J1が狙う? J2で輝く若き逸材10人。恐怖と希望の移籍市場、夏の“個人昇格”は実現するか?

2024シーズンの明治安田J2リーグは折り返し地点を通過した。若い才能の成長は凄まじく、今季も多くの新しい力が台頭している。今回はJ2リーグで活躍する23歳以下の選手の中から、近い将来にJ1リーグへ飛躍するであろう選手をピックアップして紹介する。各データ・スタッツは7月7日時点の『Jleague.co』を参照。

MF:相良竜之介(さがら・りゅうのすけ)

所属クラブ:ベガルタ仙台

生年月日:2002年8月17日(21歳)

2024リーグ戦成績:21試合7得点3アシスト

サガン鳥栖のアカデミーで育った相良竜之介は、2021年にトップ昇格を果たしたものの、出場機会に恵まれず、2023シーズンにベガルタ仙台に期限付き移籍で加入し、J2で18試合に出場して3得点を記録した。今季から完全移籍に切り替わると、さらに存在感を増しており、ここまでリーグ戦21試合で7得点3アシストの活躍で、仙台の攻撃をけん引している。

開幕戦の大分トリニータ戦でいきなりゴールを決めた相良は、レギュラーとしての地位を確立し、コンスタントに結果を残した。第22節の栃木SC戦では、プロキャリアで初の1試合2得点を記録して、さらに勢いに乗っているところだ。

左サイドハーフとしてプレーすることが多い相良は、中にカットインして右足でシュートを放つ形を得意としている。元イタリア代表のアレッサンドロ・デル・ピエロが得意としたゴールから左斜め45度の位置は、ファンの間で「相良ゾーン」と呼ばれ、そこでボールを持つと観客の期待が最高潮に達する。

第10節・モンテディオ山形との東北ダービーで得意の形から得点を奪った際、森山佳郎監督は試合後に「今年は本当に大きな成長を遂げている。もともと私も年代別の日本代表で見ていた選手で、鳥栖のユースでしかけることが得意な選手だったのですが、あそこから抜ききらずシュート、みたいなところが今シーズンはかなり、シュート練習でも片渕(浩一郎ヘッド)コーチと毎日やってくれている」と、クラブ公式サイトで急成長の理由を語っていた。

FW:小森飛絢(こもり・ひいろ)

所属クラブ:ジェフユナイテッド千葉

生年月日:2000年8月6日(23歳)

2024リーグ戦成績:23試合10得点2アシスト

2023シーズンに大卒ルーキーとしてジェフユナイテッド千葉に加入した小森飛絢は、プロ1年目でJ2リーグ33試合に出場して13得点を記録すると、2024シーズンはさらにペースを上げており、すでに2桁得点に到達している。

178cmの小森は、FWとして特別身長が高いわけではないが、動き出しの巧さとシュート技術の高さでゴールを量産している。第2節・藤枝MYFC戦から4試合連続得点で見事なスタートを切ると、その後もコンスタントに得点を挙げているところだ。

右足と左足で5得点ずつを決めており、どちらの足でも得点を挙げることができる。また、常に裏を狙い続けるだけでなく、パスを引き出してつなぐことも得意で、千葉の攻撃を活性化している頼れる10番だ。

第20節・徳島ヴォルティス戦で決勝点を挙げて今季の得点数を10としたあとで小森は、「個人の目標としてはまだまだ足りないので、こういう試合で複数得点を取れるように頑張りたい」とクラブ公式サイトでコメントを残していた。

J2で日本人トップタイのゴールを挙げている小森は、得点王のタイトルを目指せる状況で、クラブをJ1昇格に導く活躍に期待が集まっている。

MF:弓場将輝(ゆみば・まさき)

所属クラブ:大分トリニータ

生年月日:2002年5月13日(22歳)

