【G大阪】「解放された」宇佐美貴史が新生ガンバを『前へ』進める! 今年は「サッカーを楽しませていただこうと思います」◎開幕直前・連続インタビュー
クラブ創設35周年を迎えるガンバ大阪のキーマンたちを取り上げる『集中連載』。開幕を目前に控えた最終回は、チームの大黒柱・宇佐美貴史だ。今シーズンより中谷進之介にキャプテンを託すこととなるが、変わらず責任を背負い、ピッチに立つことを誓う。
年齢の近いイェンス新監督は「ナイスガイ」
昨年11月に負ったケガも癒え、今シーズンは始動日からチームメイトと共にハードなトレーニングに向き合ってきた。コンディションもいい。1月12日から約2週間の日程で行われた沖縄キャンプでも心身両面を高めながら、新たなサッカーに適応するための体を作り上げてきたという。
「毎年のことながら、開幕前のこの時期は、フィジカル面はもちろんメンタル面、戦術面を戦える状態に近づけていくのがテーマ。特に、今年はイェンス(・ヴィッシング監督)の志向するサッカーが前に、前に矢印を向けたサッカーで強度が求められるからこそ、まずはそこにしっかりついていきながら、ゼロからの競争に向き合っています。今のところ体のどこかに痛みや不安があるわけでもないし、このままケガなくしっかり日々の練習に取り組むことができれば絶対にコンディションは上がってくると思うので、今は目の前のことをしっかりやり切ることが全てだと思っています」
指揮官となったヴィッシング新監督は母国語のドイツ語のみならず英語も操るため、チームメイトの多くが英語でコミュニケーションを図っているが、宇佐美はドイツ語で話をすることも多いそうだ。
「19年夏にドイツを離れて結構経つのに、意外にもドイツ語を覚えているもんやなっていうのは自分でも驚き。僕は英語がそんなに得意じゃないので、むしろドイツ語で話せるのはありがたいです。イェンスと二人で話すときもほぼドイツ語でコミュニケーションをとっています。お互いのドイツ時代の話とか、『バイエルンってどんな練習だったの?』的なことも聞かれたりしました。もちろんガンバやサッカーの話もしていますよ。イェンスは年齢的にも近く、あの風貌どおり爽やかで、仲間や選手に対するリスペクトも感じるナイスガイ。これから一緒に仕事をするのが楽しみです」
練習では、始動日から10対10のゲームを行なうなど、端々に強度の高さを感じられるメニューが目をひくが、それもポジティブに受け止めている。
「練習前の筋トレに始まって、練習の合間も必ずジョギングが入るなど、最初から最後まで休む暇がないままトレーニングが終わるって毎日ですけど、自分がドイツでプレーしていた時代を思い返すと、おそらくイェンスはあれでもセーブしているんじゃないかなって気はします。初日からゲームをしたのにはちょっと驚いたけど、始動直後に行なったヨーヨーテストも、ドイツの乳酸値テストのほうがキツかったというか、もっと長い距離だった印象もありますしね。そういう意味では個人的に『あのときよりはマシ』って思えているのはデカいかな。あと1つひとつのメニューに明確な狙いがあるのも、しっかり目的意識を持って練習に取り組めてすごくいい。
たとえば、練習合間のジョギングにしても『ジョギングによって疲労回復と乳酸をたまりにくくする狙いがあるよ』とか『このメニューは、この部分を高めるためにするものだ』というように。だから、やらされている感がないというか。1つひとつのメニューも短期集中でリズムよく進んでいくから、毎回『今日もやり切った』という感覚で練習を終えられますしね。全員が横一線のスタートという状況もあって、チーム内にフレッシュな『競争』の空気が漂っているのもめちゃめちゃポジティブやと思っています」
サッカーについてはどうだろうか。先の宇佐美の言葉にもあったとおり、ヴィッシング監督はここまで『前へ』をキーワードにチームづくりを進めてきたが、宇佐美自身はそのサッカーをどう受け止めているのか。
「イェンスのサッカーはとにかく前に、縦に速くプレーすることが第一の狙い。プレッシングはもちろん、奪ったあともとにかく前を意識して、縦の上下動の中でゴールに向かおう、と。ロングキックを多用せずにボールをしっかり動かしながら前に進んでいこう、ということも繰り返し言われています。
ちなみに彼の言うその『前へ』という考え方は、何もピッチでのプレーに限ったことではないというか。イェンスはよく『thinking forward』という単語を使うんですけど、そこには『前向きに生きよう』とか『後ろは振り返らない』と言った想いも込めているらしい。つまり人生の考え方とか生き方みたいなものもひっくるめて前向きにというようなイメージでその言葉を発しているそうなので。イェンス自身も『自分は後ろを振り返らない。いつだって前向きに考えるし、それをサッカーに落とし込んでいる』って話をしていましたしね。そこは僕の思考ともすごくリンクする部分だからこそ、今シーズンはしっかりその言葉を自分に向けて進んでいこうと思っています」
キャプテン交代も「やるべきことは変わらない」
