勝点63のG大阪が2位、72の浦和が3位。その順位表にサッカーへの愛はあるか。 Number Web 12月11日(金)17時1分配信

11年ぶりに復活した不可思議なチャンピオンシップは、サンフレッチェ広島の勝利で幕を閉じた。

広島が勝ってよかった。誰もがそう言う。もしかしたら、ガンバ大阪のファンでもそう思った人がいるかも知れない。理由は一つだ。これで広島が負けたら洒落にならなかったから、である。

実際のところ、広島にも負ける可能性はあった。もしオ・ジェソクの軽率な退場がなかったら、CSはどんな風に展開していたのだろうか? セカンドステー ジ優勝、年間1位、勝ち点74、得点73、失点30。歴史的とも言える数字を残したチームがもし、でもJリーグ王者ではないんです、となってしまっていた ら、今頃僕たちサッカーファンはどんな議論を交わしているのだろうか?

サッカーに対する愛情を欠いたように見える順位表。

 例えば、こんなことだって起こり得たのだ。

JリーグのオフィシャルHPを訪ねて、順位表のところをクリックしてみてほしい。1秒も経たぬ間に、目の前には世にも奇妙な年間順位表が現れる。1位サンフレッチェ広島、勝点は74。2位ガンバ大阪、勝点63。そして3位浦和レッズ、勝点は72。

もしガンバ大阪がCSで勝利していたら、この順位表はこう変わることになっていた。1位ガンバ大阪、勝点63、2位サンフレッチェ広島、勝点74、3位浦和レッズ、勝点72。(この場合、最優秀監督賞は森保一ではなく長谷川健太へ与えられたのだろうか?

長いサッカーの歴史の中で、こんな順位表を目にする人類はたぶん僕たちが初めてだろう。

保守的で、サッカーに関しては古い価値観にすがりついている僕にとって、この順位表はサッカーに対する愛情を欠いた、ただの悪い冗談にしか見えない。

あるいは、これは伝説の起業家ピーター・ティールが言うところの、賛成する人がほとんどいない大切な真実、なのだろうか。停滞したJリーグを活性化する鍵は、この不可思議な順位表に隠されているのだろうか? ここから明るい未来が始まるのだろうか?

CS準決勝の40,696人という観客数の理由。

 哀れにも最後の一戦で2位から3位に転落してしまった浦和レッズ目線で、今季のJリーグについてもう少し話そう。

もう誰も覚えていないかもしれないけれど、CS決勝第1戦の数日前、11月28日の午後、浦和レッズは埼玉スタジアムでCS準決勝を戦い、ガンバ大阪に延長の末1-3で敗れた。2位であることのアドバンテージはホームでこの試合を戦えること、ただそれだけだった。

当日、スタジアムに集まったのは40,696人の観客だった。リーグ最終節から1週間しかなかったこと、それがチケットの売り上げが伸びなかった主たる 理由の一つであるかのようなチェアマンのコメントが後日発表されていたが、こと浦和に関しては若干違うような気がする。たとえ販売期間が1週間しかなくと も、ここぞという大一番で、埼スタは4万人しか集められないスタジアムではない。

大きかったのは、結局のところレッズが自力で年間1位の座を手に入れられなかったことだ、と個人的には考えている。

サポーターが己に許せなかった譲歩。

 Jリーグが2シーズン制の再開案を打ち出した時、浦和レッズのサポーターたちは強硬に反対した。試合後のゴール裏には何十枚もの横断幕が掲げられ、2シーズン制は絶対に認められない旨を主張し続け、そこまで反対するかというぐらい反対した。

しかし、Jリーグは2シーズン制を決める。

納得がいかないから、応援にも行かない。そこまでドラスティックな抵抗を見せられるサポーターはたぶんいない。シーズンは始まり、サポーターたちはスタ ジアムに足を運ぶために、自分で自分に若干の譲歩をした。ならば、あくまでも年間1位にこだわろう、と。Jリーグがどうレギュレーションを変更しようと、 我々にとって最も尊い価値観は、あくまでも年間勝点1位である、年間勝点1位こそが全てである、と。

しかしながら、Jリーグ最終節、浦和は広島との間の勝点2差を埋められず、ファーストステージ勝者&年間勝点2位チームの立場で、CS準決勝へ駒を進め ることとなった。ここでサポーターは自分へのさらなる譲歩を求められることとなった。あれほど反対した2シーズン制の、それも決勝ではなく準決勝のために 埼スタへ足を運ぶか否か。少なからぬ数のレッズサポーターは、最終的にこれ以上の譲歩を己に許せなかったのではないだろうか。

120分が過ぎた埼玉スタジアムのなんとも言えない空気。

 先制され、追いつき、突き放され、さらに突き放され。延長も含めた120分が過ぎた埼玉スタジアムは、なんとも言えない空気に包まれていた。

罵声。一部の人々は怒っていた。まあでも彼らはほとんどいつも怒っている。

拍手。一部の人々は選手の健闘を称えていた。実際、藤春がガンバの2点目を決めるまで、この日の浦和レッズは拍手に値するサッカーを見せていた。

無言。スタンドを埋めたサポーターの多くは、目の前で起こったことにどう対処して良いかわからないかのように、黙って腕を組み、ピッチに視線を向けて立ち続けていた。

34戦21勝9分4敗、得点69、失点40、1stステージ優勝、これがペトロビッチ監督率いる浦和レッズが今シーズン残した数字である。昨年優勝のG大阪は63、一昨年の広島も63しか勝点を取れていない。

それだけの数字を残したチームが、リーグ戦で勝点9差をつけていたガンバ大阪に、CS準決勝の場で延長戦の末敗れ、はいこれであなたは最終的に3位です、となってシーズンを終了した。自虐的なコピーをつけるなら、勝点差9を賭けた戦い、にレッズは敗れたわけである。

2位の数字で3位の結末、Jリーグというリーグ戦に持ち込まれた準決勝というトーナメントシステム。思考は混乱し、苛立ちは増す。

でもそれがルールですから。

そう、確かにそれがルールであることは頭ではわかっている。でもシーズンが終わって2週間が経とうとする今になっても、苦手な給食を口に入れたままどうしていいかわからない小学生のように、僕はそのルールをうまく飲み込めないままでいる。

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