メッシやハメスに類似…G大阪と鹿島を牽引する2人の「自由人」 名手が持つ共通点とは【コラム】
変幻自在のプレーで輝きを放つG大阪の宇佐美貴史と鹿島の鈴木優磨
首位のFC町田ゼルビアを5ポイント差で追うガンバ大阪と鹿島アントラーズには「自由人」がいる。宇佐美貴史と鈴木優磨だ。
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いわゆる「偽9番」なのだが、戦術的な意図よりも個人の技術とアイデアを活かすという狙いをより強く感じる。アルゼンチンのリオネル・メッシ、コロンビアのハメス・ロドリゲスに似ていて、決まった動きをするのではなく、宇佐美と鈴木それぞれの判断で動いているように見える。
宇佐美はチーム最多の8得点。5アシストもウェルトンと並ぶ最多。最も多くのシュートを打ち、ラストパスを供給していて、完全に攻撃の軸になっている。10代の頃から注目されてきたが、32歳の今季が最も素晴らしい宇佐美かもしれない。
柔らかいボールタッチ、するりと抜け出すドリブル、そしてなんと言ってもシュートの正確さが抜群。ボールを渡せば1人で完結できる能力があるので、これまではサイドに配置されることが多かった。センターフォワード(CF)でプレーした時期もあるが、トップに張るというタイプではない。
現在はCFである。ただ、そこに居続けるわけではなく、中盤に下りてくるしサイドに開くこともある。まるでポジションが決まっていないように変幻自在。相手から捕まりにくい位置でボールを受けている。そして宇佐美にボールが入ると、G大阪の攻撃はギアが一段上がり、ゴールへの道が拓かれていく。
パスのタイミング、強弱が絶妙。若い頃から武器だったインサイドに近いところでインパクトするキックはミドルシュートで威力を発揮しているが、力を抜いたパスやクロスボールでも精度の高さが活用されている。
コンタクトと空中戦の強さも兼備する鈴木優磨、宇佐美貴史と良く似た「機能性」
鈴木もチームトップの10ゴール。アシストも名古新太郎に次ぐ4アシスト。ファジーなポジショニングでパスを引き出し、優れたアイデアでチャンスを作り出す。コンタクトの強さと空中戦は宇佐美にはない鈴木の長所だ。
宇佐美と鈴木は似ているようには見えないが、チームの中の機能性はとても良く似ている。共通点はインスピレーション。瞬間的な判断、アイデアが秀逸で、技術の高さと多彩さが前提とはいえ、ほかの選手には思いつかないような意外性のあるプレーをする。
即興の名手。予め決まったプレーをするわけではないので、組織に組み込めるタイプではない。自由にやらせたほうが本人のためにもチームのためにもなる。
宇佐美はあまり守備をしっかりやる印象がなかった。ところが現在は精力的に守備をしていて、戻ってポジションの穴を埋め、スライディングタックルでボールを奪うなど、新たな一面を見せている。負傷から回復してコンディションがいいのだろう。鈴木はもともと守備でも献身的。2人とも守備に関してはメッシよりだいぶ貢献度は高い。
宇佐美、鈴木はアシストに回ることも多く、その時にゴール前で得点を狙えるパートナーが必要だ。鈴木は名古がうってつけのパートナーになっている。宇佐美は坂本一彩、山田康太、ファン・アラーノと一定しないものの、いずれも能力が高く相性も悪くない。
メッシとハメスは世界でも例外的な自由人なのだが、リーグで優勝争いをするチームに2人もいるのは、けっこう珍しい現象かもしれない。
[著者プロフィール]
西部謙司(にしべ・けんじ)/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。95年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、「サッカー日本代表戦術アナライズ」(カンゼン)、「戦術リストランテ」(ソル・メディア)など著書多数。