狙いを持ってチームづくりが進む中で、1月28日には今シーズンのキャプテンおよびリーダーシップグループが発表され、宇佐美は過去3シーズンにわたって預かってきた『キャプテン』を中谷進之介に受け継ぐことになった。彼の中ではシーズンが始まった直後から「今年はキャプテンはしない」と決めていたようだ。その理由もまた、前向きな考えがあってのこと。だからスッキリとした気持ちでサッカーに向き合えているという。
「23年からの3年間、キャプテンを預かってきて、この先のガンバの未来とか、チームにとって何がベストかを考えたときに、僕より下の世代がキャプテンをしてチームに新しい風を吹かせるべきだと思ったというか。そういう新陳代謝はチームが成長していく上で絶対に必要やな、と。ガンバに限らず、どのクラブにも言えることですけど、世代交代が遅れれば遅れるほど回収に時間がかかりますしね。もちろん、サッカーは年齢でやるものではないし、それはガンバでも(倉田)秋くんやヒガシくん(東口順昭)が示してくれているとおりやと思います。でも、ガンバの未来を考えると、今年で34歳になる僕がキャプテンであり続けるより、下の世代というか、若い世代がフレッシュな風を吹かせるほうが絶対にいい。だから今年は最初からキャプテンはしないと自分の中では決めていました。
と言っても、何も決まっていない状況で自分からそれを宣言するのも変なので(笑)。イェンスにはそれとなくは僕の考えも伝えていた中で最終的にはキャプテン発表の少し前にイェンスとも言葉を交わし、シン(中谷)をキャプテンに、という意向を聞いて、いいと思います、と返したって感じです。まぁ、キャプテンであろうとなかろうと、自分のプレーや責任が変わるわけではないし自分自身は大して何も変わらん気もするけど、チームにはそれによって生まれる変化が絶対にあると思うから。それはガンバの未来にも絶対に不可欠やと思うし、ここ2年はその変化をいい方向に促せる選手も増えてきたからこそ、いいタイミングなんじゃないかと思っています」
むしろ、彼自身はキャプテンを外れたことで自分にどんな変化があるのかを楽しみにしているそうだ。
「ガンバのユニフォームを纏う責任に変わりはないし、自分がやるべきことも変わらんから。特に気持ちが軽くなったとか、あからさまに何かが変わったみたいな感覚は、今のところは特にないです。ただ、公式戦が始まってから感じることは出てくるかも。この3年とは違った、少し俯瞰したような目でチームやサッカーを見られるようになるかも知らんし、これまでとは違う立場でキャプテンや若い選手をサポートしようとする自分がいるかもしれない。それによって自分が感じることも変わってくる可能性もありますしね。
自分自身にフレッシュな風を吹かせるためにも、そうなればいいなとは思っています。ただ、基本的にシンには、僕のサポートは必要ないと思っています。シンの思うやり方で先頭に立つことがガンバにいい新陳代謝を起こすことにもなるはずやし、シンはそれができる選手やと思うから。なので、僕もそこにしっかり足並みを揃えつつ、監督には『貴史には責任感から少し解放されて、プレーすることを楽しんでほしい』という声も掛けてもらっているので、サッカーを楽しませていただこうと思います」
開幕戦の大阪ダービーは「勝つのみ」
余談だが、このオフシーズン、宇佐美は初めてJFA公認Cライセンスコーチ養成講習会に参加した。指導者目線でサッカーに触れたことは、現役選手である自身にとって刺激になったのだろうか。
「選手と指導者は全く別物やなって思いました。自分で練習を組んで指導実践みたいなこともしたけど、プレーの見え方も変わるし、何より選手側のトレーニングに対する姿勢や機微みたいなものが、指導者にはこんなにも分かりやすく伝わっているんやなと驚きました。なんていうか、つまらんそうな顔をしているなとか、前のめりではやってないな、とか(笑)。『指導者にしてみたら、いい姿勢で取り組んでいる選手のほうが好ましいよな』とか。それを知って若い頃の自分は決して模範的な姿勢で練習に取り組んでいた選手じゃなかったと思い、『よくぞ、あんな自分に付き合ってくれたな』と過去、お世話になった監督の皆さんに感謝いたしました(笑)。
その一方で、指導者としての学びが選手に活かされるのかと言えば、それはまた違う気もするというか。講習会でも学んだような話をイェンスから聞くこともあって、それを受け取る側としては、こういう見せ方をしたほうがいいな、みたいに思うときもあるけど、選手である以上はやっぱりあれこれ考え過ぎず、全力でサッカーをするのが一番やと思うので。そこはこれまでと変わらずにやり続けるだけだと思っています」
今シーズンの目標について尋ねると「いつもどおり」と、具体的な中身は明言しなかった。宇佐美にとって、タイトルを目指すことや毎年のように掲げてきた『2ケタゴール』は当たり前過ぎる目標で、敢えて口にするまでもないからだろう。目前に迫ったJ1百年構想リーグ開幕戦の『大阪ダービー』についても、一言に全ての想いを込めた。
「勝つのみ」
その結果こそが、本当の意味でチームを「前へ」進めていく力になると知っているから、2月7日、宇佐美は開幕勝利だけを目指してヤンマースタジアム長居に立つ。



