしていたが、東口も「スタッフ含め、チームワークの勝利」だと喜んだ。
「僕は自分のプレーに集中していたので、ヤットさん(遠藤コーチ)が指示している姿は目に入っていたものの、正直、どんなふうに指示をしたのかまではよくわかってなかったです。ちなみに、僕への指示は…『頑張れ』だけでした(笑)。PK戦では3番目のキッカーの我空(名和田)があんなに堂々と難しいところに決めて、チームに勢いを与えてくれた。あのガッツポーズでサポーターも湧いていましたしね。彼のタレント性みたいなものも流れを引き寄せる理由になったんじゃないかと思っています」
■「練習で調整するようになったら終わり」。東口が意識し続ける、100%。
積み上げた『自信』は、これまでの『準備』の賜物だ。
2026年が始まってからはほぼ休まずに「ケガをしない体づくり」に取り組み、始動後も自身の体と対話を繰り返しながら日々やるべきことを整理、実行し、常に「動ける体」を意識してプレーを磨いてきたという。
「年齢を言い訳にするつもりはないけど、今年で40歳の体になっているのも事実なので。やり過ぎはケガのリスクを高めかねないだけに、まずはその日、その日の自分の体としっかり向き合って、都度、必要なこと、やりたくはなくても体のためにはやった方がいいことを自分の中で整理して実行してきました。例えば、今シーズンは練習前にチームで筋トレを結構ハードにやっているからこそ、逆に個人的にやっていたゴムを使ったトレーニングはあまり強度を上げてやらんようにするとか、それよりも自分の体の内面的なところに目を向けて『呼吸』を整えてから練習に入るとか。特に、前後のケアですね。練習後も自分の体の状態としっかり向き合って、過不足を確認し、それに応じてやることを変えるとか、寝る前に必ず『呼吸』を整えてからベッドに入るようにもなりました。と言っても、そんな難しいことをしているわけではなく(息を)吸って、吐いてを繰り返すだけなんですけど(笑)。でも、それによってしっかりと背骨が伸びて体がリラックスできるし、神経系のスイッチをオフにして心と体をリセットしてから寝るとよく眠れる気もする。実際、今年に入ってからほとんど人の手を借りたマッサージはやっていないのに、体の状態もいいですしね。もちろん、それがコンディションがいい理由の全てではないと思いますけど、朝起きてすぐと、寝る前には必ずリラックスする時間を設けて呼吸を整え、スイッチのオンオフをしてメリハリを作る方法は自分には効果的な気がします」
そんな話を聞いたのは、沖縄キャンプの後半だったが、そのキャンプ中も明らかに体のキレも良く、好セービングを続けていたのが印象に残っている。今シーズン、ヴィッシング監督のもとで取り組んでいる前線からのハイプレスからボールを奪い、縦に早く仕掛けるサッカーにおける『守備』の役割としても、例年に比べて守りやすくなったとも話していた。
「前線から全員が、しっかりとボールに行き切ってくれるし、その動きにみんながちゃんと連動していくから、後ろの役割も限定されてすごく守りやすい。そういう意味ではサッカーのリズムというか、テンポ的にも自分に合っている気がするし、だから最後は自分の役割としてしっかり止める、ということができているんじゃないかと思っています。もちろん、これから公式戦が始まれば、きっと練習試合では出なかった事象に直面するようなことも出てくるやろうけど、今年のチームは口を開いて考えを伝えられる選手も多いので。その都度、みんなでしっかりコミュニケーションをとってイェンス(監督)のサッカーをより理想に近づけていければと思っています」
また、百年構想リーグではSFIDAとサッカー漫画「キャプテン翼」によるコラボレーションラインから誕生したサッカーボール『TSUBASA J PRO』を使用しているが、そこへの適応も心掛けてきたという。
「百年構想リーグで使うボールは、表面の縫い目があまりなく、ツルッとした感じで、空気抵抗も少ない。昔のアディダスのジャブラニと似てるかも。なので、去年のアディダスのボール(コネクト25)とも違う軌道でシュートが飛んでくる感じがあって、最初は少し慣れなかったけど、今はもう(ボールの)癖も掴みました。滑りやすいのでキャッチは気をつけないといけないですが、キックにおいては逆にこれまでより蹴りやすくも感じていて、僕自身は相性が良さそうです」
2009年から始まったプロキャリアも今年で18年目。彼の言葉にもあった通り、5月には40歳になる。チーム最年少選手で、同じGKの荒木琉偉とは21の年齢差だ。その数字に「自分でもびっくりするわ」と笑うが、かといって特別な気負いも、年齢に抗う様子もない。例年と変わらず淡々と準備を続け、だけど自分の体の変化にはしっかりと耳を傾け、練習には必ず100%で取り組む。
「練習で調整するようになったら終わりというか。裏を返せば、試合に出る、出ないに関係なく練習をしっかりやっておかないと動かない体にもなってきているのも自覚しているし、若い頃のように急にパンと体が動くような年齢でもないので。だからこそちゃんと自分の体に向き合って、ちゃんと練習をすること。今は特にそこが自分の中でのキーやと思っています」
そうした継続の中で今の自身のキャリアがあると信じられるからこそ、今シーズンも愚直にそれを継続するだけだという。
「去年、鹿島のゴールキーパーの早川くん(友基/鹿島アントラーズ)がJリーグMVP(最優秀選手賞)に選ばれたことにはめちゃめちゃ刺激を受けました。思えば、GKの受賞は10年のナラさん(楢崎正剛)に次いで二人目で…当時もプロキャリアをスタートしてすぐの頃に『GKがMVPってすごいな!』と思った記憶があるんですけど、今回もまた大きな刺激をもらった。しかも40代でそれを狙える立場にあるというのも選手としてすごく幸せなこと。単に年齢を重ねるのではなく、そういう評価につながるような結果もしっかり意識して今シーズンを戦っていきたいと思っています」
そして、そんな東口の姿は、今シーズンもガンバにとって、またチームメイトにとって、大きな勇気と心強さに変わっている。
https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa/articles?page=1



