第2期森保J最多ゴールは三笘薫、久保建英でも伊東純也でもなく…中村敬斗23歳、中山雄太26歳も「アキレス腱断裂」から復活〈進化の背景〉
森保一監督率いるサッカー日本代表は10月13日に行われたカナダ戦で4-1と「5試合連続4ゴール以上」という大勝を飾った。カタールW杯組、負傷からの復帰組や第2期からの新戦力などさらなる進化を見せているが、雑誌「Sports Graphic Number」「NumberWeb」掲載記事からそれぞれの背景を知る。
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<名言1>
化け物になってここに戻ってきたいなと思います。
(田中碧/Number特別増刊号 2022年12月15日発売)
◇解説◇
第2期の森保ジャパンが、驚くべきゴールラッシュで白星を積み重ねている。
<第2期森保ジャパン成績>
3月24日 vsウルグアイ:△1-1 得点者:西村拓真
3月28日 vsコロンビア:●1-2 得点者:三笘薫
6月15日 vsエルサルバドル:○6-0 得点者:谷口彰悟、上田綺世、久保建英、堂安律、中村敬斗、古橋亨梧
6月20日 vsペルー:○4-1 得点者:伊藤洋輝、三笘、伊東純也、前田大然
9月9日 vsドイツ:○4-1 得点者:伊東、上田、浅野拓磨、田中碧
9月12日 vsトルコ:○4-2 得点者:伊藤敦樹、中村敬2、伊東
10月13日 vsカナダ:○4-1 得点者:田中2、オウンゴール、中村敬
国際親善試合とはいえ、直近5試合で22ゴール、無得点に終わった試合はない。これだけの快勝を積み重ねているのはここ30年間の日本代表を振り返っても記録、記憶ともにないレベルだ。
カナダ戦、その契機を切ったのは田中碧だった。開始早々の前半2分に波状攻撃からミドルシュートで先制ゴールを奪い、幸先よいスタートを切った。試合全体を見ても果敢に前線へと顔を出すプレースタイルで、田中らしい積極性を見せた。
W杯での“三笘の1ミリ”ゴールと、悔しさを晴らすために
田中と言えば、語り草になったのはカタールW杯スペイン戦での“あのゴール”だ。堂安のゴールで追いついて勢いに乗る日本は“三笘の1ミリ”の折り返しに反応した田中が身体ごとボールをゴールに押し込み、これが日本を決勝トーナメントに導く決勝点となった。
「うまくいっていない時から、自分ならここで点を取れると信じてやってきた」
このように喜びを語った一方で、クロアチア戦で敗戦したのちには「この悔しさを晴らすのは4年後」と、2026年W杯に向けての決意を口にした。
田中が主戦場とする中盤インサイドハーフ、ボランチには遠藤航(リバプール)、守田英正(スポルティング)、鎌田大地(ラツィオ)と各国強豪クラブに所属するライバル、そしてパリ五輪世代の突き上げもある。その中でドイツのデュッセルドルフに所属する田中は、日常の戦いでも存在感を放てるか。
アキレス腱を断裂した瞬間に「26年W杯を考えた」
<名言2>
日本代表を全力で応援します!
(中山雄太/Number特別増刊号 2022年12月15日発売)
◇解説◇
選手層が分厚くなった日本代表だが、あえて“課題ポジション”を挙げるとするなら……その1つは左サイドバックである。
2010年代から20年代初頭にかけては長友佑都、酒井高徳といった選手が長年その座を任されてきたものの、現在は伊藤洋輝を軸に、様々な選手を試してきた印象だ。
ただカタールW杯前後から、そのポジションを任される可能性が高まっていたはずだったのが中山である。Jリーグや東京五輪、W杯前から見てきたサッカーファンにとってはお馴染みだろうが……柏レイソル時代にはCB、ボランチでもプレーできる器用さを持つ中山は、カタールW杯アジア予選では長友との併用で定着。本戦メンバーにも選出されていたものの、大会直前にアキレス健断裂の重傷を負い、大舞台を逃した。
しかし、中山はその悲劇の瞬間でも気丈だったそうだ。
「担架でピッチから運ばれるときに、2026年W杯のことを考えていました。最善を尽くした結果、ケガをしたなら仕方ない。最高の自分に成長して次のW杯の舞台に立ってやろうと思ったんです」
冒頭の言葉は負傷後、電話をかけてきた森保監督に対しての言葉だ。気持ちを切り替えて腐ることなくリハビリに励んだ中山は23-24シーズン、所属するイングランドのハダーズフィールドで戦線復帰。9月以降はレギュラーポジションに定着してチャンピオンシップ(2部相当)で6試合1アシストの成績を残している。カナダ戦でも安定したプレーを見せた中山。26歳のレフティーが再び日本代表の左サイドを活性化させようと奮闘している。
中村敬斗が“劣っている”と言われて火がついた瞬間
<名言3>
普通に比べると僕が劣っている。それをストレートに言われて、スイッチが入りましたし、やる気が出ましたね。
(中村敬斗/NumberWeb 2018年12月1日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/832700
◇解説◇
第2期森保ジャパンで最もゴールを奪っているのは、三笘でも久保でも伊東でもなく……23歳の若武者、中村敬斗である。
エルサルバドル戦での初ゴールに続いてトルコ戦で2得点、そしてカナダ戦でもゴール。A代表デビュー4試合以内での4ゴールはなんと、釜本邦茂以来58年ぶりの快挙だという。今や日本が世界に誇るドリブラー三笘だけでなく、決定力を持つ中村敬も左サイド2列目いるという事実が、現代表の強みとも言える。
現在スタッド・ランスで伊東とともに両翼を担う中村敬は、三菱養和SCを経て高校生にしてガンバ大阪と“飛び級契約”を結んだ。プロ2年目の2019年にはルヴァンカップのニューヒーロー賞を受賞し、その年の夏にはオランダへと渡ってヨーロッパ挑戦を始めると、21年に加入したオーストリアのLASKで決定力を磨き、22-23シーズンには公式戦17ゴールをマーク。その決定力にはイングランドの名門リバプールも熱視線を送っているという“移籍市場ゴシップ”まで流れたほどだ。
宮本監督から“堂安律と比べて”のゲキ
そんな中村敬はガンバ時代、当時の宮本恒靖監督に「(堂安)律が高3の時に残した結果と今の敬斗を比べると足りないよ」との激励を受け、さらにモチベーションを引き上げたというエピソードがある。
カナダ戦、中村敬は鮮やかなターンからゴールを決めて、シュートセンスの高さを見せた。しかし後半に入って相手マーカーの危ないタックルによって負傷し、担架に乗せられてそのまま交代。“左足の捻挫”と森保監督が会見で触れ、精密検査の結果が非常に気になるところだが……ケガを癒して、再び代表のピッチに戻ってくる姿を期待したい。