2024リーグ戦成績:21試合0得点0アシスト

大分トリニータの下部組織で育った弓場将輝は、2021年にトップ昇格を果たしたものの、なかなか定位置確保には至らなかった。それでも、2022年にクラブがJ2に降格してから出場機会を増やし、2023シーズンから不動のレギュラーとして活躍している。

弓場は危険察知能力が優れたボランチで、タックル、ブロック、インターセプト、リカバリーの全ての項目でチームトップの数字を記録している。ブロックとインターセプトについてはJ2全体でも2位で、大分の中盤の守備を支える存在だ。

J2屈指のボランチである弓場だが、ここまでの出来に100%納得しているわけではないだろう。チームが下位に低迷しているのに加えて、弓場個人としても2023シーズンは4得点挙げていたものの、今季はここまで得点がない。

昨年末のクラブ公式メディアのインタビューで弓場は、2024シーズンへの課題を問われた際、2023シーズンに「ゴールとアシストで10本以上というのを目標に掲げていて達成できなかった」ことを挙げていた。攻撃面の貢献は本人の中でも向上の余地があるポイントのようだが、今季ここまで得点もアシストもないのはもどかしいところだろう。

大分は第23節終了時点で総得点数が19で、最下位・ザスパ群馬に次ぐ下から2番目の数字だ。23失点は上位に入っても不思議ではない数字なだけに、弓場は守備の貢献をそのままに、攻撃面に磨きをかけたいところかもしれない。

FW:若月大和(わかつき・やまと)

所属クラブ:レノファ山口FC

生年月日:2002年1月18日(22歳)

2024リーグ戦成績:19試合4得点3アシスト

若月大和は、2019年に湘南ベルマーレに特別指定選手として加入し、2020年1月からスイスのシオンに期限付き移籍した。しかし、コロナ禍でチームの活動が停止するなど不運も重なって欧州適応はうまくいかず、2022年に湘南に復帰。その後、湘南で2シーズンを過ごしたが定位置確保に苦しんで、今季完全移籍でレノファ山口FCに加入し、舞台をJ2に移した。

横浜FCとの開幕戦に先発していきなりゴールを決めた若月は、その後しばらく得点が止まっていたものの、第14節のモンテディオ山形戦でゴールネットを揺らした。その後は、第16節・藤枝MYFC戦で得点を挙げたあとには、クラブ公式サイトで「ホーム2試合連続でゴールを決めることができたのは大きな自信になりますが、もっと点を取りたいです」と語り、意欲を燃やしていた。

そして、第20節・ザスパ群馬戦では、見事なショートパスがつながったところから若月のコントロールショットがペナルティーエリア外から決まり、さらに自信は高まっていることだろう。

プロ入り後すぐにヨーロッパへ渡った若月は、その後苦しんだものの、ポテンシャルの高さは多くの人が認めるところだろう。燻っていた才能がブレイクしつつあるのかもしれない。

DF:新保海鈴(しんぼ・かいり)

所属クラブ:レノファ山口FC

生年月日:2002年8月16日(21歳)

2024リーグ戦成績:23試合1得点7アシスト

元サッカー日本代表の田中隼磨の息子としても知られる新保海鈴は、2024シーズンに急激に評価を高めている選手の1人だろう。昨季は育成型期限付き移籍でJ3のいわてグルージャ盛岡でプレーしていたが、現在はJ2のレノファ山口FCに復帰して左サイドバックのレギュラーを務めている。

新保のスタッツで特に目立つのは、アシスト数の7だ。これはリーグ2位の数字である。これだけでも、左サイドから精度の高いクロスボールを供給できることは分かるが、新保の武器はキック精度だけではない。ボールキープの技術も高く、プレーの選択肢が豊富なところも大きな魅力だ。

新保はほとんど助走を取らずに左足で正確なクロスを出せる。相手がこれを警戒していると、スルリと中にドリブルで切り込んでいける。セレッソ大阪U-23時代は、攻撃的なポジションが本職だったこともあり、突破力には自信があるようだ。クロス数、ドリブル数ともにリーグ全体で2位の数字を誇っており、新保の攻撃性能はデータとしても光っている。

