【藤田俊哉の目】“1試合の差”を感じざるを得なかったガンバのコンディション。サンフレッチェは年間を通して力を証明した SOCCER DIGEST Web 12月6日(日)18時23分配信

サンフレッチェの優勝で本来あるべき姿で終えられたのは良かったと思う。

 浅野のヘディングシュートが決まった瞬間、勝負は決まったね。

あれでガンバの反撃ムードは止まって、残り時間はサンフレッチェの「受けて立つ」スタイルがハマって、そのままタイムアップ。最低でも2点が必要だったガンバにとって、残り15分の時点で再び2点差とされたのだから、その後の結果は当然と言えるものだろうね。

第1戦のサンフレッチェのようにアディショナルタイムに2点を奪うことができたらガンバの優勝だった。でも、その余力はほとんどなかったね。もしかたら “1試合の差”は大きかったのかもしれない。ガンバはサンフレッチェと戦う前にレッズとの120分間の死闘があったから、コンディション的に苦しかったか もしれない。プレーにいつものような“シャープさ”を欠いているように見えた。

分析とは関係ないけれど、今回のゲームはかつてのアントラーズとジュビロの戦いを見ているようだった。もちろん、堅守速攻のサンフレッチェがアントラーズで、ポゼッションのガンバがジュビロと、チームのスタイルがカブって見えていた。

スタイルの違いこそあれ、どちらも組織的に洗練されていていいサッカーをしていた。選手たちも鍛え抜かれていて、タフに戦っていた。かつてのアントラー ズとジュビロの戦いを思い出しながら、それと同時に、Jリーグのタイトルを争うのにふさわしい見所のある戦いだったと素直に感じた。

僕の評価基準は単純明快で、「勝ったものが強い」ということ。サンフレッチェが勝ったのだから、ガンバよりもタフだったということであり、年間を通して力を証明したということだ。

チャンピオンシップの復活については、いろんなところで議論があるよね。物事にはいろんな角度からの視点があるものだし、そもそも、完全なものというの は世の中には存在しない。チャンピオンシップ復活についてふたつの視点で見た時、「経営的な視点」と「現場的な視点」というものがあると思う。世界的基準 に照らし合わせても分かるように、やっぱり、リーグで頂点だったチームが、Jリーグのナンバーワンであるべきだ。

その点で言えば、今回そのリーグチャンピオンだったサンフレッチェが、そのままチャンピオンシップを制して見事にタイトルを手にし、本来あるべき姿でシーズンを終えることができたことに対して、個人的には心のなかでほっとしているよ。

日本人指揮官のなかでトップを行くふたり。来年はアジア制覇を目指してほしい。

 また、このチャンピオンシップで個人的に一番興味深かったのは、元Jリーガー監督の存在。森保さんと(長谷川)健太さんの対決は、去年から激しいタイト ル争いを繰り広げていて、どちらも組織的に洗練されたサッカーを披露している。日本人監督が育っていないと言われることがあるけど、Jリーグのなかで、も はやこの2人の成績は群を抜いている感じだ。

ほかのクラブに目を向ければ、名波がジュビロをJ1復帰に導いて、井原さんはアビスパで、それぞれいいチームを作っていると聞いている。同世代の仲間だったり先輩方のそうした活躍を見ていると、個人的にも本当に刺激を受けている。

森保さんと健太さんの話に戻すと、森保さんは4年間で3回もリーグタイトルを獲得した指揮官で、健太さんにしても日本人で唯一の3冠監督という存在だよね。

全盛期の岡田(武史)さん、西野(朗)さんと純粋に比べることはできないけれど、間違いなく言えるのは、Jリーグのキャリアという点では、森保さんも健 太さんも同じレベル、いやそれ以上を経験しているかもしれない。元Jリーガーから転身した指揮官としての実績は群を抜いている。

たとえば来シーズン、森保さんがJリーグのタイトルをふたたび獲ったとしても、僕はまったく驚かない。タイトルを獲ったことがないシーズンがたった一度 しかないんだから。森保さんや健太さんが、次に目指しているのはやっぱりアジア制覇だと思う。日本代表にも求めていることだけど、アジアの勢力図において 日本のクラブがつねにトップにいてほしいから。

サンフレッチェは、来週から開催国枠で出場するクラブワールドカップに出場するけれど、来シーズン以降はずっと日本のクラブがアジアの代表枠を独占してほしい。いまからアジアチャンピオンズ・リーグでの彼らの戦いぶりを楽しみにしている。

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