「ゴール裏を青黒に埋めてほしい。僕だけでなく05年のメンバーのためにも」。橋本英郎、引退試合に向けて

J1優勝、何よりも嬉しかった瞬間

――2022シーズン限りで引退されました。2019年に鎖骨を骨折され、以降不調に苦しまれたそうですね。

2021年9月に鎖骨にプレートを入れたんですけど、そのプレートが首の神経を圧迫してしまって腕にしびれが出てしまったんですよ。それで背中や全体の動きが悪くなって、日常生活もちょっとしんどい状態でした。

――43歳で引退されましたが、何歳ぐらいまで続けたという目標は持っておられたのでしょうか?

プロになった時は「Jリーガーとしてまずは1試合。子供にプロとして試合に出たよと言えるように」がスタートでした。1試合出た後は、27歳までできたらいいなと思ってやってきました。

プロ1年目の出場はゼロなんです。2年目は4試合、3年目も5試合。時間は過ごしているんですが、試合に出ている時間は多くはなくて。30代後半になってからはより顕著になってきました。2018年の東京ヴェルディでは、リーグ戦2試合、あと天皇杯で終わりっていうような。 プロ選手として生活はしているけど、試合に絡んでいない期間は25年のうち10年弱はあったという感覚があります。32歳の時に前十字靭帯を損傷して8か月プレーができませんでした。そういった記憶から消したい時間もあるので、そういうものも重なっているからかもしれないです。

――数え切れない出来事があったかと思います。その中で最高の思い出と試合を教えてください。

2005年のJ1最終節、(川崎)フロンターレ戦ですね。G大阪が初優勝したシーズンです。残り1節で首位のセレッソ大阪との勝ち点差が「1」、優勝は他力しかなかった。川崎Fにガンバは勝っていたんですが、後半残り5分ぐらいに急にスタンド、ベンチが騒ぎ出し「このままでいいぞ」となって。後半の最後の最後で(C大阪と戦っていたFC東京の)今野(泰幸)選手がCKから点を取ったんです。それでC大阪は同点(2-2)に追いつかれて川崎Fに勝っていた僕らに優勝の目が出たという試合です。リーグ戦は1年間戦った成果なので、カップ戦の優勝とは違う感覚があります。その最後の締めくくりの試合で優勝を決められた。一番印象に残っている最高の瞬間でした。

――逆に一番辛かったことは?

2011年、2月のグアムキャンプで前十字靭帯を切ったことですね。その年はACLもあって、どちらも成果を出していかなくては というタイミングでのケガでした。(全治を考えると)シーズンが始まる前にシーズンが終わる、その感覚は尋常じゃなかったです。32歳になる年でしたし、「この後、本当にプレーできるんだろうか」「再断裂しないだろうか」といった怖さもありました。

シーズン終わりに近い10月に復帰しましたが、その年に出た試合はリーグ戦は4試合、それと天皇杯とカップ戦(当時ナビスコカップ)、G大阪20周年記念試合にちょっとでしたね。そのシーズン限りでガンバを離れることになりました。ケガでほとんどプレーできず、そのままチームを離れるという流れだったので、辛い経験でした。

――今度の引退試合は、それ以来のG大阪での試合になりますね。

その頃のホームは万博記念競技場だったので、パナスタは初めてなんですが、G大阪というクラブに引退試合をやってもらえることが本当に嬉しいですね。中1(ジュニアユース)から6年間、トップでは14年間、 トータル20年間クラブにいましたから。

話は脱線しますが、今季限りで藤春廣輝選手の契約満了が発表されて、最終節で試合にも出場し、サポーターと別れの時間を過ごしましたよね。あのシーンはすごく良かった。あれだけのサポーターが涙を流していて僕は本当に感動しました。選手とファン・サポーターにとって、お別れの時間があったことはとても良かったと思います。

「遠藤保仁」にずっと学ばせてもらった

もう一度あの青黒の応援を体験したい

――橋本さんにとってのG大阪とは?

