“超野心的なところ”を見据えるヴェルディの好循環。指揮官も新戦力の吸収力と意欲に期待大「成長で競争力を上げなきゃいけない」

一瞬たりとも息の抜けない張り詰めた雰囲気が漂う

2024年は16年ぶりのJ1復帰で6位に躍進し、見る者を驚かせた東京ヴェルディ。アカデミー育ちや大卒、他クラブからレンタルで赴いた若手を鍛え上げた城福浩監督の手腕が大いに光った。

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今オフには木村勇大や谷口栄斗ら主力級にオファーが殺到したが、大半が残留を決断した。「ヴェルディにいた方が成長できる」という確信があったからだろう。

そんな評判を聞きつけ、「自分もその環境でチャレンジしたい」と熱望する者が何人も出てきた。2025年の新戦力として加わった福田湧矢、平川怜らはその筆頭だろう。

まず福田は7年間在籍したガンバ大阪から思い切って外に出た。 「ガンバでは2、3年目は怪我もなく、ずっと試合に出ていたんですけど、3、4年目からは怪我が多くなり、合計2年半くらいはサッカーができなかった。昨年の夏には復帰しましたけど、環境を変えてやってみたいなと思ってここに来ました」と神妙な面持ちで言う。

彼の場合、ヴェルディに恩師の1人である森下仁志コーチがいるのが大きかった。森下コーチは中村敬斗(S・ランス)を大きく伸ばし、昨季は木村に寄り添ってブレイクに結びつけている。

「仁志さんとは一緒にやっていたんで、練習もイメージ通り。強度や球際を求められるし、そのなかで仕掛けやフィニッシュで違いを見せないといけない。今はすごく楽しいですね」と本人も充実感を口にする。

実際、沖縄キャンプでの練習試合でも左ウイングバックのレギュラー格と位置付けられていて、今季は大きな存在感を示しそうだ。

一方の平川は2年連続の移籍。昨季のジュビロ磐田では開幕当初は左MFで起用されていたが、徐々に出番が減少。チームも最終的にJ2降格を強いられたこともあり、「もう1回環境を変えてプレーしたい」と古巣FC東京のライバルチームの一員になったのだ。

「僕がこのクラブに来ること自体、簡単ではなかった。本当の意味で勝負だと思っていますし、自分にプレッシャーをかけています」と並々ならぬ闘志をむき出しにする。

ポジションはボランチ、もしくは1個前のシャドーで勝負していく覚悟だ。

「いずれにしても中央でプレーしたいと思っています。ボランチには森田(晃樹)選手や齋藤(功佑)選手がいて、昨年も素晴らしい結果を残しているので、僕が簡単に入っていける状況ではないのも分かっています。でもここで中心になれれば、自分自身も一気に変わってくると思う。攻守にアグレッシブなところは熊本時代に少し近い感覚もある。自分が積み上げたものを出せるという手応えもあります」と平川は非常にポジティブだ。

2024年パリ五輪の日本代表だった鈴木海音もそうだが、過去の実績や経験値に関係なく、城福監督は選手たちに厳しさや緊張感、ハードワークを植え付けている。沖縄での1月26日の午後練習を見ていても、最初から最後まで一瞬たりとも息の抜けない張り詰めた雰囲気が漂っていた。

「城福さんは選手個人に対する熱量が凄まじい」

9対9のビルドアップ、4対4+フリーマンのゲーム形式では、指揮官や森下コーチらから凄まじい迫力の指示が飛び、選手たちもお互いに声を掛け合いながら細部にこだわってプレーしていた。一人ひとりの上を目ざす意識の高さは、やはり特筆すべき部分と言っていい。

平川も「練習中は常に動いていますし、頭も集中した状態でやらないといけない。その積み重ねが成長につながると思うんで、すごくやりがいを感じています」と力を込める。

木村も少し前に「城福さんは選手個人、個人に対する熱量が凄まじい」と話していたが、それを受け止めてピッチに立つ選手たちがグングン伸びていくのは、ある意味、当然のことなのかもしれない。

「僕は練習場が日本一じゃなかったら、他チームと対等にできないと思っているので。僕らは補強で競争力を上げるんじゃなくて、成長で競争力を上げなきゃいけない。それは絶対条件と思っています」と、指揮官もトレーニングレベルの高さに胸を張る。

そういうヴェルディに自ら進んでやってきた新戦力たちの姿勢、取り組み方も前向きに捉えている。

「彼らは本当にここで成長したいと思って来てくれている。吸収力の速さを見ると、意欲を持って来てくれているんだと感じるし、他の選手の良い刺激にもなっていますね。

今季の我々はカップ戦を含めて“超野心的なところ”に行きたい。メンバーが変わったらサッカーも変わるみたいなチームだと、その領域には辿り着けない。チーム全体が良い競争を続けることがそのポイントなんです」

城福監督はこう語気を強めていた。昨季のJ1・6位よりさらに上の順位を目ざしていくためにも、福田や平川、鈴木らのブレイクは欠かせない。

3人とも前所属先では持てる能力を完全に出し切れたとは言い切れないところがあった。だからこそ、昨季の木村や山見大登、谷口らのような活躍を新天地で見せつけるべきなのだ。

「僕は5ゴールくらい取りたい」と福田が言えば、平川も「ゴール・アシストともに5・5くらい行きたい」と目をギラつかせる。ウイングバックやボランチを主戦場としている選手がそのくらいの数字を残してくれれば、ヴェルディはアジア・チャンピオンズリーグ圏内、もしくはカップ戦のタイトルに手が届くかもしれない。

昇格2年目は苦しむチームが多いが、そのジンクスも打ち破るべく、彼らには凄まじい野心を前面に押し出し続けてほしいものである。

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