今のクラブに居場所なし…。今夏に移籍しないとマズイ欧州日本人選手6人。現状を打破しなければいけないのは?

新シーズン開幕を控え、欧州各リーグの移籍市場ではクラブ間の取引が活発に行われている最中だ。意中のクラブからラブコールを受けて移籍を実現する選手がいる一方で、現所属クラブで燻り、新天地探しがマストと思われる選手もいる。今回は、今夏の移籍を決断しないと更なるキャリアの停滞を招きそうな6人の日本人選手をピックアップして紹介する。※成績は『transfermarkt』を参照

DF:小林友希(こばやし・ゆうき)

生年月日:2000年7月18日

所属クラブ:セルティック(スコットランド)

23/24リーグ戦成績:0試合0得点0アシスト

小林友希にとって、2023/24シーズンは苦悩の1年だったことが推察できる。

2023年1月にヴィッセル神戸からセルティックへ完全移籍した時には、これほどまでに出場機会が得られない未来は本人も想像できなかっただろう。加入初年度は公式戦7試合の出場にとどまり、2023/24シーズンに至っては1試合もピッチに立つことができなかった。

指揮官交代もセルティックでのキャリアに悪影響を及ぼした。小林をスコットランドに呼び寄せたアンジェ・ポステコグルー前監督は、2023年6月にトッテナムの監督へ就任。入れ替わりでセルティックにやって来たブレンダン・ロジャース監督からは信頼を得られず、小林は完全に“余剰戦力”となってしまった。

今年3月にはイギリスメディア『フットボール・インサイダー』によってHJKヘルシンキ(フィンランド)へローン移籍する可能性が報じられたが、最終的に移籍は破談に。同時期にはスコットランドのタブロイド紙『デイリー・レコード』によってメジャーリーグサッカーのクラブやJリーグの複数クラブが小林の獲得に動いていることが伝えられたが、この移籍も実現しなかった。同紙は、セルティックがオファーを拒否したことを明らかにしている。

戦力外扱いにもかかわらず、移籍を容認されない――。小林には現在の飼い殺し状態を少しでも早く解消し、キャリアを飛躍させてほしいところだ。

MF:中井卓大(なかい・たくひろ)

生年月日:2003年10月24日

所属クラブ:レアル・マドリード・カスティージャ(スペイン)

23/24リーグ戦成績:18試合0得点0アシスト

将来を嘱望された“ピピ”がキャリアの分岐点に立っている。

レアル・マドリード主催のファンデーションキャンプに参加した中井卓大が、同クラブのカンテラ(育成組織)において日本人初の合格を勝ち取ったのは2012年夏のことだった。そこから中井の名前はサッカーファンの間で一気に知れ渡り、幼い頃に泣き虫だったことからついた“ピピ”という愛称で親しまれた。

そんな中井も現在は20歳。Bチームの位置づけにあるレアル・マドリード・カスティージャに所属しているが、順調なキャリアを歩み続けているとはいえない状況にある。

2022/23シーズンはリーグ戦出場が2試合のみ。2023年8月にはスペイン3部のCFラージョ・マハダオンダへローン移籍したものの、リーグ戦18試合の出場でノーゴールノーアシストに終わった。

マハダオンダが所属する3部リーグはフィジカルにものを言わせたスタイルのチームが多く、試合が肉弾戦の様相を呈することも珍しくない。182cmと決して小柄ではない中井だが、武闘派揃いの3部リーグを戦い抜くにはフィジカル面に物足りなさがあった。類まれなテクニックを持っていても、それを発揮するには「当たり負けしない身体」が必要だった。

今年5月には所属元のレアル・マドリードへ復帰することが発表された中井。カスティージャを率いるラウール・ゴンサレス監督に戦力とみなされている様子はなく、新たな活躍の場を探した方が良さそうだ。

FW:奥川雅也(おくがわ・まさや)

生年月日:1996年4月14日

所属クラブ:FCアウクスブルク(ドイツ)

23/24リーグ戦成績:2試合0得点0アシスト(FCアウクスブルク)/8試合0得点0アシスト(ハンブルガーSV)

ハンブルガーSV(ドイツ ※以下HSV)へのローン移籍は、奥川雅也にとって転機となるはずだった。

2023年7月にアルミニア・ビーレフェルトからFCアウクスブルク(ともにドイツ)に完全移籍で加入した奥川だったが、怪我に悩まされたこともあって試合出場はリーグ戦の2試合にとどまった。

今年1月にはHSVへのローン移籍が決定。2018年から2019年にかけて在籍したホルシュタイン・キールで指導を受けたティム・ワルター監督が率いるクラブで再起をはかった。自らをよく知る“恩師”のもと、シーズン後半をより良いものにしようと本人も意気込んでいたはずだ。

しかし、奥川は移籍後わずか数週間で思いもかけない事態に遭遇する。自身をHSVに呼び寄せてくれたワルター監督が解任されてしまったのだ。さらに、チーム合流直後には膝を負傷。復帰後も途中出場が続き、リーグ戦8試合出場でノーゴールノーアシストと結果を残せなかった。

2015年から欧州でプレーを続けている奥川も、今年4月で28歳。これ以上キャリアを停滞させるわけにはいかない。所属元のアウクスブルクはここ9年間で最高順位となる11位で2023/24シーズンをフィニッシュ。奥川が同クラブで居場所を確保するべく奮闘する可能性もあるが、2023/24シーズンにほとんどプレー機会がなかったことを踏まえると、生存競争に割り込むのは容易ではない。

