チームは降格の危機も…海外2季目を戦い抜いたSTVV山本理仁が実感する欧州での成長「確実に進化している」【インタビュー】

「目に見える結果が自分には求められている」

ベルギー1部シント=トロイデン(STVV)の山本理仁が海外2年目を戦い抜いた。

東京ヴェルディのアカデミーで育ち、高校2年生だった2019年に飛び級で東京Vのトップチームに昇格。22年に加入したガンバ大阪から23年の夏にSTVVにレンタル移籍し、昨夏に完全移籍を果たした。

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しかし今季、チームは苦戦を強いられた。レギュラーシーズンを16チーム中の14位で終え、残留を懸けて争うプレーオフに回り、最終節でなんとか1部残留を決めるというぎりぎりの状況だった。

そのなかで山本はリーグ戦21試合に出場。そのうち13試合で先発と昨季より6試合スタメンで出たゲームは多かったが、「個人的に納得はしていない」という。23歳の日本人MFがそんな今シーズンを振り返った。

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もともと、海外でプレーするのは小さい頃からの夢で、STVVからオファーを受けた時、すぐに「挑戦したい」という思いになり、23年の夏にレンタルで加入して昨夏に完全移籍しました。

STVVは僕が加入する前には、遠藤航選手(リバプール)や鎌田大地選手(クリスタル・パレス)、冨安健洋選手(アーセナル)などが在籍されていたクラブで、彼らは今、日本代表やヨーロッパのトップレベルでプレーされています。しっかりとベルギーで活躍すれば、評価してもらえるというのを先輩方が示してくれているので、自分も同じようにステップアップしていきたいと思っています。

それでも今季は、個人的に満足のいくシーズンではありませんでした。昨季よりもスタートから出る試合は増えましたが、コンスタントに出られたかといえば、そうではないです。出場した試合で良いプレーができた時もありましたが、シーズンを通してずっと良い調子をキープできませんでしたし、それは来シーズンの課題です。目に見える結果が自分には求められているので、もっと成長しなければ次のレベルにはいけないと思っています。

今季はチームが残留争いをしていたのもあり、去年よりもアバウトなサッカーをするようになりました。自分としても難しいところはありましたが、そのなかでも球際やセカンドボールへの対応の部分は意識しながら、自分の持ち味も出せるように考えながらプレーしていました。

「ベルギーとJリーグではサッカーの種類がまったく異なる」

チームの厳しい状況や思うように試合に出られない日々など、さまざまな葛藤があるなかでも、ヨーロッパのタフな環境に身を置いたことで、自身の成長を実感している。

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フィジカル面は確実に進化していると感じています。もちろんチームにもよりますが、ベルギーとJリーグではサッカーの種類がまったく異なります。縦に速くて、五分五分のボールを奪い合う場面も多いので、必然的に強くなっているのかなと思います。

筋トレにも積極的に取り組んでいて、周りの人たちからは日本にいた時よりも身体がシュっとしたと言われるのですが、実際には体重が3キロぐらい増えています。以前は僕のプレースタイル的に、筋トレは最低限でいいと思っていましたが、やはり必要だと痛感しています。今もガチムチになるつもりはないですが、特にベルギーは球際のバトルが多く、フィジカル的な要素は必ず求められる部分です。

ベルギーリーグとJリーグの1番の大きな違いは、トランジションの差です。ベルギーのほうが行ったり来たりする回数が多く、ゲームのスピード感がまったく異なります。

そのなかでも僕が持っているプレーの丁寧さは、通用すると思っています。思いやりのあるパスやメッセージ性のあるパスを出せるのは自分の強みです。一方で、1人でやり切るとか、プレーを完結させるというのは、僕に足りないものだと思っています。

今までは味方を使いながら崩せたらいいと思っていましたが、ベルギーではどうしてもサポートが少なかったり、フォローがない状況も少なくないので、個で打開できる力をつけなければいけないと感じています。

また、コミュニケーションの部分においては、基本的には英語で会話をしていて、2年でだいぶ上達しました。

英語は18歳ぐらいの時から本格的に勉強していて、先生にカフェでレッスンをしてもらったりしていました。今は、チームメイトのアメリカ人の選手とよく話をしていて、言い回しなどを教えてもらっています。やはりネイティブの人と話すのが、1番分かりやすいというか、勉強になります。

STVVは日本人が多く在籍しているクラブなので、他の国籍の選手たちは日本人に慣れていて、リスペクトを持ってくれています。僕はチーム内で意識的に日本人ばかりで集まらないようにしたり、トレーニングでグループに分かれるときも、他の国籍の選手たちと組むようにして、コミュニケーションを図っています。

「理想像はボックス・トゥ・ボックスの選手」

その左足から繰り出される高精度のパスや、広い視野を活かしたゲームメイク。センス溢れるレフティの理想の選手像とはーー

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左利きの選手として、やはり左足のクオリティで負けたくないところはありますし、セットプレーのキッカーも務めているので、自分の左足からゴールを生み出せたら何よりも嬉しいです。昔から右足のほうにあるボールでも利き足のアウトサイドで触ったり、左足へのこだわりはあったかもしれないです。単純に右足が使えないだけかもしれませんが(笑)。

プレー中に1番意識しているのは、ゲームの流れです。今、どういう状況なのか。自分の持ち味を出すためには、落ち着いたサッカーをしなければいけません。

でも相手に攻められている時間帯などもあるので、その時々でどんなプレーが必要なのかはつねに考えています。あとは、ボールをもらう前に周りを見ておくことは、とても重要です。自分はめちゃくちゃフィジカルが強いわけではないので、相手に当たらないポジショニングは意識しています。

理想の選手像を言語化するなら、ボックス・トゥ・ボックスの選手です。守れて前にも出られる。それができる体力は自分にはあると思っているので、そのクオリティをもっと高めたいです。

例えば、アーセナルのマーティン・ウーデゴーは好きな選手の一人です。基本的にはシンプルにやりつつ、最後に印象的なプレーができるので参考にしています。

他にはクラブ・ブルージュにいるベルギー代表の(ハンス・)ファンアーケン選手は、プレースタイルが自分と少し重なる部分があります。スピードはそこまでないけど、周りがすべて見えていて、ワンタッチ、2タッチでプレーできて、点も取れる選手です。

また、アントワープの(フィンセント・)ヤンセン選手は、ベルギーで対戦した選手のなかで1番衝撃を受けた選手で、化け物でした。もともとトッテナムなどでもプレーしていた選手で、彼が前線にいたらボールが全部収まりますし、降りてきて前を向いて、サイドチェンジして、点を取るみたいな。攻撃面では何でもできて、本当凄かったです。

あと、チームメイトで凄いと感じたのは、パリ五輪でU-23日本代表として一緒に戦った細谷真央(柏レイソル)。彼の馬力、苦しい時に前線でボールをキープしてくれたり、前を向いて突破できてしまうところには本当に驚かされますし、日本でそれができるのはあいつぐらいかなと思います。 ※後編に続く。

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