キャプテン森田晃樹の戦う姿に強く感銘。東京V内定の食野壮磨が目ざす「チームのために本気になれる選手」

J1昇格POで大きな刺激を受ける

インカレ準々決勝。関西王者である京都産業大は、九州王者の福岡大と対戦し、前半に2点のリードを奪ったが、後半開始早々に1人退場し、10人での戦いを強いられた。

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前線に高さとパワーのある選手を揃え、縦に速いサッカーで猛攻に出た福岡大に対し、京産大は身体を張った守備を見せる。後半アディショナルタイムに1点を返されたが、2-1で逃げ切り、準決勝進出を決めた。

「10人になって厳しい戦いになりましたが、関西のリーグ戦でも守備の時間が長い試合もあったので、あまりナーバスにならないで、ゴールキーパーの山本透衣(FC大阪内定)を中心に守り切れたと思います」

試合後、キャプテンであり、チームの攻撃の中枢を担うMF食野壮磨はこう試合を振り返った。前半は先手必勝とばかりに攻勢に出たチームにおいて、食野はトップ下の位置からボールを集約して、テンポの良いパス出しとラストパスを駆使してリズムメークし、2点のリードを奪うことに成功した。

後半は10人になったことで【4-2-3-1】から【4-4-1】に変更。飯野は左ボランチになったことで、「持ち場で穴を開けない、プラス攻撃に少しでも行けるようにボールを運んだり、時間を作ったりすることを意識しました」。

守備とボールを奪った後に必ずサポートに入ってパスを受け、ドリブルで前に運んだり、キープしてラインアップを促したりと、チームのために身体を張ったプレーを披露。苦しむチームの中でGK山本と共に、プロ内定選手としてチームを支え続けた。

「2年前に出場した時より、注目度、期待度も全然違いますね」

こう笑ったように、京産大は2021年度大会に関西第2代表で出場し、食野もレギュラーとしてプレーしたが、2回戦で関東第6代表の筑波大の前に0-3と完敗を喫した。

だが、今年は関西王者として出場し、自身を始め、5人のJ内定選手を揃える注目チームとして出場。簡単には負けられない強い思いがあった。

「関西王者としてのプライドもありますし、やっぱり僕はこのチームのために戦って、タイトルを取りたいと思っているんです。チームのために本気になれる選手がいないと、絶対に結果が出ないことを改めて教えてもらったので」

大会前、食野はJ1昇格プレーオフを通じて大きな刺激をもらっていた。来季から加入することになっている東京ヴェルディはJ2リーグで3位。準決勝でジェフユナイテッド千葉を下し、決勝まで勝ち進んだ。

そして清水エスパルスとの国立決戦。土壇場で追いついてのドロー決着でJ1昇格を決めた試合を、食野はテレビで見ていた。

画面から伝わってきたのは、選手たちの勝利に対する凄まじい執念だった。なかでもキャプテンの森田晃樹の姿には、心を揺さぶられるものがあった。

「全員から戦う姿勢がヒシヒシと伝わってきましたし、技術のある上手い選手たちが必死で戦ってこそ、望むべき結果を掴み取れるのだと教えてもらいました。

特に森田選手はずば抜けたテクニックとサッカーセンスに溢れた選手で、その選手があそこまで身体を張って守備をしたり、ボール際に競りに行くプレーを必死でやったりしているからこそ、周りの選手は信頼するし、触発されて戦う姿勢をさらに前面に出す。

最初にPKを与えてしまった後も、『森田選手のために取り返す』という雰囲気になりましたし、最後にPKを獲得できたのも、森田選手の勝ちたいという執念と信頼関係があったからこそだと思います」

兄・亮太郎との兄弟対決も楽しみ

試合後のインタビューで、涙を流しながら思いを口にする森田の姿を見て、食野は今の自分の姿と照らし合わせた。

「森田選手はヴェルディというクラブで育った選手なので、より特別な想いがあると思いますし、クラブにとっても特別な存在だと思います。僕は大卒選手としてヴェルディに入るからこそ、そういった生え抜きの選手たちと同じように、強い思いを持ってクラブのためにやらないと信頼されないし、試合にも出られないと思いました。

同時に僕にとって京産大は自分を育ててくれた大事なチームなので、このチームに対する思い入れはめちゃくちゃ強い。だからこそ、森田選手のように『このチームのために』と本気で思って、それをプレーに前面に出すのは当たり前のことだし、その想いは誰にも負けないと思います」

京産大のキャプテンとして大学最後の大会に臨む自分とチームへの素直な想い、そしてこの大会の後に待っているプロの世界でも同じ、いやそれ以上の熱量を持って、東京Vのためにやらないといけないという覚悟。

改めて自分が今、サッカーをしている意味と意義を見出すことができた。さらに来季、J1でプレーするということは、彼が尊敬している兄・亮太郎(G大阪)との兄弟対決も叶う可能性が生まれた。

「兄は僕がヴェルディに決まった時も、『ヴェルディは調子が良いし、凄いやん。おめでとう』と本当に喜んでくれました。目ざしている存在だからこそ、J1での対決はすごく嬉しいし、モチベーションになります。ただ、そのためには僕がより頑張らないと実現できないと思うので、もう『やるしかない』ですね」

頑張る理由がたくさんある。インカレにおいてベスト4に関東勢以外で唯一残ったチームという事実も、食野が頑張らなければならない理由の1つだ。

「明治大、筑波大、流通経済大、そして僕ら。周りから見れば僕らは圧倒的に1つだけ『ん??』というチームだと思うのですが、そこで新たな歴史を作って、この先の京産大のさらなる発展に繋げるためにも、僕たちは目の前の相手に全力で臨んで倒すのみです」

次なる相手は流通経済大。会場は相手のホームでもある流通経済大学龍ヶ崎フィールド。圧倒的アウェーだからこそ、より燃えるものがある。「最高のシチュエーションだと思います」と、多くの刺激を胸に大学最後の冬を全力で駆け抜ける。その先の新たな景色で躍動する自分を楽しみにしながら。

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