【ガンバ大阪】チームを去る藤春廣輝が残した言葉「個々でいえば素晴らしい選手がいっぱいそろっている。もったいない」 シーズン最終戦も無得点で敗戦…来季への光は見えたのか
Jリーグ、シーズン最終戦。サポーターや選手たちは、期待の戦力や戦い方への手ごたえ、チームの強みの再認識といった来季に向けての光を見つけようとする。実際、ヴィッセル神戸は昨シーズンの残留争いの中、終盤戦でつかんだ戦い方をベースに今季の栄光にたどり着いた。
最終戦の相手はチャンピオンチーム シュートを放つも…
12月3日、そのヴィッセル神戸を迎えてのガンバ大阪の今シーズン最終戦。前半は、「優勝が決まって、正直ゆるみが出ていた」と吉田孝行監督が話した神戸に対して、攻守にペースを握る。35歳の倉田秋選手がハードワークでチームに勢いをもたらすと、20分、33分、41分ときわどいシュートを放った。しかし、フィニッシュの精度が低く得点に結びつかない。
すると後半、ひとりひとりの間隔を整理してプレー強度をあげてきた神戸がリズムを取り戻す。そして11分、ガンバが今シーズン取り組んできたビルドアップから攻撃につなげていこうとしたころでボールを奪うと、速攻から1点をもぎ取った。ガンバの選手間の距離がルーズになったところを見逃さなかったヴィッセル守備陣の集中力、即座に反応した攻撃陣、チャンピオンチームの勝負強さが光った。
それでも終盤、ガンバはサポーターの後押しを受けて反撃を試みる。ブロックを固め守りに入った神戸に対して、人数をかけ、リスクをおかして攻めに出る。後半40分には、今シーズン限りで契約満了による退団が決まっている藤春廣輝選手、塚元大選手を投入。絶え間なくピッチを上下動する藤春選手。塚本選手も果敢な仕掛けでヴィッセルゴールに迫った。しかし、個々のアイデアで何度かいい形は作るものの、チームとして崩しに行く形が見られない。無得点のままついにタイムアップ。自分たちのサッカーを信じて遂行し続けたチームと、どこか違和感を抱えながら戦い続けたチーム、両チームの状況を浮き彫りにする形で決着がついた。
「勝てなくてごめんなさい」強いガンバを知る藤春選手がサポーターに謝罪
結局、ガンバの今シーズンは、7連敗、16位で幕を閉じた。試合後、ガンバサポーターのもとへ藤春選手が挨拶に向かう。藤春選手がまず口にしたのは「勝てなくてごめんなさい」の言葉。強いガンバ、栄光のガンバを知るからこそ、名門チームの不甲斐ない現状、もどかしい思いが、選手として責任感のある言葉になって表れた。そんな藤春選手にサポーターからのチャント(藤春選手の応援歌)が鳴り響く。涙で声を詰まらせる藤春選手。しばらくの沈黙の後、熱い思いを打ち明けた。「(サポーター方々には)本当に感謝しかない。皆さんのことが大好きです」そして、「悪いときも良いときも、ガンバのことを応援し続けてください。僕もこれからは応援したいと思うので、一緒にガンバを応援しましょう」と締めくくった。
ピッチを後にした藤春選手は「暖かく見送っていただいて本当にありがたかった。お金を払って見に来ている人に対して、勝利を届ける、選手として100パーセントの力を出し切るのはあたりまえ。全身がつるような状況でも、(サポーターの声援が)僕の体を動かしてくれた。サッカー選手としては100パーセントの力をだしきることをこれからもやり続けていきたい」そう話すと、「ガンバはこういう順位にいてはいけないチーム。個々でいえば素晴らしい選手がいっぱいそろっている。もったいない。これから選手たちに思いをぶつけてきます」と告げて、ロッカールームに消えていった。
今シーズンのガンバに足りなかったものがあるとすれば、「ピッチの中で100パーセントの力を出し切る、発揮し続ける」、その為のチーム作りだったかもしれない。もちろん、選手は与えられた役割を全うする中で100パーセントの力を注いで、チームに貢献しようとしている。それでも、今シーズンに限って言えば、どこか違和感を抱えながら確固たる自信を持てずに戦っている試合が多かった。だからこそ、来シーズンは選手個々が自分の強みをすべて出し切れるチーム、選手たちが持てるチカラの100パーセントを発揮し続けることができるチーム作りを期待したい。藤春選手が言うように、ガンバの中にはまだまだ光明が十分、満ち溢れている。