JFA・宮本恒靖会長に聞く大岩ジャパンの勝算、国際大会で勝ち進むために何が必要か
大岩ジャパンに勝算はあるのか――。パリ五輪(26日開幕)に臨むサッカー男子日本代表は、1968年メキシコ五輪銅メダル以来56年ぶりとなる表彰台を狙う。〝ツネ様〟こと日本サッカー協会・宮本恒靖会長(47)のインタビュー後編では、選手時代にエースのMF中田英寿氏ら個性派メンバーをまとめ上げた日本代表キャプテンとして、国際舞台を勝ち抜くために必要な勝負のポイントを披露。オーバーエージ(OA、24歳以上)選手が不在の中でチーム一丸を強調した。
――大岩剛監督とは普段から話をするか
宮本会長(以下、宮本) こういう選手がどうなのかや、メンバー構成、オーバーエージがどうとか。その都度、話をして情報はもらっています。監督のイメージ? Jリーグで監督として対戦した経験から言えば、手堅くいくタイプで、試合に勝つ可能性が高いのは、どういうところになるかという分析をするという印象がある。選手時代は真ん中でどっしり構えている選手でしたね。振る舞いとか表情はその頃から変わらない。
――ファイナル進出が目標。日本は準決勝の壁を突破できていない
宮本 準決勝は、さらに一つ上のクオリティーを求められる。2012年ロンドン大会では準決勝でメキシコ、21年東京大会ではスペインに負けた。W杯ならベスト8に入っていくところで、さらなるクオリティーが求められる戦いになるが、90分間に「勝負どころ」というのがある。そこを確実にものにする。五輪ではそこがメダルを取れる、取れないの差じゃないか。
――国際大会で勝ち上がるためのポイントは
宮本 勝ち進もうと思ったら点が取れないとダメ。1次リーグを勝ち抜くコツ? 初戦は大事になる。勝ち点1以上を挙げること。そういう意味では安定した時間を多く過ごすためには守備も重要になるでしょうね。
――長い間務めた日本代表の主将として気を付けていたことは
宮本会長 みんなが一つの方向を向くように。勝利のために、それぞれがある程度犠牲を払いながら、そこにコミットできるか。みんながそういうマインドになるように気を配っていた。試合に出られずにモヤモヤしたものを持つ選手には「難しいけど、やろや」って練習に集中させ、発散させる。悔しさはあるんだけど、選手が「チームのためにやろう」というものが自然に生まれてくるチームが、トーナメントで勝つチームだと思う。
――主将として選手に声をかけてガス抜きし、選手ミーティングでチームを結束させていたが、逆に危険信号はあるか
宮本 例えば、選手が文句を言い出したとき。オーガナイズが悪いとか、食事がどうこうとか、いろんなストレスがあるけど、それが漏れて聞こえてくると、あまりよくない状況だと思う。そこでどう対応するか。相談する人? 相談ではないが、02年(日韓W杯)では年上の秋田(豊)さんや中山(雅史)さんが試合に出場できなくてもいつも一生懸命やっていた。そういう選手がいると、試合に出る選手は、いつも以上のことをやらないといけないと感じる。
――主将としての経験を選手にアドバイスすることはあるか
宮本 どういうアプローチをしているのかは気になるので、チームの近くにいるスタッフに「今キャプテンってどう感じて選手に接しているか」と聞くことはある。でも〝そうすべき〟とかはない。主将の責任? そこは自分も感じながらやっていた。チームをどういい流れに持っていくかを考えすぎて、自分ができる範囲以上のことをやろうとして、自分のパフォーマンスがよくなかったこともあった。外部から指摘されたり、自分を俯瞰して客観視することで修正していった。
――パリ五輪後にはA代表が臨む北中米W杯アジア最終予選も始まる
宮本 ぜひ若い力がチームを押し上げてほしい。今のA代表も各ポジションで競争があるし、それが常にあることが成長のために必要。パリ世代からは新たに3、4人はA代表に入ってきてほしい。
☆みやもと・つねやす 1977年2月7日生まれ。大阪府出身。96年にG大阪ユースからトップチームに昇格。ザルツブルク(オーストリア)や神戸でもプレーした。日本代表は2000年に初選出され、71試合3得点。02年日韓、06年ドイツW杯に出場。11年シーズンで現役を引退し、13年にFIFAマスターを取得した。17年7月にG大阪の監督に就任。退任後は日本サッカー協会の専務理事を経て24年3月から会長を務める。176センチ、72キロ。