ガンバ大阪、過密日程も光った長谷川監督の手腕。来季は戦力の底上げを【2015年通信簿】 フットボールチャンネル 12月12日(土)13時10分配信

2ステージ制が復活した2015年のJ1も全ての試合を終えた。この1年を振り返り、各Jクラブはどのようなシーズンだったのだろうか。今回はチャンピオンシップ準優勝のガンバ大阪を振り返る。

シーズン開幕前の補強

 昨季三冠を達成したチームに求められたのは過密日程に耐えられる戦力拡充だった。しかし、成功したとはいいがたい。

パトリックのバックアップとして想定されていた赤嶺真吾は最後までその力を発揮できず、横浜F・マリノスから獲得した小椋祥平も半年でモンテディオ山形に放出された。ユースから昇格したばかりの若手たちも即戦力にはなっていない。

一方、シーズン後半戦に向けて獲得した長沢駿は来季に向けて好印象を残した。攻撃面での迫力はパトリックに及ばないものの、守備で周囲の負担を軽減でき る技術とポテンシャルを備えており、初先発となったチャンピオンシップ決勝第1戦で大きなインパクトを残した。限定的な起用にとどまった点は悔やまれる が、出場すれば確実に結果を残している。

今シーズンの戦い

 昨季国内全タイトルを獲得したチームに待ち受けていたのは想像を絶する過密日程だった。シーズン開幕の3月頭から12月初旬のチャンピオンシップ決勝までの約9ヶ月でこなした公式戦は58試合。

1週間に2試合というスケジュールが隔週ペースでやってくる日程で、終盤は少し息切れしてしまった。特に日本代表と掛け持ちだった宇佐美貴史は海外遠征も含めて65試合近くを戦っており、リーグ後半戦にゴールが減少した理由は明らかだ。

それでもヤマザキナビスコカップやJ1でタイトル獲得目前まで迫り、AFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)でも日本勢最高のベスト4と健闘した。 過密日程を言い訳にせず高いパフォーマンスを継続させるプロ意識と長谷川健太監督の指導力が改めて示された1年と言える。

今季最後に残されたタイトルは天皇杯。三冠王者の意地を見せられるか、小休止を挟んで真の実力が試される。

来季の課題と展望

 来季もACL出場が確定し、今年と同等の過密日程が待っている。戦力の流出を最小限に抑え、来年こそアジアのタイトルを奪還すべく充実のスカッドを揃えたいところだ。

遠藤保仁や今野泰幸をはじめ、中盤にはベテランが多く、ユース出身の若手の台頭だけでなく純粋な戦力補強も求められる。守備陣では負傷を抱えた岩下敬輔の代役として終盤戦の多くの試合に出場した西野貴治が急成長を遂げており、激しい定位置争いが繰り広げられそうだ。

懸念材料は代えのきかない絶対的エース宇佐美貴史の勤続疲労をどのようにやわらげていくか、そして中国移籍の可能性があるパトリックをどのように引き留めるか、もしくは退団した場合の穴埋めを考えなくてはならない。

現状では終盤好プレーで起用に応えた長沢駿が控えているものの、選手の数そのものにも不安があるため、新ストライカー獲得で攻撃力の底上げを図りたい。

診断

補強結果診断 C

必要最小限のピンポイント補強で戦力アップを目指したが、それぞれを見ると成功したとはいいがたい。夏のテコ入れも効果を発揮したのは秋以降だった。

下部組織から才能豊かな選手が毎年昇格してくるが、彼らは即戦力ではなく数年後を見据えた補強。今年の成果は2、3年経ってみなければ測れない。

総合力診断 A

昨季からほとんど選手の入れ替えがなく、破壊力は保たれていた。しかし、プラスアルファが少なく、安定感が保証された一方で意外性には欠ける。特に新戦力のインパクトが弱く、大幅な戦力アップとはならなかった。

それでも長谷川監督が作り上げたチームの完成度はJリーグ随一で、互いを知り尽くした選手たちが一丸となってゴールを目指す姿は、対戦相手にとって脅威であったことに疑いはない。

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