リーグタイトルを二分してきた横浜と川崎の低迷はなぜ起きているのか。互いの共通点と異なる要因

守備面の整備を攻撃のアップデートが上回れていない

数年来、リーグタイトルをほぼ二分してきた横浜F・マリノスと川崎フロンターレが揃って下位に低迷している。22試合を終えて、13位の横浜は7勝5分10敗で勝点26、15位の川崎は5勝9分8敗で勝点24だが、得失点差を見ても横浜が-4、川崎は-1となっており、その数字的にも妥当な順位と言える。

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両チームが低迷する理由には、共通点とそれぞれ異なる要因がミックスしているように思う。まず前者を探ると、リーグ全体の傾向として、ボールを保持することがゲームの主導権を握ることと必ずしもリンクしなくなってきている。

その一つはボールを動かしながら、ニアゾーンやポケットを取っていく攻撃に対するローブロックの守備がかなり整理されて、ポゼッションから相手の守備を崩して得点することが、J1ではますます難しくなってきている。

それでも相手を押し込んで得点を奪うには、コンビネーションで崩し切るのか、個人で打開するのかという選択肢になってくるが、横浜はそこをエウベルやヤン・マテウスの個の打開力、川崎はワンタッチプレーなどを含めたピンポイントよりのプレーに頼る傾向はある。このあたりも主力の海外移籍など、タレント的な問題と決して無関係ではないが、周囲の守備面の整備を攻撃のアップデートが上回れていないことも関係している。

そしてもう1つは、ハイラインをベースとする2チームにとって、ヴィッセル神戸やFC町田ゼルビア、アビスパ福岡などロングボールを意欲的に使うチームが増加していることも、ますますポゼッションの難易度を上げている。

ポゼッションで崩し切るチームにとって、ボールを失った直後にハイプレスをかけて、即時奪回する守備がセットになっていた。しかし、ロングボールを多用するチームも相手のハイプレスを外すためのビルドアップは習得してきている。

ロングボールにも大きく2つの種類がある。蹴るロングボールと蹴らされるロングボールだ。意図して有利なFWに当てて、ボールをキープできたらポゼッションの一種である。しかも、下がりながら対応する相手の守備が一瞬、間延びするので、そこでFWが落としたボールを2列目の選手が前向きに受けることができれば、カウンターに似た状況を引き起こすことができる。

レギュレーションの不利は1つの要因に過ぎない

横浜や川崎と同じく、ポゼッションをベースとするガンバ大阪も共通する課題に向き合っているが、ロングボールを蹴られた時のリトリート、そしてローブロックに切り替えての守備が整理されており、そうした形から失点するリスクは少ない。

またポゼッションから神戸や町田のように、ロングボールを使うことはほとんど無いが、カウンターが可能なシーンでは宇佐美貴史やウェルトンにシンプルな縦パスを通すなど、今、最も速攻と遅攻の整理ができているチームだ。

横浜は従来のポゼッションをベースにしながらも、縦に早く付けて、直線的にゴールを目ざすオプションをケビン・マスカット前監督の時から徐々に取り入れていたが、ハリー・キューウェル監督が就任し、4-3-3で主導権を握るスタイルを再構築する必要に迫られたことで、ソフトランディングの機会を失ってしまったところがある。

一方の川崎も、前線のタレントのチョイスを含めて、縦に速い攻撃を少しずつ取り入れているが、攻撃時間が短くなることとのバランスの整理ができているとは言い難い。特に守備のフィルターを橘田健人の運動量に頼りすぎているのは問題だろう。

Jリーグの潮流と戦術的な変化が、中盤支配型の戦い方やポゼッションから崩し切るスタイルをやりにくくしているのは間違いないが、それに加えて川崎は今季のリーグ開幕前に戦ったACLラウンド16のホーム&アウェーの合間に、神戸との富士フィルム・スーパーカップが入るという異常な日程の事情で、オフの短縮を強いられ、最も時間が取れるキャンプ期間も短くなってしまった。

横浜もACLファイナルまで勝ち進んだことにより、その都度、前後のリーグ戦がイレギュラーになり、選手の疲労はもちろん、移動を挟んだ中2日、3日で試合をこなさなければならない状況が続いた。昨年アジア王者になった浦和レッズもそうだが、ACLの秋春制へのシーズン移行がもたらした影響は小さくない。

ただ、レギュレーションの不利は1つの要因に過ぎないだろう。やはり横浜も川崎も、ここからベースを変えることなく戦力的なメンテナス、戦術的なアレンジをしてシーズンを乗り切り、来季の浮上を図っていくのか。それとも監督人事を含めて、早めに舵を切るのか。

サガン鳥栖や京都サンガF.C.、湘南ベルマーレなど、リーグ後半戦になって下位チームも勝点を伸ばしてきており、残留争いが2018年のような大混戦になる可能性も出てきているなかで、近年、常にタイトルを争ってきた神奈川の二大クラブが決断を迫られているのは間違いない。

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