大岩ジャパン、パリ五輪メダル獲得の勝算は? OA枠ゼロも“50%”とみる。確率を高めるためのポイントは起用法にあり
メンバーを入れ替えるタイミングが勝負の分水嶺に
パリ五輪に臨むU-23日本代表のメンバーが7月3日に発表された。
FC東京でキャプテンを務め、大岩ジャパンでも副キャプテンを任されていたMF松木玖生(FC東京)の選外は驚きを与えたが、良くも悪くも大きなサプライズはなし。MF久保建英(ソシエダ)、MF鈴木唯人(ブレンビー)の招集不可は1か月前に山本昌邦ナショナルチームダイレクターが明かしており、GK鈴木彩艶(シント=トロイデン)に関しても移籍の報道が出ており、メンバー外になったとしても不思議ではなかった。
【PHOTO】パリ五輪に挑むU-23日本代表18名とバックアップメンバー4人を一挙紹介!
24歳以上の選手を3名まで起用できるオーバーエイジ枠も海外クラブとの交渉が難航していると伝えられていたため、2008年の北京大会以来となるオールU-23世代で戦うことも想定の範囲内だった。
本登録メンバーの18名中16名は、今春に開催されたパリ五輪アジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップに参戦。残る2名のFW斉藤光毅、MF三戸舜介(ともにスパルタ)も今年はクラブ事情で活動に参加できていなかったが、発足当初から重宝されてきたアタッカーで連係面に不安はない。
4名のバックアップメンバーを見てもMF山田楓喜(東京V)とCB鈴木海音(磐田)は大岩ジャパンのコアメンバーであり、アジア最終予選を戦ったメンバーで勝手知ったる面々だ。
2022年の3月上旬の立ち上げ合宿で大岩剛監督は「計画性と即興性」をキーワードのひとつに挙げており、誰が入っても崩れないようなチーム作りに注力してきた。特に今年に入ってからはより招集の可否が不透明となり、インターナショナルマッチウィーク外の開催となったアジア最終予選や本大会に誰がいるか見通せない状況だったが、結果的にはコアメンバーを軸に据えて最後の戦いに挑む形になった。
そうした前提条件を踏まえ、大岩ジャパンは56年ぶりのメダル獲得を果たせるのか。現状で勝算は50パーセントだと考える。3日の会見で「必ずファイナルに進む。そして必ず金メダルを獲得する」と力強く宣言した指揮官のもとで、U-23日本代表が勝ち上がっていくために必要なポイントとしてあげたいのは選手の起用法だ。
五輪はワールドカップとは異なり、18名で戦い抜かなければならない。しかも、スケジュールも過密で準決勝までは中2日で戦い、中3日で決勝を迎える(3位決定戦は中2日)。
言うまでもなく、回復させるためのリカバリーが重要な要素になってくるが、選手の疲労度をコントロールしながらのメンバー選考も不可欠になってくる。スタッフ、メディカルの力が試されるなかで、大岩監督がどのような決断を下すのか。初戦のパラグアイ戦の結果次第だが、どのタイミングでメンバーを大きく入れ替えるかは勝負の分水嶺になる。
その意味では、1戦目と2戦目がキーになるかもしれない。現地24日のパラグアイ戦、27日のマリ戦で相手の傾向と特徴を見ながら選手をピックアップし、ある程度均一に出場機会を与えることができれば、良い状態で3戦目のイスラエル戦(30日)に向かっていける。
もし、2戦目までにノックアウトステージ進出が決まっていれば、準々決勝を見据えた選手起用が可能。逆に突破が決まっていない状況であれば、万全なコンディションで選手たちはピッチに立てる。
実際にU-23アジア杯では、UAEとのグループステージ第2戦目(2-0)でスタメンを7名変更して勝利を掴んだ。大会後に大岩監督も「休ませるならここしかない」と大会前から覚悟を決めていたと明かしており、大胆な選手起用が同様にできればチームは楽になる。
難しいのはCBのやり繰り
パリ五輪でも思い切った選手起用ができるか。改めてスカッドを見ていくと、4-3-3のシステムをベースとするU-23日本代表において、サイドプレーヤーは三戸、斉藤、FW平河悠(町田)、FW佐藤恵允(ブレーメン)の4名。さらにセンターフォワードが主戦場の藤尾翔太(町田)も右サイドでプレーした経験を持つ。このセクションはローテーションが比較的計算しやすいと言えるだろう。
セントラルMFもアンカーは藤田譲瑠チマ、山本理仁(ともにシント=トロイデン)、川﨑颯太(京都)、インサイドハーフは山本、川﨑、荒木遼太郎(FC東京)に加え、両ウイングでプレーできる三戸が対応可能。最前線は細谷真大(柏)と藤尾が控えており、有事の際はクラブで1トップの経験がある荒木を持っていく手もある。
となると、難しいのはCBのやり繰りだろう。CBと比べ、SBは起用法の幅がある。左は大畑歩夢(浦和)、右は関根大輝(柏)がファーストチョイスで、両SBでプレーできる半田陸(G大阪)の存在も心強い。不測の事態に陥れば、三戸や佐藤を1列下げて対応する策もあり、選択肢としては決して少ないわけではない。
その一方でCBは専門色が強く、高井幸大(川崎)、西尾隆矢(C大阪)、木村誠二(鳥栖)のスペシャリストで回す形となる。だが、それ以外にこのポジションができる選手は高校時代にCBを主戦場としていた右SBの関根のみ。近年はこのポジションで本格的にプレーした経験はほとんどなく、大舞台でどこまでできるかは不透明だ。
1人でも疲労度が強い状況にあったり、出場停止になった場合は2人のCB+SB関根で乗り切る必要があるため、ハードな日程を戦うには不安材料となる。そうした事態を避けるためにも、先を見据えたマネジメントが求められるはずだ。
とはいえ、今大会は開幕後に負傷離脱となった場合はバックアップメンバーから補充ができる。万が一、怪我を抱えた場合は早めに決断を下す必要もあるだけに、状態の見極めも大きなポイントになってくるのは間違いない。
兎にも角にもメダルを狙うのであれば、いかにノックアウトステージで疲労度を抑えながら勝ち上がるかが大切になる。現状でメダル獲得の可能性を50パーセントとしたが、良い状態でノックアウトステージに進めれば、その可能性は一気に高まるだろう。