J1積極補強で戦力アップに成功したチームは? 各クラブ動いた6月移籍市場、新戦力・補強「本気度」動向を精査

代表ウィーク明けの先週末に行われたJ1リーグ第20節で注目されたのが、クラブW杯開催によって設けられた6月の特別登録期間に加わった新加入選手たちだった。例年以上に早く動き、かつ騒がしい移籍市場の中で戦力アップに成功したチームは果たしてどこか。

【写真】代表未招集の万能FWといえば

首位を走る鹿島アントラーズは、左利きの大型左サイドバックの小川諒也(←シントトロイデン)と30歳のセンターバックの千田海人(←東京ヴェルディ)の2人を獲得した。現在28歳の小川はFC東京時代の2021年に日本代表として国際Aマッチ5試合に出場した実績を持ち、強烈かつ正確な左足が魅力。千田は遅咲きながら優れた対人能力が武器だ。ともに長期離脱となった安西幸輝、関川郁万の穴埋めとしてフロントが即座に動いて獲得した即戦力であり、2人とも6月15日の広島戦でベンチ入り。小川は後半34分から早速、新天地デビューを飾った。今後、さらに出番は増えるはずだ。

2位に浮上した柏レイソルはさらに積極的に動いた。アンダー代表の常連でボランチとCBに適応可能な23歳の馬場晴也(←北海道コンサドーレ札幌)、万能MFで4年ぶりの帰還となる31歳の瀬川祐輔(←川崎フロンターレ)、さらに豊富な運動量と鋭いドリブルが武器の22歳の小見洋太(←アルビレックス新潟)と実力者3人を獲得。チームの心臓で日本代表にも選ばれたMF熊坂光希が長期離脱し、貴重な控えFWだった木下康介が広島に移籍したが、戦力値はアップ。6月15日の東京V戦では3-0快勝を収めた中で3人全員が後半途中出場で新天地デビュー。リーグ優勝への本気度が見えた6月補強となった。

3位の京都サンガF.C.には、中盤のボールハンターのMFレオ・ゴメス(←ジュビロ磐田)を獲得し、パリ五輪代表だった23歳の山田楓喜(←CDナシオナル)を1年半ぶりに復帰させた。レオ・ゴメスは今季は出番を減らしていたが、昨季はJ1でリーグ戦29試合に出場した経験を持っており、夏場の強度ダウンを防ぐことができるはず。そして山田は左足での“伝家の宝刀”直接FKがある。ここまで首位・鹿島と並ぶリーグ3位タイのチーム得点数を誇るサンガ攻撃陣に、新たな得点パターンが生まれるはずだ。

クラブW杯に出場する4位の浦和レッズは、ゴールゲッターの24歳FW小森飛絢(←シントトロイデン)を手に入れた。ベルギーでは在籍半年で公式戦5試合無得点と挫折を味わったが、昨季J2千葉で38試合で23ゴールを挙げて得点王に輝いた実力は間違いなく本物だ。現チームは、スピード抜群のドリブラーである松尾佑介の1トップ起用がハマり、控えにチアゴ・サンタナ、高橋利樹がいる(長倉幹樹はFC東京にレンタル移籍)が、小森が千葉時代のプレーをしっかりと表現できれば、新たなオプションという枠を超えた大きな武器になる。

さらに5位以下のチームを見ると、サンフレッチェ広島は身長190cmの長身FW木下康介(←柏レイソル)、ヴィッセル神戸は経験豊富な左サイドバックの永戸勝也(←横浜F・マリノス)、セレッソ大阪はボランチを中心に様々なポジションで働けるMF吉野恭平(←大邱FC)とベルギーでのプレー経験もあるマレーシア代表のDFディオン・クールズ(←ブリーラム・ユナイテッドFC)。

清水エスパルスは左利きのDFマテウス・ブルネッティ(←ドゥナイスカー・ストレダ)、アビスパ福岡は昨季のJ2昇格プレーオフの2得点に続いて今季もJ2で5得点を挙げていたFW碓井聖生(←カターレ富山)、ガンバ大阪には中盤のダイナモとして攻守に高い強度を誇るMF安部柊斗(←RWDモレンベーク)、名古屋グランパスは187cmのブラジル人FWレレ(←フルミネンセ)が加わった。

この中で神戸の永戸とG大阪の安部が早速、先週末のリーグ戦でスタメンで新天地デビュー。永戸はCKのキッカーも務めながら精度の高い左足キックで勝利に貢献。安部は鋭いサイドチェンジに加えて最前線まで飛び出してのチャンスに絡み、0-0ドローも可能性を見せた。

積極的だったのが、今季がクラブ初のJ1舞台を戦っている現在14位のファジアーノ岡山だ。GK川浪吾郎(←サンフレッチェ広島)、WBの本山遥(←ヴィッセル神戸)と松本昌也(←ジュビロ磐田)、さらにFWウェリック・ポポ(←レッドブル・ブラガンティーノ)を獲得。10節を終えた時点で5勝2分け3敗の好スタートも11節以降の10試合を1勝4分け5敗と失速してきたチームの起爆剤になるはず。6月15日の福岡戦では新加入の4人全員がベンチ入りし、本山、松本、ポポが後半からデビューを飾った。試合は0-1で敗れたが、ここから夏場の戦いに突入する中、貴重な戦力となる。古巣復帰の本山の即フィットは間違いなし。そして190cmの大型CFポポには楽しみタップリで、ルカオとの理不尽コンビは他クラブの脅威になる。

さらに現在17位と苦しむFC東京も、浮上へ向けて元韓国代表GKキム・スンギュ(←アルシャバブ)、元日本代表サイドバックの室屋成(←ハノーファー)、昨季のルヴァン杯得点王のFW長倉幹樹(←浦和レッズ)、そして浦和時代に「神」と崇められた元デンマーク代表DFアレクサンダー・ショルツ(←アル・ワクラSC)をチームに加えた。6月14日のC大阪戦では、古巣復帰となった室屋がスタメン出場し、流血しながらも持ち味である豊富な運動量で攻守に貢献。試合は2-2の引き分けとなったが、収穫は大いにあり。今後の巻き返しへ向けて期待感を持つことができたはずだ。

鹿島、柏、京都、浦和の上位陣が素早い動きを見せ、神戸、G大阪もピンポイント補強で戦力補完。岡山、FC東京は間違いなく戦力アップに成功した一方、流出した戦力も考えると降格圏にいる新潟、横浜FMの2クラブが心配だ。また、Jクラブ間の移籍に加えて、北野颯太(C大阪→ザルツブルク)が欧州へ旅立ち、福田翔生(湘南ベルマーレ)、稲村隼翔(アルビレックス新潟)に海外移籍報道がある。

これで一旦、補強はひと休みするが、7月7日から第2登録期間として再び移籍ウインドーが開く。6月に動かなかったクラブが、7月以降にどのような動きを見せるのか。酷暑によるダメージも予想される中、夏の戦力補強がチームの調子維持、巻き返しに向けて有効かつ不可欠な手段であることは近年のJリーグのシーズンを見ても明らか。上位チームは優勝するために。そして下位チームは残留へ向けて、夏の新戦力たちがキーマンとなる。

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