G大阪のFWデニス・ヒュメットがJリーグで驚いた“サポーターの熱量”。日本の若手はチャンスがあれば欧州に挑戦すべき。ただ分かっておいてほしいのは…【インタビュー】
ヨーロッパのよう
攻守の重要局面となる「バイタルエリア」で輝く選手たちのサッカー観に迫る連載インタビューシリーズ「バイタルエリアの仕事人」。第57回は、ガンバ大阪のスウェーデン出身FWデニス・ヒュメットだ。
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前編では、得点を奪うための極意や自身のプレー哲学などについて訊いた。後編では、Jリーグで何を感じ、どのようなキャリアを見据えているのかを深掘り。プレー面から一歩離れ、日本サッカーや今後の目標について、自身の言葉で話してもらった。
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日本に来ることを決めた一番大きな理由は、ガンバ大阪が私を求めてくれたその熱量です。非常に積極的に求めてくれて、そのことには最大の感謝をしています。
オファーをいただいた時、父と兄に相談しながら話を進めました。やはり、自分の中ではこのJリーグという地球の裏側にある、全く違うリーグでチャレンジしたい、この壮大な冒険に挑戦してみたいという気持ちが強くありました。Jリーグで自分がどのようにプレーできるのかを試してみたい、その気持ちが生まれたのが大きな要因です。
日本に来て7か月が経ち、もう色々な面で慣れてきましたね。このように日本でプレーできる機会をいただけたのは、自分にとって本当に光栄なことなんです。
様々な状況で新しい文化に慣れることは、自分自身の人生の糧にもなります。その経験が人間を形作っていくものだと思っているので、今のところは何も問題なく、非常に快適に生活を楽しめています。
日本に来て驚いたひとつは、サポーターの熱量。ヨーロッパのようにサポーターの熱量が大きい、“熱い”と感じました。ガンバのホームゲームではスタジアムがほぼ満員になりますし、試合開始のホイッスルから終了まで歌い続けてチームを鼓舞してくれる。そのような文化は、選手にとっても非常にありがたい。その熱い情熱を感じられるのは、自分にとって嬉しい驚きでした。
海外挑戦は“直感で判断すべき”
日本は遠い存在だった。それでも、スウェーデン時代に日本人選手からJリーグの魅力を聞き、その舞台への興味を深めていたという。
若くして海外に挑戦した自身の経験から、「直感を信じて挑むことの大切さ」を強調するヒュメット。文化も異なる環境での成長を知るFWが、日本の若い選手たちに伝えたいメッセージとは――。
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実は、ガンバの前に所属していたスウェーデンのユールゴーデンには小杉啓太がいて、チームメイトでした。彼からは日本サッカーについて多くの情報をもらっていて、Jリーグの質は高く、選手のテクニックやスピードも優れているリーグだと聞いていました。
小杉のように私も若い時に母国を離れ、フランスへ行きましたが、若い選手が海外へ挑戦することは良いことだと思う。私の場合は、当時所属していたスウェーデンのマルメで大きなチャンスを得られずにいたなかで、フランスのトップチームでプレーできる機会をもらった。そのチャンスを掴んで、サッカー選手として成長していく気持ちが高まりました。
ですから、日本の若い選手もヨーロッパでチャンスがあるのであれば行くべきだと思います。もちろん簡単なことはなく、難しいこともあるでしょう。でも文化もサッカーも違う場所で、しっかりとした心構えを持って自分を成長させるために移籍するのは、非常に良いことだと思います。
日本の若いフォワードにアドバイスするとしたら、「直感で判断すべき」かなと。海外に行くチャンスを得られて、自分の直感が行くべきだと思うのであれば、チャレンジを恐れずに僕は行くべきだと思う。
ただ、その過程でもちろん、Jリーグのレベルが高いことは分かっておいてほしいです。もし直感が海外移籍に働かなくても、Jリーグで成功できるという直感があるなら、国内でプレーするべきです。それは本当に、自分の能力と感覚を信じるべきだと思います。
日本の選手とヨーロッパの選手には、特徴に違いがありますね。もちろん日本では技術的に高い選手も、質の高い選手も多い。そのうえで、あえて言わせてもらうのであれば、判断力、あるいは戦術がうまくいかない時にどう対応するかという順応能力に違いが少しあるのかもしれません。その適用能力や、ベストな判断をする力は、もしかしたら外国籍選手のほうが少し早くできるのかな、と感じることはあります。
ガンバはもっと上を目ざせる
ヒュメットは、ガンバ大阪には「もっと上を目ざせる力がある」と熱く語る。目標は個人の数字ではなく、チームとしてのタイトル獲得だ。
そのためにも、あらゆる場面でさらなる成長を誓うヒュメットは、毎試合で熱い声援を送ってくれるサポーターに恩返しをすべく、常にゴールと勝利に向けて全力で走り続ける。
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ガンバのサッカーは、自分たちの戦力やサポーターの応援を見ても、もっともっと上を目ざせると思っています。改善できる面は常にあるはず。その目標を常に高く求めていくのが自分たちの使命だと感じています。
攻撃的なサッカーをしていると言われますが、それは攻撃的な選手としては嬉しいこと。ガンバはもっとできるし、もっと上を目ざせるんです。
自分自身としては、日本でのプレーを通じて、もっとヘディングに磨きをかけたいという気持ちが強い。1対1のデュエルでのヘディングや、シュート、あるいはヘディングをそらしてチームメイトを活かすプレーなど、様々な局面でヘディングのスキルはもっと自分の中で上げていかなければいけないと捉えています。
私も成長を続けて、そしてガンバでタイトルを獲りたい。それはリーグなのか、ルヴァンカップなのか、天皇杯なのか、あるいはACL2なのか。とにかく、このチームの一員として頂点の景色を見たいんです。
個人的に得点やアシストをしたいという気持ちは、もちろん攻撃的な選手であればあるかもしれませんが、私は自分のトロフィを求めているわけではなく、それは二の次でいい。チームの勝利のために戦うだけです。
ガンバは熱心なサポーターがいるクラブですし、彼らの情熱を毎日感じています。その情熱に私は恩返しをしたい。本当に、それだけです。
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インタビューはオンラインで通訳を介して行なわれたが、それでも画面越しの表情や話す雰囲気から、真っすぐにサッカーと向き合う真摯な姿勢が感じ取れた。
一言で“真面目”。ひとつ質問をすれば、内容を膨らませて回答してくれる。言葉の端々ににじみ出るのは、クラブへの誇りと勝利への強い執念。G大阪をさらに上へと押し上げるべく奮闘する、デニス・ヒュメットの今後の活躍に注目だ。
※このシリーズ了
取材・構成●手塚集斗(サッカーダイジェストWeb編集部)
通訳●小野優(ガンバ大阪)



