広島対G大阪でVAR複雑介入も円滑プレー再開、チームに感謝のJFA審判委「こういう関係をこれからも続けていきたい」

日本サッカー協会(JFA)審判委員会は27日、都内でメディア向けレフェリーブリーフィングを開催した。8月からキャプテンオンリーが適用される中、両チームの選手やスタッフが審判団をリスペクトして円滑に試合が進められた事象が紹介された。

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キャプテンオンリーは名称から、試合全体を通してキャプテンのみが主審と会話できるような誤解も生まれているが、JFA審判委員会やJリーグは各選手がこれまで通り主審と通常のやりとりができることを強調している。PKなどの重要な判定が下された際に主審を取り囲むような行為を抑制するルールで、主審は原則キャプテンを呼んで説明を行う。このときでもキャプテンが異議を唱えた場合は警告の対象となる。認められていない選手が主審に近づいた場合、イエローカードの対象になることもある。

そうした新競技規則下で行われたJ1第26節・サンフレッチェ広島対ガンバ大阪では、PKの可能性でオンフィールド・レビューが行われる場面があった。

開始2分、広島のCKからFW中村草太がゴール前にこぼれたボールに反応。ボールに触れたところGK一森純と接触して転倒した。最初の判定は中村のオフサイドにより、G大阪の間接FKでの再開。ただ中村はG大阪DF中谷進之介のクリアミスに反応しており、オフサイドは成立しない状況だった。そこでVARが介入し、オンフィールド・レビューへ。御厨貴文主審は映像を見た結果、オフサイドでもPKでもないとして一森へのドロップボールでの再開を最終判定とした。

佐藤隆治JFA審判マネジャーはこの事象に対して「色々な意見が出るシーンだと思います」とコメントし、「攻撃側の選手がボールにプレーした後にGKが結果的に不用意に倒したと判断してPKという意見もあると思います」と話した。ただ「攻撃側の選手がもう一度ボールにプレーできるかといったら、このケースではガンバの選手がここ(ボールが流れた先)にいるので次プレーできるのはなかなか現実的ではない」と振り返り、御厨主審が「接触はしているけれどもサッカーの一部」としてノーファウルと判定したことを説明。「我々はそれを支持しています」と見解を述べた。

このシーンはオフサイド判定からPKの可能性によるレビューを経てドロップボールでの再開になる複雑な事象だったが、「誰も詰め寄らないですよね」と佐藤氏。最終判定後、両チームの選手やスタッフから大きなリアクションがなかったことに着目した。

「特に広島の選手からしたらPKになるかもしれないという期待もある中で、判定が(PKには)変わらなかった。色々な思いをすると思います。それはベンチも含めてだと思う。そこで詰め寄って『なんでPKじゃないんですか』ということもないですし、監督も含めてレフェリーの判断に対してリスペクトしてもらっている。なので試合もスムーズに再開できた」

そうした振る舞いによって「このシーンでいえばキャプテンオンリーをする必要はない」と滞りなく試合が再開。佐藤氏は「レフェリーを囲んでいるシーンがJリーグのイメージを考えたときにいいかといったら決してそうではない中で、みんなが良いサッカーをしようとしている中のひとつ」と総括し、チームの協力に感謝を示した。

また、川崎フロンターレ対アビスパ福岡でキャプテンオンリーが適用されたシーンも紹介された。

川崎FのDFフィリプ・ウレモビッチがオンフィールド・レビュー後に一発退場になった後、清水勇人主審は両チームのキャプテンを呼んで判定を説明。佐藤氏は退場処分を受けたウレモビッチも当事者として加わっていたことに理解を示すとともに、川崎Fの主将MF脇坂泰斗が真摯に話を聞いたことでスムーズな再開に至った好事例だとした。

ただ福岡主将DF奈良竜樹は相手選手の退場に納得しているため特に説明することがなかったことから、脇坂のみを呼ぶ形でよかったようだ。佐藤氏はキャプテンオンリーについて「必ずしも両キャプテンを呼ぶのがルールではない」と説明した。

佐藤氏はそうした8月の事象を振り返って「これはこうしなきゃというのもあるし危機感を持っている」とレフェリングの面で課題があることも強調。その上で「レフェリーがこういうふうにしていて、チームも協力してやってくれている。こういう関係をこれからも続けていきたい」と話し、互いに協力しながら魅力ある試合づくりに取り組んでいくことを誓った。

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