キャリアでJ2初得点となった第14節のモンテディオ山形戦では、胸トラップから華麗なジャンピングボレーを叩き込み、FW顔負けの得点センスを見せつけた。J3からJ2へに難なくステップアップした新保は、さらに上の舞台を見据えているかもしれない。

MF:保田堅心(やすだ・けんしん)

所属クラブ:大分トリニータ

生年月日:2005年3月5日(19歳)

2024リーグ戦成績:18試合2得点1アシスト

保田堅心は、サガン鳥栖のU-15で成長したあと、高校時代は大分トリニータの下部組織に加わって経験を積んだ。トップ昇格前から2種登録でデビューを果たすと、2023シーズンから正式にトップ昇格し、プロ1年目からJ2で29試合に出場して今季も順調に成長を続けている。

保田は第3節の藤枝MYFC戦で決勝点を挙げ、大分に2024シーズンの初白星をもたらした。その後は先発を外れる時期があったものの、185cmの長身を活かした中盤からの持ち上がりは迫力があり、チーム全体を押し上げることができる。

しかし、その後なかなかチームの結果に結びついていないのは気になるところだ。ヴァンフォーレ甲府戦で決勝点を挙げて今季の得点数を2としているものの、アンカーの位置から前に出られないことが多い。中盤のパートナーである弓場将輝に守備のタスクをある程度任せて、保田はもっと仕掛けたいところだろう。

長身でフィジカルの強いボックス・トゥ・ボックスのMFは、日本人選手に多いタイプの選手ではなく、それだけで注目の存在と言える。加えて闘争心の強さも魅力的で、チームをけん引するポテンシャルがあるはずだ。

ただ、第21節の鹿児島ユナイテッド戦では前半にイエローカードをもらっているにもかかわらず、後半に審判への抗議で退場になるなど、闘争心が間違った方向に向かうことがしばしば。それでも、まだ19歳の若手であり、伸びしろは多く、J1のクラブもその才能をチェックしているはずだ。

FW:神代慶人(くましろ・けいと)

所属クラブ:ロアッソ熊本

生年月日:2007年10月25日(16歳)

2024リーグ戦成績:13試合4得点0アシスト

神代慶人は、ロアッソ熊本の下部組織で育った16歳で、すでにプロ契約を交わしてJ2でプレーしている。

第5節のベガルタ仙台戦でデビューを飾った神代は、第7節のジェフユナイテッド千葉戦で初ゴールを決め、J2の最年少得点記録を16歳5カ月5日に更新した。続く第8節・レノファ山口FC戦では1試合2得点を記録し、さらに第9節のV・ファーレン長崎戦でもゴールネットを揺らして鮮烈なスタートを切っている。

4得点のうち3得点はPKによるものだとしても、16歳ながらにPKを託されているという事実からもチームの信頼を勝ち取っていることは確かで、PKを蹴るという度胸にも大物感が漂っている。本人はクラブ公式サイトで、「PKは自分の得意なコースに思い切り蹴って、そのゴールがチームの勝利に繋がって良かったです。PKを蹴ったのは、自分の意思もありましたが、周りが蹴るように言ってくれて自分が蹴ることになったので、みんなのおかげで生まれたゴールです」と語っていた。

第22節終了時点で、まだ先発での出場は1回だが、出場90分あたりのシュート数は6.6本でリーグトップを記録している。左右どちらの足でも精度の高いシュートを放てる万能タイプのアタッカーで、昨年は15歳でU-17サッカー日本代表にも招集された。日本サッカー界期待の才能に、多くの注目が集まっている。

FW:ブラウン・ノア賢信(ぶらうん・のあ・けんしん)

所属クラブ:徳島ヴォルティス

生年月日:2001年5月27日(23歳)

