J1全20クラブ補強評価ランキング1位~10位。大型補強に成功!? 期待感高まるクラブは…
明治安田Jリーグは2月23日に開幕を迎える。これまでより2チーム多い20チームで争われる今季は、例年よりも熾烈な戦いが繰り広げられるだろう。そんなシーズンを前に、J1全20クラブの補強を精査し、昨季との比較からパワーアップしたクラブをランキング形式で紹介する。※情報は1月29日時点
10位:サンフレッチェ広島
ミヒャエル・スキッベ監督が指揮を執るこの2シーズンはいずれも3位。就任3年目の今季は是が非でもリーグタイトルを手にしたいはずだ。新戦力は期限付き移籍からの復帰を含めたわずか5人だが、既存戦力の充実度の高さを感じることもできる。
昨季の主力メンバーの退団はゼロと言っていいだろう。昨季日本人最多タイの13得点を挙げた大橋祐紀を湘南ベルマーレから獲得し、同じポジションのナッシム・ベン・カリファを放出した。佐々木翔、塩谷司、荒木隼人の3バックは不動で、直近3シーズンでリーグ戦の出場が15試合だった住吉ジェラニレショーンが清水エスパルスに期限付き移籍するとともに、1歳年下のイヨハ理ヘンリーが期限付き移籍から復帰。J2でリーグ戦40試合に出場した小原基樹も今季から広島でプレーすることになる。
法政大学から加入した細谷航平はユース出身で、左足から放たれるキックの精度が魅力。若手が次々と台頭するこのチームにおいては、1年目から活躍のチャンスがあるかもしれない。補強への評価は低いが、現有戦力の充実という意味では十分。満田誠や川村拓夢といった若き大黒柱がシーズンを通して活躍することができれば、タイトルが手に届く位置に見えてくるはずだ。
9位:横浜F・マリノス
Jリーグ連覇こそ逃したが、最後まで優勝を争った昨季の横浜F・マリノスは、ケヴィン・マスカット監督に別れを告げて、ハリー・キューウェル監督を迎え入れた。多少の変更はあるものの、攻撃的なスタイルに変更はない。その意志は移籍市場の動きからも読み取ることができた。
最大の注目は負傷者が続出した最終ライン。角田涼太朗が抜けた一方で、特別指定選手として昨季からプレーしている吉田真那斗に加えて、渡邊泰基、加藤蓮、山村和也の3人を獲得している。渡邊は角田と同じ左利きのセンターバックで、サイドバックとしてもプレーできる。加藤は左サイドバックを主戦場としつつ、両サイドならどの位置でもプレーできるサイドのスペシャリスト。山村はJ1での実績十分のDFで、畠中槙之輔や永戸勝也ら長期離脱中の選手が多い最終ラインを支える頼もしい存在になりそうだ。
中盤はほとんど顔ぶれが変わらないが、天野純が復帰したことで層の厚みが出た。中盤の陣形が変わると予想されるが、渡辺皓太、喜田拓也、山根陸、西村拓真、ナム・テヒら特徴を持った選手たちが3つの枠を争うことになりそうだ。前線も主力は残留しており、編成に問題はないだろう。
もう1つの注目ポイントは最後方を預かるGK。幾度となくピンチを救い、攻撃の起点にもなった一森純が保有元のガンバ大阪に復帰し、FC町田ゼルビアをJ1昇格に導いたポープ・ウィリアムを獲得した。ベテランの飯倉大樹も控えるが、ポープのパフォーマンスが成績に直結する可能性はある。
8位:ガンバ大阪
昨季のガンバ大阪は低空飛行の序盤戦から8戦無敗と急浮上した中盤戦を経て、後半戦で急降下した。結果が求められるダニエル・ポヤトス政権2年目の今季に向け、ガンバは大型補強に踏み切った。総勢13人の新加入選手を迎え入れ、20チームとなったJ1リーグで上位を目指す。