他のメディアでも言っているのですが、「サッカー小僧からサッカー選手に変えてくれたクラブ」だと認識しています。プロとしての戦い方、考え方、戦術面での理解をジュニアユースの時に教えてもらって。それがあったことでプロとしても戦ってこられました。G大阪の中での競争もあり、そこで戦うことで自分が成長できて、日本代表にも行けました。本当に自分を育ててくれたかけがえのないクラブだと思っています。

――引退試合で 「ガンバ大阪’05」を指揮する西野監督は橋本さんにとってどんな存在ですか。

西野さんが来てから僕は試合に出られるようになりました。 重宝していただいたわけではないかもしれないですけど、チャンスを与えてくださった監督です。ライバルの補強もあり、僕はずっと危機感を覚えることで、成長させてもらえました。その結果、日本代表の扉も開きました。恩師の一人ですね。

――「日本代表フレンズ」を指揮する岡田武史監督は?

高校(四天王寺高)の先輩で隣の中学の先輩です(笑)。高校でも岡田さんは有名人でした。Jリーグの監督としての最初はコンサドーレ札幌でしたが、「後輩です」と初めて挨拶させていただきました。代表監督としては、代表の厳しさや求められる基準を明確に示していただきました。最終的には「僕をワールドカップに連れていってくれなかった監督」です。自分の足らないところを忖度なく指摘してくれる存在でした。今治にも 呼んでいただいて、そして、戦力外を宣告してくれたかた。両面を、プロの世界の厳しさをしっかり教えてくださった存在です。

――引退試合は再び二人の下でプレーされます。試合を通じて伝えたいことを教えてください。

サッカーへの感謝を伝える日ですね。今回集まってもらうメンバーにも見に来ていただいた方にも楽しんでいただければ。あと、ガンバのサポーターの皆さんにホームゴール裏を埋めていただきたいという希望があるんです。2005年のメンバーの応援を、チャントを歌ってもらえたらすごく嬉しいです。

代表フレンズのゴール裏は、僕がセレッソやヴィッセル(神戸)、(東京)ヴェルディも含めて所属した6クラブのサポーターの方々に来ていただけたら。ヨシト(大久保嘉人)や、セレッソに所属した玉田圭司さん、乾貴士選手も来ます。

何度もいいますが、ガンバのゴール裏が青黒で染まってほしい。僕が別チームで経験した話で恐縮ですが、鈴木啓太さんの引退試合に参加した時にレッズのゴール裏がすごかったんですよ。そういったいった応援をもう1回、僕だけでなく05年のメンバーにも体験してもらいたい気持ちが本当にあるんです。もちろん、引退試合だから楽しんで見てもらうのも一つですが、可能ならそういうゴール裏を僕らに体験させてもらえると本当に嬉しいです。

「やっぱりガンバのサポーターってすごいんだな」っていうことを、浦和に負けないガンバならではのサポートを体感したいという思いがめちゃくちゃあるんです。それが実現できたら本当に嬉しいなと思っています。

■開催日時

12月16日(土)14:00キックオフ(予定)

■対戦カード

ガンバ大阪’05 vs 日本代表フレンズ

■開催場所

パナソニック スタジアム吹田

■試合出場メンバー(敬称略)

【ガンバ大阪‘05】 監督 西野 朗 選手 橋本英郎、松代直樹、シジクレイ、入江徹、實好礼忠、宮本恒靖、山口智、遠藤保仁、フェルナンジーニョ、アラウージョ、二川孝広、松波正信、森岡茂、渡辺光輝、大黒将志、児玉新、吉原宏太、中山悟志、寺田紳一、三木良太、藤ヶ谷陽介、日野優、松下年宏、小暮直樹、前田雅文、松岡康暢、青木良太、木村敦志、岡本竜之介

【日本代表フレンズ】 監督 岡田 武史 選手 橋本英郎、中田浩二、中澤佑二、坪井慶介、駒野友一、内田篤人、安田理大、佐藤寿人、加地亮、鈴木啓太、播戸竜ニ、稲本潤一、今野泰幸、玉田圭司、大久保嘉人、石川直宏、中村憲剛、楢﨑正剛、松井大輔、乾貴士、山瀬功治、髙木和道

https://www.goal.com/jp

Share Button