相手も恐れた大胆采配 川崎名将が4枚同時交代を決断、ベテランの「もっと行くぞ!」の声
鬼木監督は後半23分に家長、小林、山内日、遠野の4人をピッチへ
川崎フロンターレは10月18日にJ1リーグ第34節でガンバ大阪と対戦し、1-1で引き分けた。16日には鬼木達監督が今季限りでクラブを退任すると発表。それまで無冠だったクラブを率いて、8シーズンで7つのタイトルを獲得する偉業を成し遂げた指揮官の残り試合で、「1つでも多く勝ちを鬼さんのために」(FW遠野大弥)と勝ち点3を目指したが、この試合は引き分けに終わった。
【写真】川崎サポーターが鬼木監督に向けて掲げた”感謝の横断幕”
開始早々の前半7分、川崎は最終ラインの裏を取られると、サイドからの折り返しをMFウェルトンに決められて1点のビハインドとなった。攻めあぐねていた川崎は後半23分に鬼木監督が動いた。MF瀬川祐輔、FWマルシーニョ、FWエリソン、FW山田新をベンチに下げ、MF家長昭博、FW小林悠、MF山内日向汰、FW遠野大弥の4人を一気に投入した。
コロナ禍で交代人数が5人に増えるまでは、交代人数は3人だった。そのため、一度に4人もの選手を入れ替えることは、珍しいことでもある。ピッチに入る選手が試合に入るのに苦戦すれば、試合が難しくなるリスクもあった。だが、川崎のキャプテンを務めるMF脇坂泰斗は、ピッチ際に立つ選手たちを見てその意図をこう考えたという。
「今日に関して言うと、FWのところの段差が必要だったので。新潟戦だったり、町田戦だったりでは2トップが相手のラインを引き下げて、そこのスペースを収める攻撃がありました。でも、今日に関して言うと、少し相手のセンターバックの対人能力が高かったり、もう少し相手の縦のラインがコンパクトだったので、ボランチがすぐカバーに行けちゃう問題がありました。そこでFWに段差をつけてもらい、スペースを共有することが必要でした。そういう意味で、気を遣える(小林)悠さんと家長昭博さん、(遠野)大弥とかもサイドを狙えるので。そういったところがマッチしたのかなって思います」
そして、「僕自身もこうやって攻めた方がいいと思っていましたし、より単調な攻撃になるのは簡単なのですが、そこで相手の守備のリズムを壊したかったので、ああいう選手たちが入ったのは良かったと思います」と、ピッチ外にいる指揮官の講じた対策がピッチ内でも必要だと感じていたと語った。
ピッチに送られて、同点ゴールをアシストした遠野大弥は「相手も結構、オープンになってきていたので、流れは前半から見ていて『こうしたらこう』ということが分かっていたので、すぐに試合に入ることができました。(同点ゴールの後)昭さん(家長昭博)は『もっと行くぞ!』と言っていました。自分たちの空気にして、あの時間帯からチャンスが増えていたので、決めきることが課題ですね」と、追い付けたものの、勝ちきれなかったことを悔しがった。
G大阪の守備の要であるDF中谷進之介も、この選手交代で相手の攻撃が大きく変わることを予測していた。「遠野選手が入ってきたので、『自由に動く選手が来たな』と感じました。あと、家長選手と小林悠選手は試合を決められる2人が来たので、本当に注意しないといけなかった」と言い、「最初の10分とかは全然、良かったかなと思う。ですけど、結局やっぱ2人の関係から決められてしまっているんで交代が当たっちゃったかなっていう感じですね」と、鬼木監督の4枚同時交代が試合に与えた影響を語った。
鬼木監督自身は、この交代の投入についてはどの時間帯にするかを迷っていたと明かした。「後半のもう少し早い時間で4人を投入してもいいかなと思っていました。ただ、ゲームが途切れ途切れみたいになっていたので、前線の選手もまだパワーが十分あり余っていたと思います。そういう意味であれが早い時間なのか遅い時間なのか、それぞれの意見があると思いますけれども、自分としては最後押し込み始めて質のところになってくると思っていたので。そういう意味で4人を変えました」と言い、この交代を行うなかで見えたこともあると続けた。
「昨日のトレーニングでもね、スタートじゃない組が非常に良かったので、本当にもっと早く投入にしてもいいぐらいだったんです。結局、練習でいい選手たちがやっぱり結果を出すんだなとやっぱり思いました」
ACLを戦っている川崎は、途中で中断した浦和戦を含め、12月8日まで公式戦9試合を残している。クラブに初タイトルを含め、7つのタイトルをもたらした指揮官との最後の試合で、川崎はどんな戦いを見せていくだろうか。