【天皇杯】浦和 1-2 G大阪|遠藤、今野、明神のDNAを受け継ぐ若きボランチ。新時代を切り拓いた19歳の井手口が大舞台で示した可能性 SOCCER DIGEST Web 1月1日(金)19時36分配信

タイトルが懸かる試合でも、途中出場から堂々とプレー。

 12分、いきなりG大阪をアクシデントが襲った。右SBの米倉が負傷で交代を余儀なくされる。この事態に長谷川監督はボランチの今野を右SBにコンバート。空いたボランチには、19歳の井手口が投入された。

「(監督からは)落ち着いて行け、とだけ言われました。全然準備はできていなかったですけど、落ち着いて入れたので良かった」

前半はパスミスなどもあり、試合に入り切れていない印象だったが、後半は出色のパフォーマンスを披露。2-1とリードした後は浦和が攻撃の強度を高め、 押し込まれる時間帯が長くなったが、劣勢になればなるほどその存在感は際立っていった。鋭い出足から持ち前のボール奪取力を発揮し、効率良くセカンドボー ルを回収。自ら持ち上がって正確なスルーパスも通してみせる。

「押し込まれているほうが、ボール(奪取)は狙いやすかった」と本人が語るように、慌てることなく浦和の攻撃に対応し、ピンチを未然に防ぎ、ミドルゾーンの攻防で優位に立ちながら、チームに落ち着きを与えていた。

もちろん、自身の出来に満足しているわけではない。「まだまだボールに行けるシーンがあったと思う。そこはまだツメが甘い」と反省を口にするが、タイトル が懸かる試合でも堂々とプレーできていたのは事実だ。ポテンシャルをいかんなく発揮し、チームを勝利へと導く。取材エリアでは、時折笑顔を見せながら、質 問者の目を見てしっかりと言葉を紡ぐ若者は、小さくない手応えと自信を掴めたはずだ。

「(2015シーズンは)すべての大会で、目の前で悔しい想いをしてきた。最後にこうやって優勝できて、すごく嬉しい。自分の成長にもつながると思います」

「世界で通用する選手になれるように頑張ってほしい」(明神)

“成長”という意味では、井手口が置かれている環境はこれ以上ないものだと言ってもいい。同じボランチには、遠藤、今野、そしてすでに退団が決まっている明神と、ワールドカップ経験者がずらりと顔を揃える。

「ミョウさん、コンさん、ヤットさんは、3人とも違う特長を持っている先輩たち。みんなからちょっとずつ良さを学んでいこうと練習から取り組んでいます」

この試合を最後に、長きに渡り、G大阪を支えた明神がクラブを去る。そんな重要なゲームで途中出場からピッチに立ち、右SBでプレーした今野に代わり、遠藤と2ボランチでコンビを組み、指揮官の期待に応える活躍を見せた。

それだけに、今回のタイトル獲得はクラブにとっても、井手口本人にとっても、エポックメイキングな出来事だったのではないだろうか。

功労者は、将来有望な後進へこんな言葉を送る。

「あまり周りを気にせず、陽介っぽく堂々とやってくれれば。世界で通用する選手になれるように頑張ってほしい」(明神)

“バトン”を受け取った井手口は、休む間もなく、U-23代表の一員としてリオデジャネイロ五輪出場を目指すアジア最終予選に挑む。

「(年齢的に)一番下ですけど、引っ張っていけるような存在感とともに、チームに貢献したい。どのチームに対しても、100パーセントの力を出して勝ちに行きたい」

新たな一年の始まりを幸先良くスタートさせた井手口が、今度は日の丸を背負い、熾烈な戦いにその身を投じる。

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