【選手権代表校】大津(熊本)|ハイレベルな「人材の宝庫」。G大阪内定コンビを軸に狙うは初優勝!SOCCER DIGEST Web 12月24日(木)19時2分配信

攻守に隙のない陣容、個性的なタレントが揃う。

 錚々たるタレントを揃える、九州の実力派集団だ。

今年のチームは、ともに来季のG大阪加入が内定するFWの一美和成とCBの野田裕喜というU-18日本代表コンビに大きな注目が集まるが、大津が“タレント集団”と形容される所以は、このふたりがいるからだけではない。

『多士済々』
まさに今年の大津には、この言葉がぴったりだ。攻撃面で言えば、1トップの一美の後方に構えるトップ下の吉武理央はアジリティーとイマジネーションに優れた司令塔。瞬時の判断で相手の力を無にするスルーパスや、ドリブルでチャンスを演出する。

両ワイドの人材も強烈だ。左の原岡翼はドリブルのスピードがあり、巧みなコース取りで一気にカットインすると、速さと正確性を備えたパスやシュートを繰り 出す。とりわけ脅威の決定力を誇るフィニッシュワークは注目だ。プリンスリーグ九州では、2位の一美を3得点上回る17点で得点王を獲得したのだ。そして右サイドの2年生・杉山直宏は滑らかなステップワークと独特のリズムで相手を交わしていく。この両翼が強烈な個性を放ち、破壊力のある攻撃を支えている。

エースの一美ですら安泰ではない。12月中旬に行なわれた高円宮杯プレミアリーグ昇格決定戦で、一美は怪我もありベンチスタートとなった。代役に抜擢された2年生FWの藤山雄生は、180センチ台の高さと身体の強さを活かしたポストプレーで躍動。彼の台頭はチームにさらなる厚みをもたらした。

守備に目を向けると、すでにJ2の熊本でプロのピッチにも立っている野田を中心に、実力者たちが揃う。野田とCBコンビを組む眞鍋旭輝はヘッドに強く、 冷静さも兼備。正GKの前田勇矢もGK転向から間もないが、安定したゴールキーピングを見せる。坂田直樹と大塚椋介の両サイドバックも高い技術を有し、粘り強い守備が持ち味だ。

そして、中盤で不動の存在となっているのが、攻守をつなぐアンカーの河原創で、チームの浮沈の鍵を握っていると言っていい。豊富な運動量と献身性、多彩なキックを武器に、攻守両輪の中枢となっている。特に守備面では走力のあるシャドーの河田健太郎と連係を密にし、カウンターへのリスクマネジメントにも抜かりはない。

今年の大津は、間違いなく攻守両面でハイレベルな人材が揃ったチームと言える。

プレミア参入戦での激戦でコンディションに不安も、新星の台頭は十分にあり得る。

 まさに充実の陣容が揃った今年の大津だが、12月中旬に行なわれたプレミアリーグ昇格決定戦の静岡学園戦は、それを証明する戦いだった。選手権予選で敗 れたとはいえ、今年の静岡学園もハイクオリティなサッカーを展開する注目校に挙げられ、この一戦は高校サッカー史に残っても良いような激戦となった。

静岡学園の個人技と組織を上手く融合させたサッカーに対し、大津はピンチを迎えながらも要所で身体を張り、タイミングのいいミドルパス、ロングパスを起点に反撃に転じ、何度も決定機を作り出した。

お互いが持ち味を出し合い、激しい攻防となった一戦は、2-2で迎えた延長後半アディショナルタイムに、左CKからファーサイドに飛び込んだ原岡が押し込んで、大津が劇的勝利。来季のプレミアリーグ昇格を決めた。

ただ、この熱戦の代償もあった。怪我を抱えた選手が増え、選手権にベストコンディションで臨めるか懸念される選手も新たに出てきている。だが、大津の強さ は『脇役が主役になる』こと。原岡、前田、藤山らがその代表例だ。野田、一美、そして河原、吉武は1年時から注目の存在で、今年は彼ら4人が軸になるのは 2年前から分かっていた。そして、そうした主軸に追いつけ追い越せと切磋琢磨してきた選手たちが成長を遂げ、質の高い陣容が整った。

独創的かつ個性的なタレントを平岡監督は愛情込めて『変態』と称する。平岡監督は自らの育成方針として「多くの『変態』を育てたい」と語る。ハイレベルな人材が激しい競争をしている大津だからこそ、次々と面白い『変態』が現われるのだろう。

それだけに、コンディション面が懸念される現状ながら、新たなタレントの台頭が十分に予感されるのだ。それが一体、誰なのか? 選手権はそれを楽しむ場になるかもしれない。

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