Jリーグ2・3月のベストイレブンを独自選考 「もっともインパクトがある」活躍をした選手たち
スポルティーバJ1月間ベストイレブン
2024シーズンのJリーグ月間ベストイレブンを識者が選考する。今回はスポーツライターの篠幸彦氏に2・3月の11人を挙げてもらった。開幕5試合のシーズンスタートで印象的な活躍を見せた選手は誰か。
【画像一覧】Jリーグ30年のベストイレブン フォーメーション 識者10人が選考
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FW/宇佐美貴史(G大阪)、荒木遼太郎(FC東京) MF/平河悠(町田)、宮代大聖(神戸)、柴戸海(町田)、武藤嘉紀(神戸) DF/登里享平(C大阪)、荒木隼人(広島)、ドレシェヴィッチ(町田)、塩谷司(広島) GK/大迫敬介(広島)
【対人の強さで目立ったDF】
第2節の時点で、開幕から連勝したチームなしという、例年と比べてより拮抗したスタートとなった今シーズン。5節を終えて徐々にチーム状況が見えてきたなかで、上位クラブを中心に印象的なプレーを見せた11人を選出した。
ゴールキーパーは、首位のFC町田ゼルビアの谷晃生とサンフレッチェ広島の大迫敬介が、甲乙つけ難い高パフォーマンスを披露。ふたりを比較してよりチームを救うプレーが多く、ここまでリーグ最少失点の大迫を選出した。第4節、アウェーのヴィッセル神戸戦で武藤嘉紀の決定機を防いだセービングは、王者から勝ち点1を奪うビッグセーブだった。
センターバックは神戸の山川哲史、鹿島アントラーズの植田直通、広島の佐々木翔らも候補にしたなかで、町田のドレシェヴィッチ、広島の荒木隼人を選んだ。ドレシェヴィッチは新加入ながら、すでに町田の堅守の要として欠かせない。対人守備が強く、ボール保持も堅実で、フィードの精度も高い。攻守に安定感をもたらしている。
広島の3バック+GKは今季も強固。その中心で構える荒木は、チアゴ・サンタナ(浦和レッズ)、ディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)、大迫勇也(神戸)らストライカーたちに仕事をさせない対人の強さを示した。塩谷司も右サイドを突破させない守備は堅牢で、第3節のサガン鳥栖戦では得意のミドルシュートで先制点を決め、攻撃でも貢献した。
セレッソ大阪に今季加入した登里享平は、左の”偽サイドバック”として存在感を示している。新加入にしてビルドアップでの立ち位置と精度、逆サイドの毎熊晟矢とのバランス感覚、セカンドラインを突破してからの攻撃のサポートは見事。一朝一夕でできるものではなく、能力、経験値の高さゆえに成せる業だ。C大阪に新しいオプションをもたらした。
【新天地で傑出したパフォーマンス】
中盤の中央は町田の仙頭啓矢やC大阪の香川真司、田中駿汰、奥埜博亮、浦和のサミュエル・グスタフソン、広島の川村拓夢ら、ほかにも候補が多数いるなかで、町田の柴戸海、神戸の宮代大聖を選出。
柴戸は浦和で燻っていたなか、今季町田に加入。持ち前の守備能力と運動量が町田のスタイルにマッチし、ここまで傑出したパフォーマンスを見せている。対面する相手をことごとく潰してカウンターの起点となり、サイドのカバーリングも抜群。町田の中盤ラインの守備強度を一段上げている。
宮代も今季神戸に加入し、第3節のFC東京戦からインサイドハーフで先発の定位置をつかむと、先発3試合で3得点。ここまでチーム最多得点を記録して躍動している。
守備でのハードワークだけではなく、大迫のサポート、広瀬陸斗とのコンビネーションから斜めに流れて左サイドで起点作り、2列目から飛び出してのフィニッシュワークなど、攻撃で多くの役割をこなしている。
第5節の北海道コンサドーレ札幌戦での2点目となる突破からの得点は鮮やかで、大迫と武藤嘉紀に次ぐ”第三の矢”となるポテンシャルを示している。
町田の平河悠は、ここまでで最もインパクトのあったウインガーだ。長い距離を運び、サイドを突破できるドリブルとスピードは大きな武器で、平河の突破から町田は多くのチャンスを作っている。
また、守備においても貢献度は非常に高い。チームと連動したプレッシング、決してサボらないプレスバックの強度は、サイドに追い込む町田の守備スタイルで欠かせないものだ。
第5節の鳥栖戦では、ロングスローからのワンタッチでの折り返し、自らのインターセプトからのカウンター、右サイドからの高速クロスと異なるパターンでの3アシストと圧巻だった。
神戸の武藤は今季もフィジカルとスピードは健在で、前線で優位を取れる個の質によって存在感がある。上位対決となった第4節・広島戦では随所に持ち味を発揮。札幌戦では冷静さと決定力を見せて2得点を記録した。
【高い集中力と決定力を見せたFW】
FWは神戸の大迫、町田のオ・セフン、広島の大橋祐紀も候補に挙げ、5得点でランキング首位のジュビロ磐田のジャーメイン良は最後まで入れるかどうか悩んだが、より継続してインパクトを与えたG大阪の宇佐美貴史とFC東京の荒木遼太郎のふたりを選出した。
G大阪の宇佐美はクラブタイ記録となる開幕から3試合連続得点。記録更新となる4試合連続とはならなかったが、序盤の主役のひとりとなった。とりわけ開幕の町田戦で魅せた直接FKは、クラブのレジェンドである遠藤保仁を彷彿とさせる見事なゴールだった。
FC東京に今季加入した荒木は、チームは15位と振るわないものの、個人では4得点を挙げてランキング2位につける奮闘ぶりだ。開幕のC大阪戦で2ゴールのインパクトを残すと、第2節では広島の堅守をこじ開けて2試合連続得点を記録。ボックス内での高い集中力と決定力を見せつけた。
第4節のアビスパ福岡戦では1トップに入り、”偽9番”の新境地にチャレンジ。遠藤渓太の抜け出しから荒木がダイレクトで決めた得点は、あまりに鮮やかだった。パリ五輪イヤーで再起を図った期限付き移籍を見事成功させ、2年ぶりにU-23日本代表にも返り咲いた。