なかなか固定できなかった最終ラインには、中谷進之介という軸になり得るセンターバックを獲得し、同じく新加入の坂圭祐と既存戦力の三浦弦太、クォン・ギョンウォン、福岡将太らとポジションを争うことになる。サイドバックにもベテランの松田陸と若い中野伸哉を加えてレベルアップしている。
ポヤトス政権で評価を高めた山本悠樹の退団は痛手だが、鈴木徳真は徳島時代にポヤトスの指導を受けた経験があり、フィットにはそこまで時間がかからないだろう。山田康太と山下諒也は昨季のガンバに足りなかったアタッキングサードのクオリティを高めてくれるポテンシャルを持っている。
東口順昭が昨年末に右膝内側半月板損傷による手術を受けたが、昨季横浜F・マリノスで主力を担った一森純が復帰しており、大きく戦力が落ちることはないだろう。昨季の陣容は帯に短し襷に長しという感が否めなかったが、今季はその課題を埋められる新戦力が集まった。相対的に見ても期待感が持てる補強と言えるが、それを順位に反映させることはできるのだろうか。
7位:川崎フロンターレ
最も影響が大きいのは山根視来の退団だろう。在籍4年間で公式戦172試合に出場した右サイドバックは、米国に活躍の場を求めた。ほとんど怪我をしないタフな右サイドバックの代わりは、ファン・ウェルメスケルケン際になりそうだ。エールディビジでの経験豊富な29歳だが、Jリーグは初挑戦。前任者の貢献度が高かったため、求められるレベルは必然的に高くなる。
最終ラインではバイプレーヤーの山村和也が抜け、ベテランの丸山祐市を獲得してその穴を埋める。生え抜きの登里享平の代わりには日本代表にも選出された三浦颯太を獲得。ジョアン・シミッチが抜けた中盤にはゼ・ヒカルドを獲得し、19歳のパトリッキ・ヴェロンも将来的に大化けする可能性があるだろう。そして、山本悠樹はガンバ大阪でダニエル・ポヤトス監督の下で飛躍したボランチで、川崎フロンターレで活躍する姿を想像することは決して難しくない。
FWを見ると、レアンドロ・ダミアンと宮代大聖の退団が大きい。2年目の山田新への期待も高まるが、新加入のエリソン、期限付き移籍から復帰する宮城天、静岡学園から加入する神田奏真とそれぞれ個性の違うFWが加わる。
昨季の川崎はシーズンを通して優勝争いに加わることができず、8位は2012シーズン以来だった。鬼木達監督の下で迎える8年目のシーズンも、ここ数年と同じく主力が抜け、新たな血を入れることとなる。経験豊富な両サイドバックの退団はマイナスだが、新たにやってきたブラジル人が活躍すれば戦力的には大きなプラスになる。
6位:FC町田ゼルビア
圧倒的な強さでJ2を制したFC町田ゼルビアは、期限付き移籍からの復帰も含めて19人の新戦力を迎えて2024シーズンに臨む。
昨季の正GKポープ・ウィリアムは横浜F・マリノスに移籍したが、東京五輪でU-24日本代表の正GKを務めた谷晃生を期限付き移籍で、水戸ホーリーホックの正GKだった山口瑠伊を完全移籍で獲得し、レベルアップに成功した。さらに、昌子源の獲得は最終ラインのクオリティを1段階上げてくれるはずだ。
中盤にはJ1での経験豊富な仙頭啓矢と柴戸海が加わり、昨季期限付き移籍で在籍した荒木駿太は今季から完全移籍することに。左サイドバックの翁長聖は東京ヴェルディに移籍したが、横浜FCから林幸多郎を獲得。藤原優大と松井蓮之はそれぞれ保有元に復帰することになったが、新加入選手との差し引きで考えれば戦力アップに成功したと言えるだろう。
評価を左右するのは韓国人コンビだろうか。FCソウルから加入したナ・サンホは2020シーズンまでFC東京に在籍した元韓国代表で、再び東京の地を踏むことに。また、清水エスパルスから期限付き移籍で加入するオ・セフンも昨季は怪我に泣かされたが、トップフォームを取り戻すことができれば十分に戦力になるはずだ。
