J1リーグ、オフの補強ここまでの「勝ち組&負け組」は? 大型補強も“疑問”残るチームも

Jリーグの各クラブが続々と2025年の新体制をスタートさせている。そこで注目されるのが、各クラブの戦力補強である。12月から年末年始にかけて連日にわたって選手の入団&退団が発表されてきた中、大きな期待が持てるクラブと心配になるクラブがある。

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現時点(1月14日時点)で最も戦力アップに成功したと言えるのは、サンフレッチェ広島だろう。昨季リーグ戦2位のチームからMF青山敏弘が引退し、飛躍を遂げたMF松本泰志と元ポルトガル代表FWゴンサロ・パシエンシアらが退団したが、昨季19得点のFWジャーメイン良(←ジュビロ磐田)、将来のA代表入りも期待されるMF田中聡(←湘南ベルマーレ)、強烈な左足が魅力のMF菅大輝(←北海道コンサドーレ札幌)、高い技術を持つMF井上潮音(←横浜FC)と他クラブの主力であり、明確な武器を持つタレントたちを次々と獲得した。

関東大学リーグで史上初となる2年連続得点王&アシスト王のFW中村草太(←明治大)も即戦力であり、チームの選手層は一気にアップした。ミヒャエル・スキッベ体制4年目ですでに戦術ベースは出来上がっており、ユース出身のMF中島洋太朗を筆頭に若手も成長している。新スタジアムの完成でクラブの「格」もアップした中、リーグ戦に国内カップ戦、そしてアジアの舞台を戦い抜く強力なスカッドが出来上がったと言える。

J1昇格初年度で3位となったFC町田ゼルビアも、豊富な資金力を生かして昨冬、昨夏に続いて今冬も戦力補強に邁進した。一番の目玉は日本代表歴もあるFW西村拓真(←横浜F・マリノス)だ。獲得成功は驚きと言えるが、豊富な運動量で前線からの強度の高い守備でチームを活性化させるプレースタイルは“黒田サッカー”に間違いなくフィットする。

さらに争奪戦となっていたDF岡村大八(←北海道コンサドーレ札幌)に青森山田高校出身のDF菊池流帆(←ヴィッセル神戸)と屈強で高レベルのCBを確保し、SBには昨季終盤にレギュラーとして働いたDF中村帆高(←FC東京)、ボランチには攻守の要として活躍を続けていたMF前寛之(←アビスパ福岡)を加えた。レンタルの立場だったGK谷晃生、FWオ・セフンを完全移籍への切り替えにも成功し、主力の流出がほぼないという点でもストーブリーグで勝ち組であることは間違いない。昨季の順位で満足するつもりはなく、本気でタイトルを獲りに行くという気概が見える補強だ。

昨季13位からの巻き返しが求められる浦和レッズも大型補強を敢行した。目玉は極上のテクニックと献身性を併せ持つMFマテウス・サヴィオ(←柏レイソル)だ。実力は折り紙付きで誰もが知るところ。シュート、パス、ドリブルの全てが一級品で、現在27歳という脂の乗った年齢も魅力。様々なポジションに適応可能であり、活躍は間違いない。

その他にも豊富な運動量でチームの潤滑油になれるMF松本泰志(←サンフレッチェ広島)、日本人屈指のドリブラーであるMF金子拓郎(←コルトレイク)、昨季ルヴァン杯得点王のFW長倉幹樹(←アルビレックス新潟)らを獲得し、左右のSBで有能なDF荻原拓也(←ディナモ・ザグレブ)に加えてFW高橋利樹(←横浜FC)、MF柴戸海(←FC町田ゼルビア)、早川隼平(←ファジアーノ岡山)をレンタル復帰させた。ただ、2列目の人材の“ダブつき”が気になり、課題のCBの補強が現時点で新人の根本健太(←流通経済大)のみという点は不安。チーム編成のバランスは現状、決して良いとは言えないだろう。

その意味では、鹿島アントラーズの方が“効果的”だろう。鬼木達新監督を迎えた中、昨季リーグ2位の21得点をマークしたFWレオ・セアラ(←セレッソ大阪)に、左右のSBでプレー可能な日本代表歴のある小池龍太(横浜F・マリノス)、さらに荒木遼太郎(←FC東京)、松村優太(←東京ヴェルディ)をレンタル復帰させたからだ。

