<ガンバ大阪・定期便147>宇佐美貴史から中谷進之介へ。受け継がれた『キャプテン』。
■宇佐美貴史の思い。
チームが始動するにあたって、宇佐美貴史は自分の中でハッキリと決めていた。
23年から3シーズンにわたって預かってきた『キャプテン』について、だ。
「今年のキャプテンは自分より下の世代の選手がすべきだと思ってる(宇佐美)」
その重責から逃げるのではない。自由になりたいとも思っていない。
いやーー。
語弊を恐れずに言うなれば、キャプテンという肩書きがなくなったくらいで自由さを感じられるほど『ガンバ大阪・宇佐美貴史』の看板は軽くはない。事実、その肩書きがあろうとなかろうと、彼への期待の大きさが変わることもないだろう。今シーズンも例に漏れず、ファン・サポーターはその一挙手一投足に胸を躍らせ、ピッチに立てばその一振りに期待する。
そんなことは、宇佐美だって百も承知だ。ガンバのユニフォームを纏い続ける限り、彼らの想いを受け止める覚悟もできている。
ただ、その上で『キャプテン』は、次の世代に託す決意を固めていた。
「自分が決めることではないし、イェンス(ヴィッシング監督)がどんな『リーダー像』を描いているのかもわからんから、自分から監督にその意向を伝えることはしません。でも、この3年、キャプテンをしてきて、この先のガンバというクラブにとって、またチームにとって何がベストかを考えた時に、自分の中では僕より下の世代がキャプテンをしてチームに新しい風を吹かせるべきだという結論に至りました。そういう新陳代謝はチームが成長していく上で絶対に必要やし、長くガンバを見てきて…というか、これはどのクラブにも言えることやけど、世代交代が遅れるのはクラブにとってダメージしかないから。遅れれば遅れるほど、その回収に時間がかかりますしね。もちろん、サッカーは年齢でやるものではないし、それはガンバでも秋くん(倉田)やヒガシくん(東口順昭)が示してくれている通りやと思います。でも、この先のガンバの未来を考えると、今年で34歳になる僕がキャプテンであり続けるより、下の世代というか、若い世代がフレッシュな風を吹かせる方が、絶対にいい。だから今年は、キャプテンはしません。何も決まっていない現時点でそれを宣言するのも変やから、自分からそれを明言することはないけど、仮にもしイェンスから指名されたとしても、自分の考えが揺らぐことはないと思う。まぁ、キャプテンであろうとなかろうと、自分のプレーとか、責任が変わるわけではないし、自分自身は大して何も変わらん気もするけどチームにはそれによって生まれる変化が絶対にあると思うから。それはガンバの未来にも絶対に不可欠やと思うし、ここ2年はその変化をいい方向に変えられる選手が増えてきたと考えても、いいタイミングだと思っています(宇佐美)」
宇佐美自身は密かにそうした思いを携えながら、沖縄キャンプを過ごしてきた中で、1月28日にヴィッシング監督はJ1百年構想リーグシーズンの新キャプテンに中谷進之介を指名。併せて倉田秋、一森純、イッサム・ジェバリ、安部柊斗がリーダーシップグループを託された。宇佐美には事前にヴィッシング監督から意向を伝えられ「責任から少し解放されて、プレーすることを楽しんでほしい」と声を掛けられたという。もちろん、宇佐美も腹が決まっていたからだろう。二つ返事で「いいと思います!」と返したそうだ。
「さっきも言ったようにガンバのユニフォームを纏う責任に変わりはないし、自分がやるべきことも変わらんから。特に、気持ちが軽くなったとか、あからさまに何かが変わったみたいな感覚は、今のところは特にないです。今の時期はチームメイトの誰もがそうであるように、僕も1選手として、イェンスが求めるサッカーとか『強度』にもしっかりトライしながら、コミットしていくための準備を続けているだけです。ただ、もしかしたら公式戦が始まってから感じることは出てくるかも。この3年とは違った、少し俯瞰したような目でチームやサッカーを見られるようになるかも知らんし、その中ではこれまでとは違う立場でキャプテンのシンや若い選手をサポートしようとする自分がいるかも知れない。それによって自分が感じることも変わってくる可能性もありますしね。むしろ、自分自身にもフレッシュな風を吹かせるためにも、そうなればいいなとは思っています。ただ、基本的にシンには、僕のサポートは必要ないと思っています。シンの思うやり方で先頭
に立つことが、ガンバにいい新陳代謝を起こすことにもなるはずやし、シンはそれができる選手やと思うから。なので、僕もそこにしっかり足並みを揃えながら、サッカーを楽しませていただきます(笑)(宇佐美)」
■中谷進之介の決意。