GKからFWまで各ポジションに経験豊富、または将来有望な選手を獲得し、パワーアップに成功した。大きな期待感を抱いてJ1初年度に臨む。
5位:FC東京
クラブ創設から四半世紀が経ち、エンブレムを一新して2024シーズンに臨むFC東京。ピーター・クラモフスキー監督が引き続き指揮を執る今季は、クラブと同様にさらなる成長が期待される選手を迎え入れた。
攻撃陣には個性豊かな面々が加わった。昨季リーグ戦29試合に出場した渡邉凌磨が抜けたが、サイドからの打開力に定評のある遠藤渓太、新司令塔候補の荒木遼太郎、フィニッシャーとして期待される小柏剛が加入。左膝半月板損傷から復帰を目指す山下敬大もディエゴ・オリヴェイラが君臨するストライカーのポジションに控える。
中盤には期限付き移籍から復帰した品田愛斗と、アルビレックス新潟から加入した高宇洋が加わった。松木玖生、小泉慶、東慶悟、原川力ら既存の戦力も残留しており、激しいポジション争いが繰り広げられそうだ。
不安があるとすれば最終ラインだろうか。長友佑都や在籍15年目の森重真人はまだまだ活躍してくれるだろうが、彼らを追いやるだけの存在が欲しいところ。明治大学から加入する岡哲平やアルベル元監督がそのポテンシャルを高く評価した東廉太は可能性を感じさせるが、クラモフスキー監督は昨季11位に沈んだクラブを浮上させることができるのだろうか。
4位:セレッソ大阪
新戦力は期限付き移籍から復帰した山田寛人を含めた7人だが、そのほとんどが主力級の活躍が期待される。昨季は終盤に失速して9位という成績に終わったが、新戦力がチームにフィットすれば2022シーズンの5位を上回る成績を残すこともできるだろう。
マテイ・ヨニッチ、鈴木徳真、山中亮輔がチームを去った。センターバックには鳥海晃司と進藤亮佑がおり、昨季後半戦は舩木翔が左サイドバックのファーストチョイスだったため、そこまで大きな穴にはならないだろう。左サイドバックには登里享平という頼もしいベテランが加わり、右サイドバックの奥田勇斗は1年目からポジション奪取を狙える存在で、大学の先輩でもある毎熊晟矢に挑戦状をたたきつける。
北海道コンサドーレ札幌時代に右センターバックでプレーしていた田中駿汰は、中盤での起用が予想される。田中が中盤の底に入れば、香川真司もより高い位置で力を発揮できるようになり、新戦力のルーカス・フェルナンデスを含めた打開力のあるウイング陣の魅力も活かされるだろう。浦和レッズではなかなか出番を与えられなかった平野祐一も、環境を変えれば力を発揮できるかもしれない。
やや手薄だったポジションを中心に、選手層の厚みと競争のレベルアップをもたらす補強が施された。小菊昭雄監督の下で迎える4年目のシーズンは、明確な結果を残すための準備が整ったのではないだろうか。
3位:ヴィッセル神戸
念願だったJリーグタイトルを手にしたヴィッセル神戸は、シーズン後半から組み込まれるAFCチャンピオンズリーグも見据えながらJリーグ連覇を目指すことになる。昨季の中心メンバーを残しつつ、長いシーズンを切り抜けるために選手層の厚みを出している。
齊藤未月は今季から完全移籍となり、複数年契約を結んだが、昨年8月に負った怪我からの復帰は秋以降になるだろう。その意味で山口蛍とともに中盤を支える井手口陽介の加入は心強い。V・ファーレン長崎から加入した鍬先祐弥、徳島ヴォルティスへの期限付き移籍から復帰した櫻井辰徳も、長いシーズンを戦ううえでは貴重な戦力となるはずだ。