また、FC東京も圧巻の破壊力を持つFWマルセロ・ヒアン(←サガン鳥栖)を手に入れ、経験豊富なMF橋本拳人(←エイバル)を復帰させたことで楽しみの方が大きい。J1初昇格となったファジアーノ岡山も、元日本代表のMF江坂任(←蔚山HD)、伸び盛りのFWブラウンノア賢信(←徳島ヴォルティス)に将来が楽しみなMF佐藤龍之介(←FC東京)ら精力的に補強しており、期待が持てる陣容となっている。

さらに触れておくべきは柏レイソルだ。マテウス・サヴィオの退団は確かに痛いが、リカルド・ロドリゲス新監督の下、GK小島亨介(←アルビレックス新潟)、DF杉岡大暉(←湘南ベルマーレ)、DF原田亘(←サガン鳥栖)、MF仲間隼斗(←鹿島アントラーズ)、MF久保藤次郎(←名古屋グランパス)、MF渡井理己(←徳島ヴォルティス)、MF小泉佳穂(←浦和レッズ)、MF原川力(←FC東京)と経験のある実力者たちを次々と獲得した。早期に戦力が噛み合えば上位進出も大いにあり得る陣容になっている。

一方、不安かつ不満のストーブリーグを過ごしているクラブもある。まずは横浜F・マリノスだ。新監督に元イングランド代表ヘッドコーチのスティーブ・ホランド氏を迎え、退団の噂もあった外国人勢を残留させたが、先述した西村拓真、小池龍太に加え、エドゥアルド、畠中槙之輔、上島拓巳のDF陣に、ベテランの水沼宏太ら多くの選手が今冬に退団した。

代わりに万能アタッカーのFW遠野大弥(←川崎フロンターレ)、左SBの鈴木冬一(←京都サンガ)、GK朴一圭(サガン鳥栖)を獲得したが、やや地味な印象は拭えない。人材不足となったCBの救世主として獲得したコロンビア人の27歳DFジェイソン・キニョーネスが期待通りの働きを見せることができなければ、一気に窮地に陥る。元々、選手層は厚く、ユース昇格組の成長も楽しみではあるが、Jリーグ王者となったポステコグルー、マスカット体制時と比べると戦力ダウンした感は否めない。

年明けから予想外の事態に見舞われ、期待と不安が入り混じっているのが、ガンバ大阪だ。昨季4位フィニッシュでポヤトス体制2年目だったチームの成長を多くのサポーターが感じ、今季のタイトル獲得への期待も高まっていた中、求めていた左利きのCB佐々木翔悟(←ジェフ千葉)、サイドアタッカーの奥抜侃志(←ニュルンベルク)を確保し、超高校級MF名和田我空(←神村学園高)の獲得にも成功。さらにレンタル先で成長したFW南野遥海(←栃木SC)、FW唐山翔自(←ロアッソ熊本)を呼び戻した。

だが、昨季10得点を挙げて新エースとしてさらなる飛躍が期待されていたFW坂本一彩、中盤で多くの役割をこなしていたMFダワンが相次いで海外移籍。怪我から復帰して昨季終盤戦に戦力となっていた福田湧矢も退団した。いずれも代わりの人材がチーム内にいるとはいえ、特に昨季の中心選手だった坂本とダワンの流出は大きな痛手であることは間違いない。優勝を狙うつもりならば、今後の追加補強に「期待」、と言うよりも「必至」だと言える。

その他では、エースFWレオ・セアラを奪われたセレッソ大阪がどうなるか。1月13日にチアゴ・アンドラーデラファエル・ハットンの2人のブラジル人アタッカーの獲得を発表したが、それ以外ではDF畠中槙之輔(←横浜F・マリノス)、DF中村拓海(←横浜FC)にレンタル復帰のFW中島元彦(←ベガルタ仙台)と、やや物足りない印象だ。

さらに昨季2冠のヴィッセル神戸は、一時は退団濃厚とまで言われたFW武藤嘉紀の残留が大きな補強と言える面はあるが、新人2人を除いて新加入はDF小池裕太(←横浜F・マリノス)、DFカエターノ(←コリンチャンス)、DF本山遥(←ファジアーノ岡山)、MF橋本陸斗(←東京ヴェルディ)という面々で、こちらも王者の補強としては物足りない。一方の退団者には、菊池流帆に加えて、山口蛍の名前が目立つ。もちろん戦力値としては高いものが維持されているが、今冬の補強という意味では大いに不満が残る。

ここに挙げたクラブ以外も、今冬は多くの選手が新天地へと移籍した。だが、まだここで終わりではないだろう。特に海外リーグに所属している外国人選手の獲得にはまだ時間がある。新チームの練習はすでにスタートしているが、今後の移籍動向からもしばらくは目が離せない。(文・三和直樹)

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