その宇佐美からキャプテンを引き継ぐことになった中谷は、沖縄キャンプが終わる3日ほど前に、ヴィッシング監督から「チームをガイドする(導く)存在になってほしい」と意向を伝えられていたという。その時には具体的に『キャプテン』と告げられたわけではなかったが、1月28日の練習前に正式にその役割を任された。
「キャンプ中、貴史くん(宇佐美)を含めて何人かでお茶をしていた時に『誰がキャプテンをするんだろうね』的な話が出た流れで、貴史くんに『シンがやったらどうだ』みたいに言ってもらったこともありました。ただ、それは監督が決めることなので。僕自身は、特に誰がキャプテンになるかを気にすることなく、このチームに来た時から意識してきた『リーダーシップ』を持ち味の1つだと自覚して準備を続けてきて、結果的にその役割を任されたという感じです。ガンバのキャプテンは、歴代、レジェンド級の選手が預かってきたと考えてもすごく責任を感じていますし、今シーズンは新たにイェンスが就任した中で監督とチーム、選手をコネクトするような役割はすごく大事になってくるのかなと思っています(中谷)」
これまでのキャリアでは、ガンバのみならず前所属の名古屋グランパス時代も『副キャプテン』を任されたことはあったが『キャプテン』は自身にとって初めての役割だという。
「リーダーシップは自分の持ち味だと思っているし、これまでもそれで自分がペースを握っていくような感じもあったんですけど、キャプテンとなればピッチに限らず、チームのより広い範囲に目を行き届かせなければいけないというか。試合に出ている選手だけではなく、チームメイト全員を取りこぼさないような働きかけも必要になってくるのかな、と。その部分はこれまでの自分が意識していなかったところなので新たなチャレンジになりますが、兎にも角にも、自分自身がしっかり試合に出て活躍する、普段の練習から自分を表現することが大前提だと思うので。行動が伴わなければ、何を言っても説得力はないと思うからこそ、まずはそこを自分にもしっかりと求めていきたいし、日々の練習からその姿を示していこうと思っています(中谷)」
それはある意味、宇佐美の姿を見て、学んだことでもある。
「貴史くんの圧倒的な存在感、カリスマ性は真似できないけど、貴史くんのようにピッチでの姿、結果で引っ張ることは自分にもできるはず。今の段階でこれといって理想のキャプテン像みたいなものは特にないですけど、貴史くん然り、柏レイソルや名古屋などその時々でいろんな『キャプテン』を見てきたからこそ、それぞれのいいところを抽出して僕なりの『キャプテン』としての姿を見出していこうと思っています(中谷)」
今シーズン、中谷はガンバに加入してからの2年間、身につけてきた背番号『20』を『4』に変更している。名前の表記も1年目の『SHINNOSUKE』、2年目の『SHIN』を経て、『NAKATANI』になった。「背番号を変えるのなら、一緒に」という思いもあったそうだ。
「ここ数年、名前の表記だったんですけど、周りからは意外と苗字の方がいいという声が多くて(笑)。背番号についてはここ2年で『20』も自分の番号になってきたなって感覚もあったのでめっちゃ迷ったし、自分から『4』を取りに行った感じでもなかったんですけど、名前を変えるなら背番号も、背番号を変えるなら名前も、みたいな感じで一緒に変えちゃおうと思って変更しました。去年はアクシデント的なケガで少し離脱した時期もあったし、自分自身、うまくいかないなって思いながら過ごした時もあった。何よりチームとしても失点が多かったという反省も残ったので、今シーズンはケガをすることなくシーズンを通して稼動しながらチームに貢献するというのがまずもっての目標です。昨年に比べてイェンスのサッカーでは、縦横のスライドやスプリント力が求められるのは間違いないですが、対戦相手もいる試合ではやはりチームとして行き切る時間と落ち着かせる時間のメリハリも必要になってくると思うので。みんなでしっかり気持ちを揃えて戦いたいし、開幕の『大阪ダービー』に始まってAFCチャンピオンズリーグ2を含めて大事な試合が続くからこそ、いいスタートを切れるようにしたいです(中谷)」
ガンバにとってはヴィッシング新監督が就任し、ニューリーダーが誕生するなど色んな意味で転換期を迎えている今シーズン。その中で中谷はどんなリーダーシップを示しながらガンバに新風を吹かせるのか。リーダーシップグループの4人は、それをどう支えていくのか。宇佐美がどんなふうに「サッカーを楽しむ」姿をプレーで表現するのか。そして、イェンス・ガンバはどんなスタートを切るのか。
J1百年構想リーグの開幕が1週間後に迫っている。
https://news.yahoo.co.jp/users/expert/takamuramisa/articles?page=1



