「成熟」と「補強」で強さを取り戻したガンバ大阪 「青黒復活」の原動力は守備にあり

ガンバ大阪はここまで35試合を消化し、15勝12分け8敗の勝点57で5位につけている。勝点34(18チーム制の年間34試合)で16位に沈んだ昨季を考えれば、ダニエル・ポヤトス監督を招聘して2年目の今季は大きく飛躍したと言って良い。その理由はどこにあるのだろうか?

「行く」と「引く」の使い分けと意識の統一

最大の理由は「守備」にある。昨季の成績と比較すると、得点(38点→41点)はほぼ変わっていない中で、失点(61点→31点)が約半分に減少。被シュート数(457本→474本)、被ゴール期待値(47.2→46.7)にも大きな増減がなく、チャンスを作られた数はこれまでと大差ない。しかし、大きく変わったのは「水際での守備」。昨季はディフェンシブサードに進入を許してから3プレー以内での失点、ペナルティエリア内に進入を許してから1プレー以内での失点が多かった。被進入回数はどちらもリーグ平均に近い回数でありながら相手のシンプルな攻撃で多くのゴールを奪われており、失点率も高い傾向が見られたが、今季は劇的な改善を見せている。

失点が減った要因の1つとして、ローブロックで守る回数を増やしたことがつながっているだろう。ローブロックを組む回数が昨季は1試合平均8.1回でリーグ16位だったのに対し、今季は1試合平均12.1回でリーグ5位に上がっている。低い位置で守備網を作ることで、危険な位置でのディフェンスに安定感をもたらした。ここで誤解したくないのは、「単純に引いて守ったから失点が減った」わけではないということだ。ローブロックで守る回数は増えた一方、その際の最終ラインの高さは昨季が平均22.6ⅿ(自陣ゴールラインからの距離)でリーグで最も低かったが、今季は5位となる平均25.0ⅿまで上昇。自陣でコンパクトな守備陣形を作り、危険なスペースを全員で埋める組織的な守備が完成されている。

また、攻撃から守備への切り替え時にも特徴が出ており、アタッキングサードでのボールロストから5秒未満での同エリアでのボール奪取率はリーグトップとなる9.9%の数字を残している。ボールを失った後に奪いに行くときはチーム全体で圧力を掛け、奪えなかった場合はしっかり守備ブロックを形成する、この使い分けと意識の統一が数字に表れているのではないだろうか。

チームスタイルと補強の合致

直近のリーグ戦である第35節の名古屋グランパス戦のスタメンは、半数以上が今季からの加入選手となっている。今季、チームには期限付き移籍からの復帰や夏の途中加入を含め、15名もの選手が新たに加わった。攻撃陣、守備陣ともにチームスタイルに合致したプレーヤーが名を連ねたことも、上位進出の原動力の1つとして挙げられるだろう。

昨季、柏レイソルでプレーしていた山田康太は、先発時90分平均のプレス数が58.0回でリーグ1位を記録していた。青黒のユニフォームを身にまとった今季も山田はリーグ7位となる44.9回をたたき出しており、先鋒としての役割を十分に果たしている。

それ以上に忘れてはならないのは坂本一彩だ。武者修行から帰ってきたアカデミー育ちの21歳は、第2節のアルビレックス新潟戦を除くすべての試合に出場している。同プレス数は48.4回でチームトップ、リーグでも3位にランクイン。チームとしてのスタイルを遂行しつつ、キャリアハイの7ゴールを挙げるなど、なくてはならないアタッカーの1人に成長した。

中盤では鈴木徳真の加入が大きな安定をもたらした。今季、同じ大阪のライバルチームからやってきた背番号16は、過去に共闘した指揮官をよく知る貴重なプレーヤーとしてレギュラーの座を獲得。ボール奪取数220回とシュート関与パス数78本(3プレー以内にシュートに至ったオープンプレーでのパス)はボランチ出場時の選手の中でリーグ3位の数字を残しており、攻守で欠かせない選手となっている。

失点数を大きく減らした守備陣に加わったのは中谷進之介と一森純。前者はディフェンスリーダーとして今季ここまで全試合フル出場を果たしている。データ面でもペナルティエリア内での守備プレー数でリーグ2位となる170回を記録しており、精神面でもプレー面でもチームを引っ張っている。昨季、横浜F・マリノスでリーグ1位のセーブ率を記録し、満を持して復帰した一森も、中谷と同じくここまで全試合フル出場中。今季もセーブ率はリーグ1位となる77.0%を誇り、セーブ数もリーグ3位の104回とJ屈指の守護神として青黒を最後尾から支えている。

攻撃面では、ウェルトンが相手陣ペナルティエリア内へのドリブル成功数が26回でリーグ1位タイ、20ⅿ以上のボールキープであるキャリー数は50回でリーグ3位タイの数字を残し、加入初年度で見事にJリーグに適応、攻撃面で絶大な存在感を放っている。

ガンバの攻撃の象徴と言えば「宇佐美貴史」だが、Jリーグ復帰後どちらも最多となる11ゴール8アシストを記録している中で、昨季よりプレス数(先発時90平均:33.5回→37.7回)や相手保持時のスプリント数(同3.8回→5.4回)を増やしており、チームの勝利のためにハードワークを惜しまない献身的なプレーも光っている。

リーグ戦は残すところあと3試合。3位のFC町田ゼルビアとは勝点3差で、アジアへの切符をつかむことも十分可能だ。さらに、来たる11月23日には天皇杯の決勝が控えている。就任2年目でソリッドなチームを作り上げたポヤトス監督の下、9つの星を胸につける名門は久々のタイトルをつかめるのか、注目したい。

https://sports.yahoo.co.jp/column/writer/609

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