堂安律から「優勝しろよ」 負傷を乗り越え”軸”に進化…最終節の逆転Vへ「思いを背負って」
最終節は目の前…小西雄大が背負う思いの数々
最終節を残して鹿島アントラーズと一騎打ちの優勝争いを繰り広げる柏レイソル。12月6日のFC町田ゼルビア戦に勝利すればリーグ優勝の可能性を残すなか、今季途中から加入したMF小西雄大が日本代表として活躍する同期からの言葉と、リーグ優勝への思いについて話した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・上原拓真)
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「リーグ戦とカップ戦で優勝するために移籍してきました」
小西がシーズン途中にも関わらず、移籍を決めた理由は「優勝」という大きなものを掴むためだった。所属していたモンテディオ山形はJ2で下位に沈む厳しい状況(当時16位)。それでも、かつて徳島ヴォルティスで共闘したリカルド・ロドリゲス監督からの誘いを受け、黄色のユニフォームに袖を通すことを決めた。
「短いサッカー人生のなかでJ1で優勝できるなんて、ほとんどの人がないわけで。それを掴めるチャンスがあるのに、行かないっていう選択肢はないかなって。もちろん山形への思いっていうのもありましたけど、そこに勝るものだったかなというのはありました」
169センチの小柄な21番はすぐさま柏サポーターの心を掴んだ。もっとも印象的だったのは、8月22日に行われたJ1リーグ第27節の浦和レッズ戦。途中出場でピッチに立つと、0-2から追いついた後半45分に逆転ゴールを決めて勝利の立役者となった。左足での意外性あるプレー、ゴールに直結する一振りに日立台のファン・サポーターは大きな声で期待を示した。
センセーショナルな活躍を見せた浦和戦以降は負傷の影響もあり、復帰したのは11月1日に行われたサンフレッチェ広島とのルヴァンカップ決勝戦。この試合では後半からのスタートとなり、チームも1-3で敗戦となった。小西も自身の出来について「評価に値しない」と厳しく指摘。「残りの試合でチームに何をもたらせれるかだと本当に思うんで」と下を向きながら言い聞かせた。
本人としても、チームとしてもルヴァン杯の敗戦は重くのしかかった。GK小島亨介やDF古賀太陽といった主力たちが、チームに漂う嫌な流れを感じながら臨んだ名古屋グランパス戦。小西もスタメン出場し、1-0で競り勝ってそれを断ち切ると、続くアルビレックス新潟戦に3-1で快勝。首位・鹿島の結果次第にはなるが、リーグ優勝の可能性を最終節まで残してきた。
加入当初は途中出場がメインで、ボランチながらゴールにどんどん向かっていく姿が印象的だった小西。復帰戦となったルヴァン杯の広島戦以降は、最終ラインまでポジションを下げ、ポゼッションの中心を担うようになった。ゲームチェンジャーから、攻撃を組み立てる軸に役割を変えた。MF小泉佳穂も「レイソルでも数少ない、いわゆるパサーというか」と評価する。
そんな小西のもとに、とある選手からメッセージが届いた。「優勝しろよ」。差出人はガンバ大阪ユース時代の同期で、日本代表の10番を背負うMF堂安律(フランクフルト)。少し照れくさそうにしながらも、堂安とのやりとりを教えてくれた。
「この前久々に連絡が来て。彼もJリーグをしっかり見てるんだなっていうところと、今季の柏のサッカーが魅力的なところも1つあると思うので、そこを彼も応援してくれてるのかなっていうのはあって。やっぱり刺激になりますし、学ぶものも沢山あるなっていうのは、同い年ですけどありますね」
今でも小西や堂安の年代では交流があるようで、オフシーズンに集まるような間柄。そんなかつての仲間からの思いを受け取る機会が、リーグ優勝への思いを加速させる出来事にもなった。
そして、ルヴァン杯決勝の前にはMF山田雄士の負傷が発表された。今季の柏では負傷者が相次ぎながらも、総力戦で勝ち点を積み上げてきた。そういった仲間のためにも残り1試合を戦わないといけない。小西も負傷した期間があるだけに「みんなのために」という思いは人一倍強い。
「ピッチに立つ選手っていうのはやっぱり、そういう思いを全員が背負ってやる必要があると思います。そこは僕だけじゃなくて、みんながそれを理解してやってるから、今のいいチーム状況があるのかなと。僕もそこはしっかり理解してるつもりです。歴でいうと(加入して)短いですけど、ピッチでそういう思いも証明していけたらなとは思います」
古巣、同期、今のチームメートたち…多くの思いを背負いながら、柏の21番がリーグ優勝がかかった大一番を迎える。