自身を必要としてくれるクラブで再スタートを切るという選択肢の方が、再びキャリアを軌道に乗せる近道となりそうだ。

MF:三竿健斗(みさお・けんと)

生年月日:1996年4月16日

所属クラブ:OHルーヴェン(ベルギー)

23/24リーグ戦成績:20試合1得点1アシスト

今年4月に28歳となった三竿健斗も、キャリアの重要な岐路に立っていると言えるだろう。

2022年12月に鹿島アントラーズからCDサンタ・クララ(ポルトガル)へ完全移籍すると、2023年7月にはOHルーヴェン(ベルギー)へ加入。2023/24シーズンは公式戦21試合に出場して1得点1アシストという成績を残した。

三竿にとって2023/24シーズンは決して順風満帆な1年だったわけではなかった。開幕5試合を怪我で欠場してスタートダッシュに失敗すると、以降は先発出場の機会を増やしたものの、2023年12月にアキレス腱を負傷したことで約2ヶ月間の戦線離脱を余儀なくされた。復帰後は序列を下げてベンチ要員となり、ヨーロッパ・プレーオフでもその悪い流れは変わらなかった。

今年5月にフランス紙『レキップ』が報じたオスカル・ガルシア監督のレスター行きが仮に現実のものとなり、プレシーズンで新指揮官に対するアピールに成功すれば、チーム内における三竿の序列にも変化が起きるかもしれない。だが、もはや若手枠ではない三竿がキャリアの貴重な時間を現所属クラブに捧げる必要性がどこまであるだろうか。より先発出場の機会が見込めるクラブに移籍した方が、より充実した現役生活を送れるという見方もできるだろう。

鹿島時代に23歳という若さでキャプテンを務めるなど、早くから多くの期待を背負ってきた三竿。新天地で輝くファイターの姿を見たいと願うファンは少なくないはずだ。

FW:川﨑修平(かわさき・しゅうへい)

生年月日:2001年4月28日

所属クラブ:ポルティモネンセSC(ポルトガル)

23/24リーグ戦成績:0試合0得点0アシスト

川﨑修平がポルトガルの地で苦しんでいる。

ガンバ大阪U-23に在籍していた当時の川﨑は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでキャリアの階段を駆け上がっていた。2019年にトップチームへ2種登録されると、同年11月にはG大阪と2020年からの昇格選手として仮契約を締結。2020年8月にはJリーグYBCルヴァンカップ・グループステージ第3節の湘南ベルマーレ戦でトップチーム初先発&初出場を果たした。

2021年7月にはAFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第5節のタンピネス・ローバースFC(シンガポール)戦で、トップチーム初得点を含むプロ入り初のハットトリックを達成。同年8月にはポルティモネンセSC(ポルトガル)への完全移籍が決定し、川﨑の前途は明るいと多くの人が思ったことだろう。

しかし、ポルトガルで川﨑を待ち受けていたのは試練の日々だった。鎖骨骨折や膝の手術を経験し、約1年半の間にプレーできる状態だったのは半年程度。加入当初はトップチームで練習していたが、これからという時に負傷してしまったのが痛かった。

2023年1月にはヴィッセル神戸に期限付き移籍したものの、明治安田生命J1リーグ(現・明治安田J1リーグ)では4試合に出場して1得点。川﨑が本調子に戻ることはなかった。今年1月に神戸を退団してからは稼働がなく、キャリアがストップしてしまっている。まずは出場機会を得るためにも、カテゴリーを問わずJクラブへの復帰も視野に入れた方がいいのかもしれない。

FW:田川亨介(たがわ・きょうすけ)

生年月日:1999年2月11日

所属クラブ:ハーツ(スコットランド)

23/24リーグ戦成績:14試合2得点0アシスト

田川亨介の2023/24シーズンは消化不良のまま終わりを迎えた。

2022年1月にFC東京からCDサンタ・クララ(ポルトガル)へローン移籍すると、2023年7月には一度FC東京へ復帰したものの、直後にハーツ(スコットランド)へ完全移籍。二度目の海外挑戦に踏み切った田川だが、スコットランドでは本来の実力を発揮しきれずにいる。シーズン序盤に負傷すると、復帰後もベンチ生活が長く続くことに。出場したとしても途中投入からの短時間プレーがほとんどで、スティーブン・ネイスミス監督の信頼を得られていない。

田川とハーツが結んでいる契約は2027年5月で満了となる。今年2月、田川にポルトガルやJリーグへ復帰する可能性が取り沙汰されると、スコットランドメディア『Edinburgh News』はハーツ側の見解として、田川がチームにフィットするまで時間がかかると考えていることを報じた。

ただ、田川の状況をより難しくしているのは、ハーツに絶対的なエースが君臨している点だ。公式戦47試合に出場して31得点8アシストを記録したスコットランド代表FWローレンス・シャンクランドは、ネイスミス監督にとって揺るぎない“ファーストチョイス”。田川としてはポジションが完全に被っており、キャプテンも務める28歳のCFから先発の座を奪うのは容易ではない。

ハーツに適応するための時間をかけるより、新天地で先発出場の機会を増やすべきだろう。

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