<ガンバ大阪・定期便148>42,101人を集めた白熱の『大阪ダービー』。初陣で掴んだ収穫と課題。

■百年構想リーグ開幕戦で、浮き彫りになったこと。

 J1百年構想リーグ開幕戦のカードに組まれたのは、ファン・サポーターのボルテージを一気に0から100にする『大阪ダービー』だった。キンチョウスタジアムの倍以上の収容を誇る、ヤンマー長居スタジアムでの開催ということもあり、集まった観客は42,101人。イェンス・ヴィッシング監督も初めての『大阪ダービー』を興奮さながらに振り返った。

「本当に最高の雰囲気でした。自分の現役時代を思い出すような、たくさんのファン、サポーターがゴール裏に詰めかけてくれました。試合が終わった後も、たくさんの方がガンバのフラッグを大きく振ってくれて、本当に最高のサポーターだと感じましたし、次もしっかり戦っていきたいと思いました(ヴィッシング監督)」

 試合としては指揮官が試合後の記者会見で、開口一番「なかなかリズムを作るのが難しかった」と振り返った通りの内容だった。今シーズンの初陣ということもあってだろう。正直、チームとして取り組んできた、前線からのプレッシングから高い位置でボールを奪い、かつ、縦に早く攻め切るというサッカーを狙い通りに表現できたとは言い難い。

 特に「縦に早く攻め切る」ことに関しては、思うようにいかなかった部分も多かったはずだ。41分にセレッソ大阪に退場者が出て、数的優位になってからも、引かれてブロックを組まれた相手の守備ラインをなかなか切り崩すには至らず、攻めあぐねた印象もある。

「10人になってからはクロスボールばかりになって単調になってしまった部分もあったので、もう1つ、2つ、アイデアを増やしつつ、人が関わっていきながら細かく崩していければ、ってことは試合後にもみんなで共有しました。そこは今後の課題になっていくんじゃないかと思っています(食野亮太郎)」

「数的優位になってからは、ある意味『あるある』の展開になり、難しかったです。本当に強いチームはそういう崩し切る力があると考えても、そこはまだまだ成長しなくちゃいけないところだと感じました。実際、マンチェスター・シティであればああいう局面で、引かれた相手に対しても崩し切って点を取るところまでいきますしね。そこは目指すべきだと思ったし、今日はPK戦の末に勝つことはできましたけど、90分で試合を終わらせることは今後の課題だと思います(南野遥海)」

 ただ、確かに収穫もあった。

 その最たるものが、『前線からの守備』においてチームとしての連動が見られたことだ。今シーズンに入って以降、それを実現するためのハードトレーニングを続けてきた中で、セレッソ戦ではチームがしっかりと連動して高い位置でボールを奪う姿が再三にわたって見受けられた。

 DFラインを預かる中谷進之介キャプテンが「後ろはほぼほぼ仕事がなかった」と話し、東口順昭が「言うことがない」と振り返った通りに、だ。彼ら以外にもそこに手応えを感じていた選手は多かった。

「前半はもう、前線が素晴らしかったです。正直、僕ら後ろはほぼほぼ仕事がなかったし、センターバックが釣り出される場面もほぼなかった。正直、試合前はその守備の部分で少し不安なところもありました。実際、去年の開幕戦も前からハメにいった結果、ワンツーで交わされて運ばれるみたいなシーンが多かったですしね。今年のサッカーでもそうなるシーンが増えることは覚悟していたんですけど、今日に関しては前線の二人から始まってサイドハーフ、ボランチとみんながしっかり連動してついていってくれたことで狙いとしていることがきちんと表現できたし、僕ら後ろの選手も楽に進められました。ただボールを奪った後の1本目のパスは少しズレることも多かったので。そこの質をしっかり求めないと前からプレッシャーに行く意味がなくなっちゃうと考えても、プレーの質の部分はもっと上げていかなくちゃいけないと思っています(中谷)」

「前半は特に言うことがないという内容だったし、あのサッカーを誰が出ても同じように90分間やり続けられるようになれば、いい結果が出るんじゃないかという手応えも感じられました。個人的にも、展開的に相手がカウンターを仕掛けてくるのはわかっていたので、失点しないようにDFラインともしっかりコミュニケーションを取りながら、最後のところでほぼやらせなかったのは良かったです。今日はなかなかゴールをこじ開けるところまではいかなかったですけど、キャンプの後半くらいから『ここを決められたらもう少し楽に試合が進められるかもな』というシーンは増えてきているので、それはチームとしてもいいところだと思っています(東口)」

「前線がすごく頑張れた試合。みんなが連動して前からプレスをかける上でも、お互いの距離間も良く、だからこそ、ボールを奪われた後もプレッシャーに行きやすかった。監督も、前から圧力をかけるのは仮にボールを奪われたとしても相手ゴールに近いところでボールを奪い返せるからだと言っていましたけど、そこはうまくいったのかなと。ただ、いい位置でボールを奪えるようになったことで(ボールを)持てる時間は長かったんですけど、そこからどうシュートまでいくかというところは課題として残りました(山下諒也)」

