今季J1で最も「がっかり」させたクラブは?識者がワースト3を独自選定!”人が足りなかった”川崎、人件費に見合わなかった柏、G大阪に厳しい見解
神戸の初優勝で幕を閉じた今季のJ1リーグ。サポーターに歓喜を届けられたクラブもあれば、逆に失望を買ってしまったクラブもあるだろう。ここでは、後者にスポットを当て、今季のJ1で「がっかり」させてしまったクラブのワースト3をサッカーライターの清水英斗氏に選出してもらった。
◆1位:川崎
2017~18年にリーグ初優勝&2連覇を果たし、2019年は4位に沈むも、2020~21年は再びリーグ2連覇。2022年も横浜としのぎを削りつつ、2位につけた。
『2強時代』を強く印象付けた近年の傾向から見るに、川崎の8位フィニッシュは物足りない。シーズン後半の9月以降は、公式戦11勝2分け2敗と盛り返したが、一時は15位まで落ちた序盤の低迷が尾を引いた。
川崎はシンプルに人が足りなかった。センターバックの柱でもある谷口彰悟は海外移籍し、もう一人のジェジエウは第3節で負傷して長期離脱。代役を務める車屋紳太郎も負傷がちで、ディフェンス陣は人材が不足した。
代役として柏から獲得した大南拓磨はタフに出場を続けたが、後方からのビルドアップは不安定。自慢の攻撃力に陰りが出た。一方、U-20日本代表の高井幸大はアグレッシブに縦パスを入れる能力があったが、逆に守備の判断がリスキーで、失点を招くミスを冒しがちで、安定した出場機会は得られなかった。
もう一つ、人材難に苦しんだのはセンターフォワードだ。怪我で出遅れたレアンドロ・ダミアンだが、復帰後の6月にも再び負傷するなど、エースFWを欠いた。代わって出場した宮代大聖は2トップ型のFWであり、レアンドロ・ダミアンの代わりは務まらない。後方からのビルドアップが不安定で、かつ前線でのロングボールの収まりも今ひとつなら、攻撃がスケールダウンするのは当然だった。
また、人が足りなくなるのは試合中も同様だ。
かつては年間のリーグ戦で一発退場は一回ほど、二回でも多いと感じる程度だったが、VAR導入以後、どのクラブも明らかに退場数が増えている。その中でも川崎は顕著だ。
2022年は札幌が4回退場で最多、川崎も3回退場と多かったが、2023年は札幌が2回に数を減らしたのに対し、川崎は6回に増加。イエローカード2枚の退場を含めると、川崎は年間で7回もの退場者を出してしまった。リーグ戦で5試合に1回、退場している計算だ。これではまともに戦えない。
決定的得点機会の阻止(DOGSO)に加え、足の裏を見せた危険なタックルで退場するケースが多く、その数はシーズンを通して増え続けた。来季はこの傾向を修正したいところだ。
もっとも、”がっかりさせたクラブ”には選んだものの、今季はまだ終わっていない。川崎にはあと1試合、柏との天皇杯決勝が残っている。
リーグ戦で低迷した強豪クラブが、シーズン最後の国内カップ戦を獲り、ファンの溜飲を下げるのは欧州サッカーでもよくある話だ。終わり良ければ良し、と出来るか。
◆2位:柏
昨季の7位から一気に転落。J1最上位の一つに数えられるチーム人件費を投じながらも、17位に終わった。今季は降格が1クラブの特別なシーズンであるため、難を逃れたが、例年なら降格レベルの成績だ。
細谷真大、マテウス・サヴィオをはじめ、攻撃陣は粒ぞろい。それでもこれほどの低迷を経験したのは、開幕前から指摘されたように、大南拓磨、高橋祐治、上島拓巳が移籍して弱体化した守備陣の問題が大きかった。
ハイプレス、ミドルプレスを持ち味とするネルシーニョ監督のチームだけに、後方でセンターバックが広いスペースをカバー出来なければ、アグレッシブな守備戦術が生きない。シーズン序盤で退任となったネルシーニョだが、クラブから充分な補強を受けたとは言えなかった。
シーズン中に浦和から獲得した犬飼智也が加わってからは、徐々に状況が変わったが、来季はこのような補強不足は避けたいところだ。
◆3位:G大阪
2021年は13位、2022年は15位と辛うじて残留。そして、今季は16位で残留。この3年間はずっと下位に低迷してきた現実を踏まえれば、驚きではない。とはいえ、G大阪にかけられる期待の大きさ、投じたチーム人件費の額を考えれば、16位はあまりに寂しい結果だ。
昨季は片野坂知宏、今季はダニエル・ポヤトスと、Jの他クラブで結果を残した指揮官を招聘したものの、2年連続で低迷した。6~7月辺りは好調に転じた時期もあったが、その後ジリジリと調子を落とし、終盤は公式戦12試合勝ちなし。改革を目指すはずのチームに活気が感じられず、週末は楽しいものではなかった。
G大阪はこのまま古豪になってしまうのか。来季続投するポヤトス監督の下、チームには変わる活力が必要だ。