昨季8得点の宮代大聖は、1トップでもウイングでもプレーすることができ、大迫勇也と武藤嘉紀の代わりになれるだけのクオリティを発揮してくれるだろう。手薄な最終ラインには広瀬陸斗と岩波拓也が加わり、レベルを下げずにローテーションすることも可能になった。GK陣は前川黛也を残して一新され、ベテランの新井章太、筑波大学から加入した高山汐生、そして前川のポジションを脅かす可能性のあるオビ・パウエル・オビンナというバランスの取れた構成となった。
昨季のリーグ優勝メンバーが残ったこともあり、戦力アップの幅はさほど大きくはない。ただ、補強の的確さという意味ではかなり高評価と言えるのではないだろうか。
2位:名古屋グランパス
長谷川健太監督にとって3年目は鬼門になっている。清水エスパルスでは3年目以降も上位にチームを導いたが、ガンバ大阪では2年目に優勝して3年目は4位、FC東京では2年目に最終節まで優勝を争ったが、3年目は6位に後退している。名古屋グランパスで3年目のシーズンとなる今季は、大きく刷新されたチームを率いることになった。
最終ラインは大きく様変わりした。堅守を支えてきた中谷進之介、藤井陽也、丸山祐市の3人が一気に退団。三國ケネディエブスと井上詩音、そしてKリーグ屈指の実績を持つハ・チャンレを獲得。いずれも名古屋の最終ラインに求められる強さを武器にするセンターバックだが、前任者のJリーグ屈指のクオリティを見せていただけに評価は難しいところだ。
中盤は稲垣祥と米本拓司というベテランが残留し、サイドでもプレーできる内田卓哉が完全移籍に切り替わる形で残留した上で、椎橋慧也も加わり選手層に厚みが増した。人材難だったサイドには期限付き移籍から復帰した成瀬竣平に加え、中山克広、小野雅史、山中亮輔を迎え入れた。推進力、クロスの精度など、それぞれの特徴を発揮できれば攻撃力はアップするはずだ。
前線に目を向けると、やはりキャスパー・ユンカーの残留は大きい。途中出場から流れを変えられるパトリックの獲得は、昨季の課題だった試合終盤の得点力アップに貢献するだろう。さらに、山岸祐也とユンカーの2トップは、Jリーグ屈指のクオリティを見せるかもしれない。刷新された最終ラインは実績という点でやや不安を感じさせるが、それ以外のポジションは全体的にパワーアップしている。
1位:浦和レッズ
今季の浦和レッズへの期待はかなり高いだろう。いかんせん、リーグ戦と国内カップ戦に加え、AFCチャンピオンズリーグ、FIFAクラブワールドカップにも参戦して合計60試合を戦った昨季は過密日程という問題が最後まで頭を悩ませていた。ただ、今季参加するのはJ1リーグとYBCルヴァンカップのみ。大会の数は少なくなるが、タイトル獲得への期待はそれに反比例するように高い。
充実の戦力補強がその期待をさらに上げさせる。ホセ・カンテが抜けたが一昨季の得点王チアゴ・サンタナを獲得。松尾祐介、武田英寿の復帰と渡邊凌磨、前田直輝の加入により中盤から前の選択肢も増えた。さらに、ASローマからやってきた左利きのオル・ソルバッケンは今オフ最大の目玉だろう。最終ラインに加わる井上黎生人、佐藤瑶大、石原広教はいずれも伸びしろがあり、百戦錬磨のDF陣に何か起きたときのオプションとなるはずだ。
唯一の不安材料は、明本考浩と荻原拓也が同時に抜けた左サイドバックだろうか。在籍3年目の大畑歩夢、3季ぶりに復帰した宇賀神友弥、そして両サイドでプレーできる新加入の石原も選択肢には入る。頭数は揃うものの、前任者のクオリティを上回ることができるかは分からない。
前政権の[4-2-3-1]から新政権の[4-3-3]に変わることでポジションを変える選手もおり、新たな化学反応が生まれる可能性がある。そんな期待感の中でペア・マティアス・ヘグモ新監督率いる新生レッズの2024シーズンがスタートする。