「監督はよくコンパクトとコネクションという言葉を使うんですが、全員がしっかりつながってコンパクトに前向きな守備ができれば、前半のような形になる。その部分は、キャンプからチームとして積み上げてきた部分が出せたと思っています。もちろん、そのサッカーをしようと思うと、僕ら前線の選手は守備で求められることも多くなりますけど、逆に攻撃では自由も多いので。僕みたいなタイプはゴール前でしっかり活動量を増やして、ボールを触るというのが特徴だと考えても、その守備をこなせば攻撃的に楽しくやれるし、実際、今年に入って僕自身は楽しくサッカーがやれているので、それが一番なのかなと思っています(食野)」

「去年は前線からのプレスがあまりうまくいかなくて、剥がされることも多かったんですけど、今年に入ってハイプレスをするとなった時に、もう一度去年の映像を見返したんです。そしたらプレスにはいっているけど、強度の部分で足りていないのが明らかだったし、その強度のところで去年以上のものを出せば絶対にハマるだろうと思っていた中で、今日に関してはそれがうまくハマった感じはありました。その連動を見出すために、お互いに声を掛け合いながら、目線で合図を送りながらやっていた部分もありましたけど、僕自身は何より前がしっかりプレスに行くから後ろもついてきてくれる、と理解しているので。実際、今日も安部(柊斗)選手や鈴木(徳真)選手がしっかり連動してついてきてくれたことですごくやりやすかった。そこは継続していきたいです(南野)」

■『勝利』という特効薬を積み上げて、強くなる。

 そしてもう1つの収穫は、PK戦の末ではあったものの勝利を掴めたこと。セレッソが前半の終わりに10人になってから、ガンバが退場者を出す84分まで、数的優位での戦いが続いただけに『無得点』に物足りなさを感じた人もいたかも知れないが、今シーズン最初の公式戦だ。選手の誰もが口にするように「練習試合と公式戦は全く別物」だと考えても、新体制での初陣からすべてがうまく運ぶとは考え難い。先の中谷の言葉にもあった「パスがズレることが多かった」のもある意味、想定内で、シーズンが始まったばかりの今は「何にチャレンジできたか」「それによってどんな課題が生まれたか」そして、それをどう改善して次の試合に繋げていくかに目を向けるべきだろう。

 そして、そのためには『勝利』が何にも変え難い特効薬になるからこそ、PK戦であろうと『勝利』を掴めた事実はポジティブな要素だと言える。

 ちなみに、そのPK戦。ヴィッシング監督によればキッカーの順番は「うちには経験豊富なコーチがいるので」と遠藤保仁コーチに任せたとのこと。結果、イッサム・ジェバリ、デニス・ヒュメット、名和田我空、中谷進之介、安部柊斗の順にキッカーに立ち、全員が成功。相手は5番目のキッカーが枠を捉えられなかったことで勝利を引き寄せた。

 4番目のキッカーに立ち、左上隅を射止めた中谷が振り返る。

「去年、ダニ(ポヤトス監督)から、貴史くん(宇佐美)やジェバリ(イッサム)がいない時は『シンも(PKを)蹴れるんじゃないか』と言ってもらって、蹴る練習をしていたんです。しかも僕、プロになって3回目のPK戦だったんですけど、全部4番目のキッカーを任されて成功していたんです。なので、偶然にも4番目のキッカーに指名された時は『これはきたな!』と思っていました(笑)。特にヤットさん(遠藤コーチ)にその話をしていたわけではなかったんですけど。でもボールをセットした時はもう、めちゃめちゃ緊張した(笑)! でも僕の前にキッカーに立った我空(名和田)があんなすごいコースに決めて、流れを変えてくれたというか。僕がコイントスで取った地の利を生かしてサポーターを盛り上げてくれたこともあって、PK戦の雰囲気も一変した。メンタル、強いなーと思って見ていました(中谷)」

 またこの試合は中谷にとっても『キャプテン』としての初陣だった中で『大阪ダービー』を勝利で締め括れたことも、素直に喜んだ。

「キャプテンになった時にも話したんですけど、僕がキャプテンになって一番心配していたのは、仮に去年の開幕戦の『大阪ダービー』みたいに大敗してしまったり、思うような戦いができなかった時に、サポーターの皆さんと選手の間に入って…とかそういう仕事だったので。それは開幕戦からまだ早いぞ、とは思っていたんですけど、何せ『大阪ダービー』なので。そこだけは心配していただけに(笑)、勝てて良かったです。あとはキャプテンとして自分のピッチでの姿でみんなを導くというか。監督に言われたようにちゃんとリーダーシップを取りつつ、僕の姿を見てチームがこうすればいいんだと思えるようなパフォーマンスを示そうと思っていました。僕自身もいい体のキレを感じながらプレーできたし、いいマインドで戦えた。みんなで続けていきたいと思います(中谷)」

 この一戦を機に、ガンバはAFCチャンピオンズリーグ2の戦いを含めて、5連戦と厳しい戦いが強いられる。特に12日に待ち受けるアウェイでのACL2ノックアウトステージラウンド16 1stレグの浦項スティーラース戦から、15日のJ1百年構想リーグのホーム開幕戦・名古屋グランパスまでは中2日のハードスケジュールだ。

 だが、見方を変えればこの『連戦』はチームが公式戦の中でいろんな選手、組み合わせを試しながら課題をあぶり出し、早急に成熟を図れる機会にもなるはずだ。そして、それはきっと、以降の戦いをより加速させるチームの財産になっていく。

https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa/articles?page=1

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