2024リーグ戦成績:20試合3得点1アシスト

ブラウン・ノア賢信は、横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2019年に2種登録でトップデビューを飾り、2020年にトップ昇格を果たした。しかし、分厚い選手層に阻まれて定位置確保に苦しみ、期限付き移籍で複数のクラブを渡り歩いている。

プロの舞台でなかなか結果を出せずにいたブラウン・ノアだが、2021年夏に加入したアスルクラロ沼津で頭角を現すと、その後完全移籍に切り替わり、2023シーズンはJ3で13得点を記録した。この活躍が注目されて、今季はJ2の徳島ヴォルティスに“個人昇格”を果たしている。

J3でゴールを量産した昨季と比べると物足りない数字になっているブラウン・ノアだが、第22節のV・ファーレン長崎戦と第23節のヴァンフォーレ甲府戦で2試合連続で得点を決めており、勢いは増している。189cmの長身を活かして前線で身体を張るだけでなく、サイドに流れてパスを引き出すこともできるため、様々な形でチームに貢献できるタイプのアタッカーだ。

徳島は最近の試合で、柿谷曜一朗がロングスローをゴール前に投げるシーンが増えている。ブラウン・ノアにとってはゴール前の密集は見せ場になるはずで、今後さらに得点関与を増やしていきたいところだ。

DF:山田奈央(やまだ・なお)

所属クラブ:水戸ホーリーホック

生年月日:2002年11月18日(21歳)

2024リーグ戦成績:17試合0得点1アシスト

水戸ホーリーホックで4年目のシーズンを過ごしている山田奈央は、着実に成長を続けているセンターバックだ。

浦和レッズの下部組織で育った山田は、2021年に水戸に加入した。プロ1年目はJ2で1試合の出場にとどまったが、その後少しずつ出場機会を増やし、2023シーズンは24試合に出場。背番号を4に変えた今季は、ここまで不動のレギュラーとしてピッチに立ち続けている。

身長183cmの山田は、センターバックの選手として特別に長身というわけではないものの、スピードがあり、対人守備に強い。J2で60試合に出場している経験からプレーの判断も的確になっている様子で、若手ながら落ち着いて安定感のあるパフォーマンスを続けている。

水戸は17位に低迷しているものの、失点数は27で、下位にいるチームとしては守備が堅い。これをもっと結果につなげたいというのが本音だとしても、2023シーズンの総失点が66だったことを考えると、シーズンの半分が過ぎてこの失点数というのは成長ととらえていいだろう。水戸の守備を支える山田の成長は、これからますます注目が集まりそうだ。

MF:長尾優斗(ながお・ゆうと)

所属クラブ:水戸ホーリーホック

生年月日:2001年8月31日(22歳)

2024リーグ戦成績:18試合0得点0アシスト

長尾優斗は、ガンバ大阪の下部組織で育ち、2019年にガンバ大阪U-23の選手としてJ3で11試合に出場した。その後、関西学院大学に進学して大学サッカーで経験を積み、今季から水戸ホーリーホックに加入している。

ボランチで開幕スタメンの座を勝ち取った長尾は、シーズン序盤戦でレギュラーを任された。初挑戦のJ2という舞台に物怖じすることなく、若さを感じさせない冷静さでパスを散らして攻撃のリズムを生み出すボランチで、ゲームメイカーとして非凡なセンスを持っている。

その後は常時レギュラーというわけではなくなり、インパクトはやや薄れているが、ルーキーイヤーでここまで18試合出場は上々だろう。大学では一時Bチームに降格してしまった時期もあったが、そこから3年生のときにレギュラーに返り咲いてプロ入りを果たした選手で、逆境から這い上がる力がありそうだ。

関西学院大学の同期には、鹿島アントラーズの濃野公人、名古屋グランパスの倍井謙、ガンバ大阪の美藤倫といったタレントがいることも良い刺激になっているはず。今後の成長が楽しみな若手MFだ。

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