G大阪FW坂本一彩 大黒将志氏の薫陶を受け、「ひらめき」も備える新時代のストライカー

【スポニチ蹴球部コラム Footひと息】今、G大阪の坂本一彩(いさ)に注目している。20歳のFW。G大阪ユース在籍時には元日本代表FW大黒将志(当時ストライカーコーチ、現JFL枚方コーチ)の指導を受けたストライカーだ。

4月20日の浦和戦ではワントラップ目で自らシュートコースをつくり相手GK西川周作の牙城を突破した。続く同28日の鹿島戦ではゴール前で右足シュートを警戒してコースを切ってきた相手DF植田直通との駆け引きに勝ち、左足で流し込んだ。どれも大黒将志氏の現役時代のようなゴールで、点取り屋としての嗅覚がさえ渡る。かと思えば、同14日の鳥栖戦では鋭い反転からのスルーパスで相手DFの退場を誘発。高い技術を披露すると、5月11日の名古屋戦では若かりし頃のMF香川真司(C大阪)を見ているかのようなステップワークで相手DFの厳しいマークをかわした。

坂本を見るたびに思う。この選手は一体、どれだけの引き出しがあるのだろうか、と。取材するたびに感じる。これだけ感覚の鋭い選手が明確な理論を持てば、どこまで高く飛ぶのだろうか、と。

大黒は試合前には相手DFを徹底的に研究していた。言語化もうまかった。それゆえに何年たっても自らの得点シチュエーションを明確に覚えていた。なぜ、あの時あのプレーを選択したのか。なぜ、あそこにポジションを取ったのか――。それを説明でき、再現性も持っていた。日本代表でも活躍した遠藤保仁(G大阪コーチ)や本田圭佑もそうだったが、一流選手は再現性の高さと言語化の能力がすこぶる高い。その点、坂本はレジェンドたちとは一線を画す。

もちろん、大黒からゴール前での緩急の使い分けを学んだように、頭で理解し、体に染みこませたものもある。だが鹿島戦は「ボールが来ている最中に“こうした方がいいかな”というひらめき」で難易度の高いシュートを決めた。絶妙なタイミングでエリア内でフリーになり、MF岸本武流の決勝点につながるシュートを放った名古屋戦では「自分でも分からないけど、“この辺にいたら良いかな”と思った。僕は考えすぎると良くない。ある程度、感覚です」。天才かよ…。

パリ五輪世代。U―23アジア杯で優勝して五輪切符を獲得した同世代へのリスペクトから「あまり(五輪は)考えないようにしている」という。だが試合をこなすたびに成長の跡を示す坂本の潜在能力は底知れない。個人的には、パリの舞台で見てみたい選手の一人だ。 (飯間 健)

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