S・ランス相手に異彩放った町田22歳DF望月ヘンリー海輝「明確な目標ができた」…先輩・中村敬斗も驚く“覚醒”、19歳の相手SBから受けた衝撃
[7.31 国際親善試合 町田 0-2 スタッド・ランス Gスタ]
はるか先を進んできた先輩との、念願のマッチアップが実現した。FC町田ゼルビアの大卒ルーキーDF望月ヘンリー海輝は、スタッド・ランスMF中村敬斗と三菱養和ユースSC時代のチームメート。31日の国際親善試合では望月が右SB、中村が左ウイングで真っ向から対峙し、運命の巡り合わせを楽しんでいた。
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「スタッド・ランスとやるのを知ってからマッチアップしたいなとずっと思っていた。スタメンでマッチアップすることができたので純粋に嬉しかった。僕の印象では高校でもずっと無双していたし、それをどの舞台でもやっている印象がある。当時の姿をイメージしながら彼を止めたいなと思いながらやっていました」(望月)
直接のマッチアップでは、世界で戦う先輩の凄さも痛感。前半18分、ドリブル突破を仕掛けてきた中村の鋭い切り返しに対し、望月はシュートを警戒するあまりに縦突破を許していた。
「高校の時からすごくシュートが上手い印象があって、カットインからのシュートは警戒していた。カットインすると思ったら縦に行かれて、裏の裏を突かれるプレーをされたので難しかったです」(望月)
しかし、ただ抜かれるだけで終わらないのも、ルーキーの望月が今季の町田で重宝されている理由だ。引き離されそうになった場面でも持ち前のスピードで食らいつき、フリーでクロスやシュートを打たれるような形はなし。約70分間のプレータイムで自身のサイドから失点を許すこともなかった。
そんな望月との駆け引きについて試合後、中村に聞くと、何よりも再会への喜びが大きかったようだ。
「楽しかったですね。懐かしい感じで。同じチームで紅白戦でやっていたのを覚えているんですけど、(192cmで)めっちゃデカくなってましたね」(中村)
U-17W杯に出場するなど世代のエリートコースを歩み、高校2年生でガンバ大阪に加入した中村とは対照的に、望月はU-18日本代表候補の招集歴こそあるものの、日の目を浴びてきた立場ではない。だからこそ、国士舘大卒1年目というタイミングでのブレイクには、旧知の関係ならではの感慨があったようだ。
「めっちゃ覚醒したんだなと。養和で右サイドバックをやっていたイメージがあるけど、僕は高2でプロに行ったのでわからないけど、高1からガンガン絡んでいたイメージではなかったので、たぶん高2、高3からですよね」。そう満面の笑みで振り返った中村は「デカかったので、リーグアンでやっているイメージでした」と“世界基準”からの賛辞も送っていた。
■“世界基準”との出会い
実際にスタッド・ランスとの試合全体を振り返れば、望月が与えたインパクトはなかなかのものがあった。
守備ではたしかに中村の突破に後れを取る場面もあったが、守備網を決壊させるようなミスはなく、逆に攻撃面ではチーム内でも出色の存在感を発揮していた。相手のスピーディーな攻撃にも対応できる脚力があるからこそ、恐れずに高い位置への攻撃参加を連発。FWミッチェル・デュークへの鋭いラストパスや、驚異の低弾道でゴールをかすめるミドルシュートなど、相手を脅かすシーンもいくつも作っていた。
そうした前向きな姿勢は試合前、黒田剛監督から求められていたものだったという。「攻撃は高い位置を取ってどんどん相手を脅かして行くこと、積極的に攻撃していくことを求められていた」(望月)。攻撃面に関しては「横パスが多かったけど、そこ(攻撃)は悪くなかったと思っている」とおおむね手応えも感じたようだ。
もっともその一方、プレー全体の自己評価は控えめだった。試合後のフラッシュインタビューでは「海外の選手はフィジカルがすごく高く、個々の技術も高かったので、自分含めて1対1で負けてしまうシーンが多かった。そこの差は感じた試合だった」と課題を指摘。どこかその表情も浮かなかった。
試合後、その点について望月に問うと「攻撃の部分ではまあまあという感じだったけど、やっぱりDFなので」と力強い言葉が返ってきた。
「マークしている選手にやられてしまったら結果的には良くない。自分としてはそっちに目標を置いていたのでそういう自己評価になった」といい、自ら攻守にテーマを設けていたからこそ、そこに満たなかったことに悔いを感じていたようだ。
また世界基準との差という観点では、対戦相手の右SBで出場していたBチーム所属のDFアブドゥール・コネの存在も大きかったという。
191cmの上背と圧倒的なスピード感、そしてボールキープの技術も発揮していたコネは弱冠19歳。望月は自身のサイドで上回った要因を「フィジカル面でこっちのサイドは劣っていなかったのでそこが一番大きかったと思う。逆サイドだと相手の右SBがとんでもなかったので、あそこのフィジカルの差はみんな難しかったのかなと」と振り返りつつ、体躯の近いコネに「完全にバケモンですね(笑)。すごいなと思いながら見ていました」と敬意を示した。
■町田での成長
この日はリーグアンのクラブ相手に大きな存在感を放った望月だが、もともと海外挑戦への意欲を大きく持っていたタイプではなく、それは今も変わらないようだ。
MF平河悠がブリストル・C移籍を決めた後に一度、海外へのモチベーションを聞いたことがあるが、その際は「行ってみたいなとは思うけど、まだ“行ってみたい”くらいの感覚」と冷静にコメント。「J1でもっとプレーの質を上げていく過程でそれが見えてくると思う。J1でプレーの質を上げていく、クロスの部分でもっとレベルアップしていくことが最近の目標」とJ1でのプレーに照準を向けていた。
また欧州サッカーについても、一昨季のインテルで欧州CL準優勝に導いたオランダ代表DFデンゼル・ダンフリースに自らのプレースタイルを重ねることもあるそうだが、「どうやってプレーしているのかなとか、前への推進力を意識しているくらい」。あくまでもプレーのモデルとして「ポジションは違えどサイズ感とかが似ているし、逆サイドからのクロスに入っていく部分も近かったので、前から参考にしている部分はあった」という感覚だったようだ。
それでもJ1リーグで着実に出場経験を積み重ね、「試合経験を積ませてもらう中で、少しずつ自分もいい意味での余裕が生まれてきた。出るという部分はある程度クリアしてきているので、次はブレないこと」という新たなステージに足を踏み入れようとしている中、スタッド・ランス戦の経験は一つのターニングポイントとなるかもしれない。
「試合中はそこまで考えていなかったけど、19歳の相手の右SBの選手を見て、ああいう形でプレーのクオリティーをさらに上げられれば、あそこのレベルに到達できるんだという目標地点を見ることができた。そこを意識していきながらレベルアップできたらなというのは試合後に思いました」(望月)
「個のフィジカル、そこに技術を伴った選手とやれたことで、自分はまだフィジカル頼りでやっているけど、さらに技術を乗せることができたら、あそこに行ける可能性が高まると感じることができた。明確な目標ができたなと思う」(望月)。町田のJ1躍進劇を支えるハイポテンシャルな22歳にとって、クラブ史上初の国際親善試合は、単なる1試合以上の価値があったようだ。